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日本歴史紀行

偉人の言葉 14  東郷平八郎 〜勝って兜の緒を締めよ〜


東郷平八郎 像
神奈川県 横須賀市 三笠公園

〜勝って兜の緒を締めよ〜

日露戦争、日本海海戦で連合艦隊を指揮し、空前絶後の勝利をもたらした東郷平八郎は、連合艦隊解散の式辞において、この言葉をもって締めくくりました。



 帝国海軍 連合艦隊指令長官 東郷平八郎


~勝って兜の緖を締めよ~



日露戦争において
日本の連合艦隊とロシアのバルチック艦隊の日本海海戦は、総力戦の末に連合艦隊がバルチック艦隊を壊滅させ、勝利を納めました。


終戦後、日本に凱旋した連合艦隊は、明治38年12月20日に戦時態勢から平時態勢に移行し、
翌、明治38年12月21日、東郷平八郎 連合艦隊指令長官は、新たな連合艦隊旗艦となった朝日艦上において、連合艦隊解散の辞を訓示しました。

東郷は、
〜勝って兜の尾を締めよ〜
の一文をもって締めくくります。


連合艦隊解散の辞




現代語訳

二十数ヶ月にわたった戦いも、はや過去のこととなり、わが連合艦隊は、今やその任務を果して、ここに解散することとなった。

しかし艦隊は解散しても、そのためにわが海軍軍人の務めや責任が、軽減するということは、決してない。この戦役で収めた成果を、永遠に生かし、さらに一層国運をさかんにするには、平時戦時の別なく、まずもって外の守りに対し、重要な役目を持つ海軍が、常に万全の海上戦力を保持し、ひとたび事あるときは、ただちに、その危急に対応できる構えが必要である。


ところで、その戦力であるが、戦力なるものはただ艦船兵器等有形の物や数によってだけ、定まるのではなく、これを活用する能力すなわち無形の実力にも実在する。百発百中の砲は、一門よく百発一中、いうなれば百発打っても一発しか当らないような砲なら百門と対抗することができるのであって、この理に気づくなら、われわれ軍人は無形の実力の充実、即ち訓練に主点を置かなければならない。

先般わが海軍が勝利を得たのは、もちろん天皇陛下の霊徳によるとはいえ、一面また将兵の平素の練磨によるものであって、それがあのような事例をもって、将来を推測するならば、たとえ戦いは終ったとはいえ、安閑としてはおれないような気がする。


考えるに武人の一生は戦いの連続であって、その責務は平時であれ、戦時であれ、その時々によって軽くなったり、重くなったりするものではない。

事が起これば、戦力を発揮するし、事がないときは、戦力の涵養につとめ、ひたすらその本分を尽くすことにある。過去一年半かの風波と戦い、寒暑を冒し、しばしば強敵とまみえて生死の間に出入りしたことは、もちろんたいへんなことではあったが、考えてみると、これもまた、長期の一大演習であって、これに参加し、多くの知識を啓発することができたのは、武人として、この上もない幸せであったというべく、なんで戦争で苦労したなどど、いえたものであろう。

もし武人が太平に安心して、目前の安楽を追うならば、兵備の外見がいかにりっぱであっても、それはあたかも、砂上の楼閣のようなものでしかなく、ひとたび暴風にあえば、たちまち崩壊してしまうであろう。まことに心すべきことである。


むかし神功皇后が三韓を征服されて後、韓国は四百余年間、わが支配の下にあったけれども、一たび海軍がすたれると、たちまちこれを失い、また近世に至っては、徳川幕府が太平になれ、兵備をおこたると、数隻の米艦の扱いにも国中が苦しみ、またロシアの軍艦が千島樺太をねらっても、これに立ち向うことができなかった。

目を転じて西洋史を見ると、十九世紀の初期ナイル及びトラファルガー等に勝った英国海軍は、祖国をゆるぎない案泰なものとしたばかりでなく、それ以後、後進が相次いで、よくその武力を維持し、世運の進歩におくれなかったから、今日に至るまで永く国益を守り、国威を伸張することができた。


考えるに、このような古今東西のいましめは、政治のあり方にもよるけれども、そもそもは武人が平安な時にあっても、戦いを忘れないで、備えを固くしているか、どうかにかかり、それが自然にこのような結果を生んだのである。

われ等戦後の軍人は、深くこれ等の実例を省察し、これまでの練磨の上に、戦役の体験を加え、さらに将来の進歩を図って、時勢の発展におくれないように努めなければならない。

そして常に聖諭を泰戴して、ひたすら奮励し、万全の実力を充実して、時節の到来を待つならば、おそらく、永遠に護国の大任全うすることができるであろう。

神は平素ひたすら鍛錬につとめ、戦う前に既に戦勝を約束された者に、勝利の栄冠を授けると共に、一勝に満足し、太平に安閑としている者からは、ただちにその栄冠を取上げてしまうであろう。

昔のことわざにも「勝って兜の緒を締めよ」とある。




~勝って兜の緖を締めよ~

この一文の意味、日本の軍部は半世紀も経たずに忘れてしまいました。

原文と英文を今夜、掲載します。


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