投資家の目線

投資家の目線48(まだ終わらない金融危機)

 4月28日に豊和銀行の2006年3月期の業績下方修正と西日本シティ銀行による30億円の増資受け入れ、および公的資金導入を申請する方針を明らかにした。2006年3月期の自己資本比率は前回予想の8.5%から2.2%と健全行の国内基準4%も下回ることとなった。大手行の危機は去ったように見えるが地方ではまだなようだ。
 5月12日には東京臨海部の第三セクターが民事再生法の適用を申請したが、他の道府県の第三セクター問題はカタがついているのであろうか?今回のように金利上昇に伴い、法的整理が増えれば地方金融機関の経営を圧迫しよう。
 平成10年施行の改正銀行法では、ディスクロージャーの規定が強化された。開示の最低限は法律で決められているが、その第二十一条第4項によればそれ以外の開示でも(銀行が自主的に)「預金者その他の顧客が当該銀行及びその子会社等の業務及び財産の状況を知るために参考となるべき事項の開示に努めなければならない」とされる。ペイオフが完全解禁され預金者の自己責任が求められる今、今回のような自己資本比率の大幅な減少があると安心して預金できない。自己の財産を守るためにも、銀行の債権者たる預金者は銀行の更なる自主的ディスクロージャーを要求していくべきではないだろうか?金融システムに対する信認の確立の観点から、同年の法改正ではそれ以前置かれていた守秘義務等によるディスクローズを宥恕(寛大な心で許すこと)する但し書きが削除された。つまり、守秘義務をたてにディスクローズを拒む法的根拠はなくなったといえる。
 平成13年の商法改正で、いかなる議決権も持たない完全無議決権株式の発行が認められるようになり、議決権によるガバナンスはより少数で決めることができるようになった。それゆえ企業経営の規律付けには、「監視」がより大きな役割を果たす必要があるだろう。

参考文献:「「解説」改正銀行法」 木下信行編 日本経済新聞社

P.S.
 国土交通省は10月施行の改正鉄道事業法で、鉄道事業者に設置を求める「安全統括管理者」を取締役に選任することを省令で義務付けると報道されている(5月9日日本経済新聞)。しかし安全の確保は業務執行の問題であろう。近年は委員会等設置会社のように執行と経営が分離された企業形態もあるので、国土交通省案のように「安全統括管理者」を取締役に限定するのはいかがなものか。執行役相当を含めてもよいのではないだろうか?
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「ノンジャンル」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事