青草俳句会

草深昌子主宰の指導する句会でアミュー厚木での句会を主な活動としています。

青草6号(芳草集・青草集)

2019年09月25日 | 結社誌・句会報

 

芳草集(草深昌子選)

冬蝶の力尽きたる水面かな  栗田白雲

読みさしに栞挟むや夜半の月

歳晩や胸の種火を確かめて

億万の生抱きしめて山眠る

初春や御堂に白き千羽鶴

ものの芽や土一寸の気配あり

湯煙りと思はば屋根の霞かな

 

初刷の郵便受けを溢れたる   山森小径

人日や紅茶に落とすウイスキー

春寒や薄き雲間にうすき月

奥津城の裏をのぼるや鳥雲に

いつまでも風の冷たく蝌蚪の紐

切株にむつちり山の茸かな

冬紅葉菩薩は小指すこし曲げ

 

五人降り一人乗るバス菊日和  佐藤健成

冬薔薇や煉瓦造りのレストラン

熱燗や弱き自分と対ひ合ひ

口論に勝つて寝付けぬ年の暮

きらきらと足裏白く海女潜る

遊ぼうとみすゞの詩よ春の海

無人駅また無人駅山笑ふ

 

雨傘を朝日に広げ春隣      柴田博祥

目を凝らしやがて霞を見てをりぬ

真夜中に返すメールや猫の恋

遠ざかる飛行機の音春の虹

初時雨立読みしては人を待ち

思ふことつぎつぎとあり初氷

終電を逃し酔歩や猫の恋

 

青草集(草深昌子選)

一巡し手の平ほどの熊手買ふ  中澤翔風

冬木立単車一台通りけり

春寒や海賊船の汽笛鳴る

受験の子アメリカ橋を渡りけり

多喜二忌や不在札立つ駐在所

猫柳堰のしぶきを被りけり

戸を叩く午前零時や春一番

 

村一つ光の先の山眠る     伊藤波

胸に抱く児の手が先に破魔矢受く

陸奥や煮凝り熱き飯に乗せ

枕辺に置かる聖書や花の宿

雨二日樹皮の湿りや落椿

筆絶ちて絵の具の硬き目借時

銀にかげろふ鳥や神田川

 

羽音たて部屋飛び廻る冬の蠅  河野きなこ

乗初や秘仏の像にまつしぐら

たなびける霞に紛ふ野焼かな

寒明や芝高輪の町工場

手に馴染む高砂雛の箒かな

春泥や髪刈上げて街中に

割烹着姿の母や石鹸玉

 

手を挙げてバスを停めたる山の秋  奥山きよ子

ブロッコリーその葉日向に勇ましき

冬菊や蜂の音なく纏はるる

年越しや夫と「東京暮色」見て

石垣の吾が影とゆく七日かな

乗り継いで池上線や春浅し

雪催土なき道を歩みけり

 

春立ちて鵯ども騒ぐひもすがら  東小薗まさ一

目白来る不眠の鬱を払ひのけ

花南瓜窓の光の黄色かな

無口の日いつもありけり冬牡丹

冬帽子水路の風に取られけり

良き夢を忘れぬやうに布団干す

一人居のひとり楽しき冬籠

 

窓を打つ木の葉一枚冬初め  平野翠

池の面に同じ輪を描く冬の雨

子を叱る声の明るき去年今年

白鷺の正月を飛ぶ白さかな

いななきに日差しやはらぐ四方の春

芭蕉丸てふ焼き牡蠣の船に乗る

安達太良の山の白さや野火走る

 

硬き葉の帽子に落つる留守詣   日下しょう子

手を当てて懐炉の効き目確かむる

寒柝の三つ目またも鈍きかな

歳時記の電池換へたる七日かな

剪定や一塊に実の落ちて

木の芽張る狸の糞のひとところ

常盤木の間に間に城の桜かな

(カット 黒田珠水)


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