ケンは近づき、川底が見えるくらいに透き通る川の水面を見つめ、少し熱くなった手をそっと静かに入れた。
澄み切った水が、何ともいえぬ心地よさを呼び、疲れきった心を癒してくれた。
都会にはない自然の川の流れる音と、太陽との乱反射で眩しいくらいに感じた。
輝き続ける小川を眺め続けていたが、一向に気持ちは落ち着かず、出るのはタメ息ばかりだった。
タバコに火をつけようとした時、気づくとケンの隣に四、五十代くらいの中年の男性が座っていた。
「よぉ兄ちゃん、ずいぶん暗い顔をしてるな」
いきなり話しかけられたケンは驚いて何も言えず、軽く会釈をした程度でいた。
白髪混じりの中年はやさしく問いかけ続けた。
「兄ちゃんみたいに若いのが観光地でもない、こんな田舎の川を眺めてるなんて、めずらしいな。
ここは都会に比べ何もないだろ、あるといっちゃ変わらないで残る自然だけかな。
でも都会にはなくて、ここにしかないものだってたくさんあるんだぞ。」
まさに田舎の風景にぴったりの服装で、ここだけは昭和で時間が止まっているようだった。
時たま笑うと奥歯の金歯が光って見えた。
初対面とは思えないほど、気さくに話しかける男に、ケンは少しずつ心を許し始めていた。
「オレも若いときは、こうして川を眺めにきたもんだ。自然ってのを肌で感じるとよぉ、
人の存在は小さく、一人では生きてられないって思うわけよ。
兄ちゃんも何らかの理由があって、ここに来たんじゃないのかい?」
おれもまだまだ若いけどなと男は付け加え笑った。心中見抜かれているような気がした。
ケンは向こう岸を見つめ、隠さずにあることすべて話してしまったほうがいいと思い、ゆっくりと話しだした。
小さく頷きながら、最後までを聞き終えると男は立ち上がりおもむろに口を開いた。
「兄ちゃんは自分を変えたいと思うかい?」
トンボが目の前を横切り、ケンはうつむいたまま、何も答えなかった。
澄み切った水が、何ともいえぬ心地よさを呼び、疲れきった心を癒してくれた。
都会にはない自然の川の流れる音と、太陽との乱反射で眩しいくらいに感じた。
輝き続ける小川を眺め続けていたが、一向に気持ちは落ち着かず、出るのはタメ息ばかりだった。
タバコに火をつけようとした時、気づくとケンの隣に四、五十代くらいの中年の男性が座っていた。
「よぉ兄ちゃん、ずいぶん暗い顔をしてるな」
いきなり話しかけられたケンは驚いて何も言えず、軽く会釈をした程度でいた。
白髪混じりの中年はやさしく問いかけ続けた。
「兄ちゃんみたいに若いのが観光地でもない、こんな田舎の川を眺めてるなんて、めずらしいな。
ここは都会に比べ何もないだろ、あるといっちゃ変わらないで残る自然だけかな。
でも都会にはなくて、ここにしかないものだってたくさんあるんだぞ。」
まさに田舎の風景にぴったりの服装で、ここだけは昭和で時間が止まっているようだった。
時たま笑うと奥歯の金歯が光って見えた。
初対面とは思えないほど、気さくに話しかける男に、ケンは少しずつ心を許し始めていた。
「オレも若いときは、こうして川を眺めにきたもんだ。自然ってのを肌で感じるとよぉ、
人の存在は小さく、一人では生きてられないって思うわけよ。
兄ちゃんも何らかの理由があって、ここに来たんじゃないのかい?」
おれもまだまだ若いけどなと男は付け加え笑った。心中見抜かれているような気がした。
ケンは向こう岸を見つめ、隠さずにあることすべて話してしまったほうがいいと思い、ゆっくりと話しだした。
小さく頷きながら、最後までを聞き終えると男は立ち上がりおもむろに口を開いた。
「兄ちゃんは自分を変えたいと思うかい?」
トンボが目の前を横切り、ケンはうつむいたまま、何も答えなかった。
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