「吸血鬼ノスフェラトゥ」(原題: Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens)という映画を鑑賞してみました。1922年のサイレント映画です。100年以上前に公開された映画のようですね。制作国はドイツ。ブラム・ストーカーの怪奇小説『吸血鬼ドラキュラ』を非公式に映画化したものだそうです。
こんなに古い映画、しかもサイレント映画自体を観るのもほぼ初めてです。
何かリアクション動画を撮りたいなと思ってネタをあれこれ模索していたのですが、著作権の関係上なかなかこの手の動画を撮るのはハードルが高いと感じていました。比較的最近のアニメとかでも外国人の方がリアクション動画を公開しているのをよく見かけますが、ほとんどが無許可でやってるみたいですね。海外では「フェアユース」という概念で動画を限定的に引用することが可能であると考えられたりしているみたいです。日本人のそういう動画が少ないのは、日本にはそういうことが表向きは認められていないということなのかもしれません。
そこで思いついたのがパブリックドメイン(公有)として公開されている映画を選んでみるということです。パブリックドメインとされている映画ならリアクション動画を撮って公開しても問題にはならないんじゃないかと考えたわけです。
いろいろとリサーチしてみた結果、およそ100年前に公開された「吸血鬼ノスフェラトゥ」なら問題はないだろうと考えたわけです。100年前だし、サイレントだし、白黒だし、これで文句を言う人はいないだろうと……。
ドラキュラ映画はいくつか観たことはあるし、漫画やアニメの題材として数えきれないくらい取り上げられているものなのでお話はだいたい知ってます。なので、サイレントでストーリーがよくわからなくてもおそらく理解はできるでしょう。
というわけで初鑑賞の「ノスフェラトゥ」のリアクションは上の動画を観てもらうこととして、ここでは感想を簡単に書いておきます。
無声とはいえ音楽は常に流れています。その音楽が淡々としていて、それぞれのシーンにマッチしているようにも感じはするものの、派手な演出効果はなくさりげなくBGMとして流れているのが印象的でした。現代の映画ならそれぞれのシーンに合わせてもっとド派手に、ドラマチックに音楽を使ったりしますよね。そういうのがないのです。ホラー映画でモンスターが出てきて盛り上がるところでも音楽が淡々としているのはどうなの?とも思いましたが、これはこれで意外と悪くないと感じました。BGMはあくまでおまけであって、基本的には「無音」の映画なんだなということで受け入れてみました。そもそも当時の人が同じような環境で音楽を聴いていたかどうかも疑問です。音楽は生演奏だったりして?
特撮風の撮影技術も面白いと思いました。ちょっと早回しに見えるところは単に時間の経過が早いことを表現しているだけなのかと思ったりもしたのですが、実はそうではなく、奇妙で不気味な現象を表現するための特撮なんだなとも思えました。コマ送り風に画面が切り替わっていくような演出も昔の仮面ライダーなんかでよく見た特撮の演出方法と似ていると感じました。
ちなみに仮面ライダーは1971年ごろの作品なので、ノスフェラトゥの50年後、今から50年前です。今から50年前の仮面ライダーのさらに50年前にノスフェラトゥですでに特撮技術が発明されていたということですね。なんというか、50年とか100年とか、昔のようでそうでもないようで……。
疫病とか航海日誌とか、そういうシーンを見ていると、「Wizardry 6: Bane of the Cosmic Forge」というゲームにそっくりなシーンがあったのを思い出しました。そもそもこのゲームがドラキュラをテーマにしたものなので、原点ともいえるこの映画とそっくりなのも不思議ではないのかもしれません。同様に「バイオハザード」(ゲーム)にも似たような演出シーンはいくつかあったように思いました。
ノスフェラトゥが自分で棺を小脇に抱えて街中を歩きまわっているシーンなんかはあまりにシュールで笑ってしまいましたが、そんなチープな演出のシーンも散見されたものの、全編を通して現代でも十分に鑑賞に耐えうるエンタメ作品だったと思います。100年前の人たちにとっては最高のエンタメだったのでしょう。
たいていのリアクション動画は長編の動画とかでも短く切り取って編集して短時間の動画で公開されているものが多いですが、私はあえてこの動画は1秒も切り取らずにノーカットで公開したいと思いました。サイレント映画なので見どころだけを切り取っていけばいくらでも短くできるでしょうが、サイレント映画だからこそ、その間延びした怠慢な時間を味わい尽くすことに意味があると思うのです。その「間」を切り取ってしまったら、この映画の何たるかを伝えることは不可能です。それに、100年前の当時の人たちが感じていたものをそのまま感じ取るには、この「時間」にこそ意味があります。サイレント映画から「時間」を取ってしまったら何も残りませんよ。
というわけで、約1時間半の映画を丸々ノーカットで動画にしてアップしました。フェアユースの考え方からは外れてしまうかもしれませんが、私はこの映画に対するリスペクトも込めて、こういう形で動画を公開したかったのです。
とてもいい映画を観させていただきました。
映画本編は YouTube 等で探せばすぐに見つかるので、1時間半の贅沢な時間、ぜひ味わってみてください。