投資家の目線

投資家の目線796(デフォルト債の価値の急落)

 デフォルトした債券の価値はほとんどなくなっているようだ。「新型コロナウイルス不況のおかげで破産申請が急増する中、多くの貸し手は保有債券の価値がゼロに近いことに気付きつつある。かつては額面1ドル当たり40セント程度が標準的だったが、今では無担保債権者はたったの1セントしか回収できない、あるいはそれすらできないという悲しい見通しになっている。(中略)超低金利は高リスク企業に投資家保護の薄い債券の発行を促し、リターンを追い求める投資家がそれを喜んで購入した。経済に新たな痛みが押し寄せる中、このつけが回ってきた」(「米破産新時代:貸したお金の99%戻らず、コロナ不況のデフォルト債」 2020/10/26 Bloomberg)という。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、高い利回りを求めて信用力の低いハイイールド債を保有しているようだ。2019年度業務概況書には、信用リスクの項目で「2019年度において、国内債券及び外国債券について、運用手法の特性によりBBB格以上の格付を得ていない債券への投資を行っています」(p45)と記述されている。同概況書の運用受託機関等別運用資産額(2019年度末時価総額)(p103、104)を見ると、以下のマネジャー・ベンチマークのファンドはハイイールド債主体の運用だと推察される。

・ブルームバーグ・バークレイズ米国ハイイールド社債 2% 発行体キャップ・インデックス(ヘッジなし・円ベース)
 野村アセットマネジメントⅥ                1,259億円
 パインブリッジ・インベストメンツ              452億円
 ベアリングス・ジャパン                    462億円
 モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントⅡ  437億円
・ブルームバーグ・バークレイズ・ユーロ・ハイイールド社債 2% 発行体キャップ・インデックス(ヘッジなし・円ベース)
 ティー・ロウ・プライス・ジャパン               438億円
 UBSアセット・マネジメントⅠ               1,367億円
                               計4,415億円

2019年度末の運用資産全体の時価総額が150兆円なので、それらは全体の0.3%程度なので割合は高くないが、資産全体の額が大きいので金額自体は大きくなる。

 今年9月17日に発行された日産自動車の外貨建て社債の、格付会社による格付は「投資適格」等級だったが、10年債の金利は4.81%で、「投資不適格の低格付け債並みだ」(『日産、苦渋の高金利調達 海外の「利回り狩り」が支え』 2020/10/16 日本経済新聞朝刊)という。ハイイールド債の信用リスクの問題は日本にとって決して他人事ではない。
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