投資家の目線

投資家の目線396(TPP交渉参加問題)

 自民党の高市政調会長がTPP交渉への参加をほのめかしている。


 以前書いたように、2012年11月12日のダイヤモンド・オンライン「TPPを経済面だけで判断してはならない! 政治的・社会的な意義まで含めて考えることが重要」で、伊藤元重教授は米国の識者が『「メキシコと自由貿易協定を結ぶ最大の目的は、米国の理念をメキシコに輸出することである。経済的利益は二次的なものである」と発言したのだ』と書いていた。しかし、「米国の理念」などという(社会改造を伴う)異物が、何の対策を立てなくてもうまく受け入れられると考えるなら、(変質した)ネオコンのように無邪気だと思う。


 エリツィン政権下のロシアでの改革を、ストローブ・タルボット氏は「あまりにもショックが強すぎ、あまりにもセラピーが少なすぎた」と説明している(参考文献:ファリード・ザカリア著「アメリカ後の世界」131頁)。TPP参加というショック療法を行うにはセラピーも必要だが、セラピーに当たる生活保護費や農業の戸別所得補償制度を、自公政権は削減しようとしている。


 現在、製造業の生産拠点の再編が行われているなか、農家と兼業の従業員の中には転勤を嫌って専業農家になる家庭も多いかもしれない。そして、それは農地の大規模化と対立する可能性がある。大規模化からはずれて農地を失った者は、もし地元に職を得られなければ大都市に出ざるを得ないだろう。そのとき、彼らの住居をどうするつもりなのか?ジェーン・ケルシー編著「異常な契約 TPPの仮面を剥ぐ」には過去のチリの例として、改革により「かつての小農地所有者たちは、地方に残って、厳しい条件で働く新たな無産階級となったか、さもなければ都市に移り住んで、さらなる大きな苦労を負ったのである」(135頁)とある。これは大都市にはスラム街ができたということだろう。TPP推進派は東京近郊などにスラム街を作りたいと思っているのか?


 また、「このような新たな輸出志向地域の経済基盤の変化は、しばしば単一栽培(モノカルチャー)の拡大を招き、経済的および環境的な危険と犠牲を伴うことになったのである」(同前)ともされる。このようなモノカルチャー化は農産物価格の動向により地域経済の大きな変動を招き、地域社会のリスクが高まると思うがどうだろう。

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