2023~24年の冬に書いたまま、アップし忘れていた内容。
コロナ禍は、しばらく厩舎地区に入れなかった。2023年度からようやく厩舎地区の取材や撮影が可能になった。(とはいえ、今も取材対象を報告して、横に広報担当者がついて、という自由とはいえない取材。今後のためにもなんとかしたい…)
そしてようやく、冬の風物詩である調教風景を撮影できるようになった。なんと、4年ぶり。そんなに経っていたか。
少し前から撮影をしていたカメラマンの山岸伸さんが「風景が変わってしまった」と言っていた。大きなビルがいくつか建つなど、周りを見ていて想像はついていたのだけど、想像以上に変わっていた。
馬たちがズリ引きをして向かう直線のその奥には、新しく建てられた農協連ビルがそびえている。なぜか窓はないので、厩務員によっては無機質な印象を持つ人もいるようだ。
冬になると朝日はスタンド側から上がる。撮影場所と朝日との間には、砂山が高くそびえていた。スタンドからもわかる、ゴール地点の奥にある山だ。
これはコースで使われていた古い砂の置き場で、その頂上付近にはショベルが2台載っている。冷たい空気感の背景に、黄色い農機具がばっちりと入る。
もちろん調教馬場は、撮影のために作られた場所ではない。それでも4市時代から長年この景色を撮るカメラマンはいて、風物詩としてよく取り上げられていたし、アマチュアにも人気の風景だ。作業をしやすくするために置かれたトラクターから、撮影のない間にカメラマンの存在が消されているのと感じた。
自分たちのためにどうしろ、というのでは決してない。ただ、自分たちが「ばんえい競馬」の中で、少しずつ必要性が失われつつあるんだな、ということをさみしく思う。
何度か言っている通り、私は調教風景の美しさを見て「この風景をなくしてはならない」と存続を訴えた。調教見学ツアーも、同じように思う人が増えてほしいから、多くの人に参加してほしいと思っていた。
郷愁を誘う風景は、ばんえいがここにあるための大きな存在理由となると思っている。
どんなに売り上げが良くても、世界の状況を見ると、いつ競馬がなくなるかわからない。
話は変わるが、家の近くにあった林がなくなり、まっさらな土地にされてモデルルームが建った。このあたりでは珍しい、住宅街の小さな森ともいえる林で、野生の花も咲いていて散歩が楽しかった。
緑を大事に、自然を大事に、という考えは、サステナブルという言葉がはやりだした近年では当たり前のことだと思っていた。なぜ伐採してしまったのか。森があることで住みにくいこともあるのだろうけれど、その方が人気が出そうなのにね、という話をしている。コロナ禍で忘れられていることがいくつかあるのではないか。
変わりゆく風景から、なんとなく、そのことを思い出した。