投資家の目線

投資家の目線47(阪神電鉄の社外取締役の役割とは?)

 5月2日にM&Aコンサルティング(以下MACと略)から阪神電鉄に提出された株主提案に9名の取締役選任が含まれていた。MACの関係者8名と、現阪神電鉄社外取締役の玉井英二氏である。一部の報道では、阪神電鉄側の取締役選任議案から玉井氏を外す方針を固めたとも伝えられる。
 しかし、社外取締役に期待される役割とは何だろう。それは執行役を兼任したりする社内出身の取締役から独立した立場で会社の業務執行機関を監視し、合理的で全株主の利益になる案件に対しては、社内の取締役の利害に関わらず中立な立場から物事を判断することであろう。現在の社内の取締役と見解が異なるからといって社外取締役から外されるようでは、そのような役割は期待できない。阪神電鉄側が玉井氏を社外取締役候補から外し、新たな社外取締役候補を提案したとしても、その人物は社内の取締役の意見に追随するだけのお飾りにしか見えないのである。
 阪神電鉄の2006年3月期の連結第3四半期の決算データでは1株当り株主資本(BPS)391.61円、毎日新聞による玉井氏への取材(5月4日)では「阪神は西梅田の不動産だけで3000億円から4000億円の含み益がある。」とされている。阪神電鉄の発行済株式数は約4.2億株だから、そこから計算される1株当りの含み益は714円から952円となる。先のBPSに加えると1105円から1343円となり、報道されているMAC側の交渉価格1株1200円はほぼ妥当な線といえる。阪急HDとのシナジー効果を言うのであれば、この価格に新たな経済的な付加価値を加えるよう、阪急HD・阪神の両社は努力しなければならない。
 今回は見送られたようだが、阪急HDによる阪神株のTOBも一時報道された。もし阪神の経営陣がそれに賛同すれば阪神電鉄が身売りしたとも見られ、レブロン基準に当てはめれば他に阪神株に高い価格をつける買収相手が現れれば、経営陣はそれに売る義務が生じる。阪神電鉄の新しい取締役はそのような合理的な考え方ができる人物かどうか、阪神電鉄株主はよく見定めるべきだろう。
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