この記事を見て、バラク・オバマ著「マイ・ドリーム バラク・オバマ自伝」(白倉三紀子/木内裕也訳 ダイヤモンド社)にあった、ネイション・オブ・イスラムの、歯磨き粉などを扱う家庭用品ブランド「パワー」に関する記述を思い出した。「このブランドは、黒人のお金は黒人コミュニティーの中で流通させる、という考え方を推奨するための彼らの戦略の一つだった」(「マイ・ドリーム」p244~245)という。しかし、「パワー製品のキャンペーンを見ていると、黒人のビジネスが直面する問題を改めて考えさせられた。(中略)パワーの製品部長が販売予測をしているところを思い浮かべてみる。彼は考えるだろう。黒人に人気のある全国区のスーパーマーケット・チェーンに流通させることが、果たして我々の理念にかなうことなのか?それでは本末転唐セ。では全国チェーンに対抗しようとしている黒人の経営するスーパーに卸すのはどうだろう。だが彼らに、せっかくお客さんになってくれている白人たちを遠ざけるような製品を、わざわざ陳列する余裕などあるだろうか?黒人の消費者は通信販売で歯磨き粉を注文するだろうか?そもそも、この歯磨き粉の材料を最安値で提供するサプライヤーが白人企業である可能性はどれぐらいのものだろう?競争力・市場経済・多数決の原則にのっとって決定を下すということは、力の問題に立ち向かうということだ。」(「マイ・ドリーム」p245)という。
DHCの件は一部顧客(含む見込み客)の排除、「パワー」の件は特定顧客への訴求という差はあるが、顧客を限定するという共通点がある。人口減少の進む日本で顧客を限定するような行動をとれば、DHCの売り上げも減少していくのではないだろうか?海外市場でのDHC商品の展開も難しいだろう。ベルリンの少女像の顛末を見れば、外国で日本側の言い分が受け入れられないことは明らかである。
追記:「ファラカン氏のスピーチに感動した人々も、相変わらずクレスト社の歯磨き粉を使用しているようだった」(「マイ・ドリーム」p245)。ネイション・オブ・イスラムのリーダー、ファラカン氏のお勧めでも商品の購買にはつながらない。同様にDHCの主張も、DHC商品の購買にもつながらないと思う。また、DHCは上場企業ではないが、ESG投資の観点からは好ましい投融資先とは思えない。
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