市の音楽コンクール

2009年11月15日 17時43分06秒 | Weblog
秋はコンクールの季節でもあります。

毎年10月から11月にかけて,市のコンクールがある。
私も生徒を毎年出していて,夏頃から練習を始める。
10月に1次予選,11月に2次予選,そしてその2週間後に本選というスケジュールで,
1次予選で通ると2次以降は1次とは違う課題曲になる。
なので,短い期間にやることがいっぱいでなかなか大変だ。

モエちゃんという1年生の生徒も,今回初出場した。
自分の世界を持っていて,すごく雰囲気のある子だ。
すぐに,その曲のイメージへ入っていける。
しかし,集中力にムラがあることも多く,
なだめたり,すかしたり,と,アメとムチでなんとか引っ張っている,
という感じではある。
でも,見た目が皇太子さまのところの愛子さまみたいな感じの
和風な可愛い子で,なんだかにくめないのだ。

モエちゃんはこの春から専門コースというところへ入ってきた。
専門という名前の通り,他のコースより専門的にいろんなことを
学ぶため,レッスンもグループと個人の両方が1週間の間にある。
お父さんが音楽が好きで,是非,娘をこのコースへ行かせたい,
ということだった。
そんなわけで,レッスンにもお父さんがついてらっしゃることが多い。
(自営なので融通がきくというのもあるが)

なんというか,お父さん,素朴ないいかたである。
お母さんも自然体で,可愛い素直なかただ。
御両親とも良識もきちんとある,理想的な保護者,という感じ。

さて,コンクールが来た。
モエちゃん,無事に1次予選を通過した。
お母さんがあとから,
「主人が『オレ,モエが弾いてる姿見ながらなんか,泣きそうになったわ』
 とか,言うてるんですよ!」
と笑ってらっしゃった。
わー,なんか,いいなぁ,そういうの。
じーんとくるじゃないか。

モエちゃん,弾くのを舞台袖で待つ間,ドキドキしていたらしいが,
舞台に立ち,お辞儀をして,いざピアノの前に座った途端に
すぅーっと気持ちが落ち着き,自分の音がすごくよく聞こえて
気持ちよかった,と言っていた。
この子,案外,舞台向きの子なのかもしれない。
集中力にムラはあるが,それだけに本気で集中できた時ってすごいのかも。

さて,2次予選が昨日あった。
本当は,私は別のレッスンがあり,聞きには行けないはずだったのだが,
その子が「今日休みます」と連絡してきて1時間ばかり空いたので,
こりゃ間に合うかも!!と,車を素っ飛ばしていった。
タイミング良く,モエちゃんの少し前に間に合った。

モエちゃん登場。
めちゃ落ち着いている。
お辞儀も自然体に,上品にできた。
演奏も,レッスンで注意したことをほぼ9割以上できた。
若干,こじんまりとまとまり過ぎたかな,という感じもしたが,
あれだけできたら上出来だろう。

モエちゃんを出迎えるため,ホールの外へ出た,
モエちゃんのお父さんやお母さんも出てきた。
もう,お父さんなんか,わなわなしている。
「オ・・・オレ・・・もう・・・」
何言ってんだか,わからない。
私は思わず,
「お父さん,ふらふらですやん!」
と,言ってしまった。
「ハ・・・ハイ・・・なんか,もう・・・」
と,言っているところへ,モエちゃんが舞台袖から帰ってきた。

お父さんはたまらずダッシュし,
「モエ~~~~~~~~」
と駆け寄ったかと思うと,
サッとモエちゃんを抱き上げ頬ずりしていた。
「モエ~~~~~」
私は,また思わず
「お父さん,半泣きですやん!!」
と言ってしまった。
お母さんは,やれやれ,という感じで笑ってらした。

でも,すっごくいい光景だった。
なんだか,いい家庭だなぁ,としみじみ思った。
モエちゃんは嬉しそうに頬ずりされながら,
「今日もまたピアノの前に座ったらドキドキがすぅーっとおさまったよ」
と言った。

お父さんは
「よーし,モエ,今日はかっぱ寿司に行こうな!!」
と言った。
おいおーい,そんだけ嬉しいのなら
今日は「廻らない」寿司に連れて行ってあげたらどうですかーーー

そんなこんなで,とりあえずモエちゃんの演奏を聴き,
またレッスンへと車を素っ飛ばして戻った。

夜,全部のレッスンが終わり,携帯を見ると,モエちゃんちからメールが入っていた。
2次予選も通過し本選へ出場できることになった,と書いてあった。
おー,良かった良かった。
私は,すぐにお母さんの携帯に電話をかけた。
しかし,出てきたのはお父さんだった。
なんかざわざわしているので,外出先らしい。
「あ,家内は今,お手洗いに行っているんです。
 かっぱ寿司に来てるところなんですよー。」

本選出場決めたのなら,なおさら「廻らない」ほうの寿司へ連れて行ってやってーーーッ

などと,よその家庭のことに心の中でいらん世話を焼きながらも,
嬉しそうに
「いやー,なんか,本当に素直に嬉しいです!」
というお父さんの声を聞きながら,やっぱり,この家庭は
いい家庭だわぁ,と心が温かくなった。

でもね,お父さん,今はあなたの頬ずりを喜んでくれているモエちゃんも
あと6,7年もしたら
「お父さんと洗濯物は一緒にしないでッ」
とか言われちゃうんですよ・・・
と,またまた心の中でいらん世話を焼いてしまう,あさひなのでした。
コメント (9)
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