投資家の目線

投資家の目線118(TBSが買収防衛策発動見送り)

 TBSが楽天に対する買収防衛策の発動を見送った。楽天側が今後十年間はTBS株の保有比率を、20%を若干超える程度にとどめるとしたため、TBSの企業価値評価特別委員会が防衛策発動しないよう勧告したためである(2007年9月8日日本経済新聞朝刊)。
 TBSは朝の情報番組「朝ズバ」の不二家報道が大きな問題となった。その問題をめぐり不二家の信頼回復対策会議議長だった郷原氏が座長の「メディアコンプライアンス研究会」が放送倫理・番組向上委員会(BPO)検証委員会の、TBSの責任を問わない姿勢を指摘したほどである(2007年9月12日日経金融新聞)。今年、同社の番組では「人間!これでいいのだ」の「頭の良くなる音」事件や「ハニカミ王子」事件などがあった。大株主の楽天がTBSのコンプライアンスについて言及したのは理由のあることだった(楽天㈱2007年4月19日ニュースリリース「株式会社東京放送株式の追加取得にかかる買付意向説明書の提出、同社への株主提案、同社定時株主総会における議決権の代理行使に関する委任状の勧誘について」)。
 http://www.rakuten.co.jp/info/release/2007/0419_2.html
 しかし、このような問題はTBSに限ったことではない。BPOの検証委員会は今年はじめの関西テレビの「発掘!あるある大事典Ⅱ」の捏造事件をきっかけにできたものだった。それ以外にも、2005年に前年の日本テレビの有価証券報告書不実記載事件(渡邊恒雄氏(日本テレビ取締役、読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆)名義の日本テレビ株式の実質所有者が読売新聞グループ本社であった事件)をきっかけに、マスコミ各社の多くでマスメディア集中排除原則違反が発覚し、放送局は総務省から警告を受けた。 
 テレビ局の多くは、新聞社が大株主となっている。新聞社には先のマスメディア集中排除原則に抵触する問題があった。それに加え、公表される発行部数は、大量に存在すると伝えられる読者のいない残紙の数を上乗せしたもので、新聞広告、折込広告の料金に関係する。つまり、彼ら自身のコンプライアンスにも問題があると言える。そのような状況下で大株主の新聞社にテレビ局のコンプライアンスについて口出しさせることは無理だろう。マスコミ各社を監視できる大株主が必要ではないだろうか。
(参考文献「新聞社 破綻したビジネスモデル」河内孝著、新潮新書)
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・今、買収防衛策を導入した企業を調べている。日々の商品やサービスを購入時に役立てたい。
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