投資家の目線

投資家の目線387(米国大統領選終わる)

 米国大統領選はオバマ大統領が再選を果たして終わった。下院は共和党が過半数なため、「財政の崖」が懸念されている。そうなれば、懸念されていたように数年後に燃料交換が必要な空母「ジョージ・ワシントン」を撃沈してしまうかもしれない。米国の軍事関係者にとって、最大の敵は米国の財政難であり、中国の人民解放軍の増強は軍事予算を維持するための協力者と言える。

 今回の選挙の共和党の大統領候補には、ロン・ポール下院議員がいた。同議員は著書「連邦準備銀行を廃止せよ」(佐藤研一郎訳、副島隆彦監訳)において、「戦争がインフレなしに戦われたことはない。ということは逆に、もしインフレを抑止する金融制度を導入できれば、戦争が起きる可能性はずっと減るのである。他国との軍事的なもたれ合い関係も大きく変わる。これは他国の内政にちょっかいを出して、最終的には隣国との軍事対立を煽ることである。このようなもたれ合い関係の経費を、即座に増税で支払わなければいけないなら、国民は容赦しないはずだ。最初から海外干渉の予算がつかなければ、アメリカが勝てもしない、不必要な戦争に関与する可能性はずっと減るだろう」と書いていた(インフレ=「通貨量と信用の膨張」)。

 9.11以降のアフガン・イラク戦争には巨額の戦費がかかったが、住宅等の資産価格の膨張で増税しなくとも財政への悪影響をごまかせていた(戦時中ながら減税までしていた)。しかし、リーマン・ショックでそのメッキが剥がれ、それ以後は連銀がいくら通貨供給を増やしても「信用の膨張」までは起こせていないというところか。

 同じ共和党とはいえ、ロン・ポール支持者は軍事予算を増額しようとしていたロムニー候補とは相容れなかったように思う。アメリカにもよけいな介入戦争にウンザリしている市民は多いのだろう。参戦に議会の承認を必要とする可能性の高い「日米安保条約」など、名目上のものと考えておいた方がよい。


 ジョセフ・ナイ氏らとの共著「日米同盟VS.中国・北朝鮮」で、アーミテージ氏が「オバマ大統領には非常に不安を覚えています」と発言していた。また同書では、クリントン国務長官やキャンベル次官補は『伝統的な「勢力均衡」の考え方に基づくアプローチを取っています』と述べているが、彼らは次期政権から離れると報道されている。オバマ政権に対してさらに影響力が衰えるアーミテージ氏主導の「アーミテージ・レポート」を考慮するメリットが日本にはあるのだろうか?

 また、共和党政権時の首相だった安倍晋三氏は、民主党政権の大統領のカウンターパートとなりうるのだろうか?ブッシュ政権の時のトニー・ブレア英国首相のような変わり身を見せなければ、またマスメディアは「日米関係を悪化させた」と報道するであろう。

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・1990年に中華民国(台湾)軍が尖閣諸島上陸作戦を計画していたという(2012/11/9レコードチャイナ「<尖閣問題>実行寸前だった台湾軍の尖閣強襲計画、李登輝元総統が制止―中国メディア」)。中華民国が尖閣諸島の領有権を主張し出したのは日米間で沖縄返還協定が結ばれた頃。尖閣が米国の施政下のときは遠慮していたが、施政権が日本に移れば遠慮はいらないということか…。

・森ゆうこ参議院議員の「検察の罠」を読んだ。陸山会事件に関して検察や検察審査会の問題を追及したもので、自身が体験したことを書いているので大変迫力を感じた。地元の図書館でも予約が多い。検察審査会の問題については、「検察審査会事務局に20回以上に通った男」志岐さんらが「最高裁の罠」を今月終わりに出版する予定。ぜひ読んでみたい。

・11日の原発再稼動抗議集会は雨にもかかわらず結構な人出。会場が分散しているのではっきりした人数は把握できないが…。

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