投資家の目線

投資家の目線849(見直される国際分業体制)

 国際物流のひっ迫で、国際分業体制が揺らいでいる。11月2日のダウ・ジョーンズ配信の「コロナで変わる企業経営、さらば外部委託」という記事には、グローバル企業が工場と供給元との距離を縮めたりして、コストが増加しても信頼性を高めようとしている様子が記されている。同記事には、「コスト削減のため、遠隔地に低コストの製造施設を確保し、低スキルの仕事を外部委託し、ジャスト・イン・タイムの生産方式と海上輸送に依存する」というグローバル企業の戦略が、新型コロナウイルスの世界的大流行で機能しなくなった。そのため、「ゴールドマン・サックスとデル・テクノロジーズの役員でもあるカルマン氏によれば、自動車や医療、耐久消費財などの業界の一部顧客企業が、これまで欧州やアジアの製造施設に依存していた構造を、より南北米大陸重視の方向に変えることを望むようになってきた」、アパレルのベネトンは「今後1年から1年半の間にアジア拠点の生産を半減させ、その工程を地中海沿岸諸国に移転させる」計画があり、シカゴを拠点とする自家用カクテルマシン製造の新興企業バーテジャンは中国だけで生産する計画を見直してシカゴ郊外に第2の生産拠点を設けたことなどが書かれている。

 現在、米国の港湾での海上輸送の停滞が問題になっている。しかし、海上輸送のリスクは米国だけの問題ではない。今年3月に起こったスエズ運河での正栄汽船所有の大型コンテナ船「エバーギブン」座礁事故では、通航再開まで6日、正常化までさらに5日を要した(「スエズ運河、待機解消急ぐ 既に110隻超通過:2021/3/31時事ドットコム」、「スエズ運河、滞留解消 通航再開から5日ぶり:2021/4/4時事ドットコム」)。

 また、2014年暮れから2015年にかけて、米国西海岸港湾の労使交渉長期化でフライドャeトの海上輸送が困難になった時は空輸でしのいだ。しかし、新型コロナウイルスの流行で航空便が減便している現在、航空小型包装物ですら引き受けが一時停止されている(「日本郵便、米豪向け航空小型包装物 引き受け一時停止」 2021/11/2 日本経済新聞WEB版)。海上輸送がダメなら航空輸送で対応することが常にできるわけではない。

 新型コロナウイルスの流行が終息しても、今までのようなグローバリズムは戻ってこないと思われる。ある程度は自給自足の体制を作っていかざるを得ないのではないだろうか?
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