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We Were Always Sweethearts by Boz scaggs
ボズといえば、AORの代表的ミュージシャンとして日本では知られている。
なんといっても代表作「シルク・ディグリーズ」のイメージが大きいし、そのアルバムに収録されていたシングルヒット「ロウダウン」、そして今やラブバラードのスタンダードナンバーである「ウィアーオールアローン」の知名度は抜群だ。
「シルクデイグリーズ」の前のアルバム「スローダンサー」や、「シルクディグリーズ」の後のアルバム「ダウントゥゼンレフト」「ミドルマン」なども日本でもかなりヒットした。
だが、今回ここで取りあげるのは、ボズにとっては2枚目のアルバムにあたる「モーメンツ」に収録されていたご機嫌な曲「恋人同士(原題「We Were Always Sweethearts」)。
この曲は、アルバム「モーメンツ」のオープニングナンバーであった。
アルバムは1970年の作品。
私がボズを初めて知ったのは、やはり「シルク・ディグリーズ」。
当時すごく人気があったし、オシャレなジャケットにも惹かれたので買ったのだが、アルバムの出来は最高だった。
捨て曲なしのアルバムで、まるでベストヒットアルバムを聞いてるかのような充実ぶりだった。
これに惚れ込んだ私は、「シルクディグリーズ」以前のアルバムにも興味を持ち、当時さんざん中古レコード屋や輸入盤屋をあさり、結局はその時点でのボズの全アルバムを揃えてしまった。
この「モーメンツ」は中古レコード屋で発見し、即買い。中身は分からなかったが、とりあえずジャケットも気に入ったから。
そして帰宅してこのアルバムを聞いてみたところ、いきなりオープニングで流れてきたのが、この「恋人同士」という曲。
もう、いきなりイントロからしてキャッチーで、「お、これは良さそうなアルバムだ」と直感した覚えがある。
実はこの「モーメンツ」を買う以前に、私は輸入盤屋で彼のデビューアルバムを買って、聞いていた。
デビューアルバムの本来のタイトルは「ボズ・スキャッグス」だったが、日本盤では「ボズスキャッグスとデュアン・オールマン」になっていた。
デュアンがスタジオミュージシャンとして、全面的にアルバムに参加していたので、デュアンの知名度も活かそう・・・と日本のレコード会社は考えたのだろう。
元々私はデュアンのファンでもあったので、買うのになんのためらいもなかった。
だが、正式にはボズのアルバムなのに、セッションギタリストであったデュアンの名前と並列のアルバムタイトルになってしまって、ボスにとっては少し気の毒な気もしてたのを覚えている。
いくら私がデュアンのファンであっても・・だ。
デビューアルバムでのボスは、「シルクデイグリーズ」とは違って、泥臭く、カントリーやブルースフィーリングの内容だった。
それはそれですごく好きだった。よく聴きかえしたものだ。
だが、後の「シルクディグリーズ」のようなオシャレな音楽のイメージではなかった。
それが、この2作目のアルバムを聴いたら、後の「シルクデイグリーズ」のようなオシャレな音楽への息吹が感じられた。
一気に「シルク」に近付いて歩き出したような内容だった。もちろん、まだ泥臭さも残ってはいたけれど。
特にオープニングのこの「恋人同士」から、2曲目の「すてきな女たち」、そして3曲目の「ペインテッドベルズ」あたりまでの流れは完璧で、後のオシャレなサウンドに繋がる名曲が並んでいた。
このへんの流れだけで、このアルバムを買った価値はあったと思った。
先にも書いたが、なんといってもオープニング曲の導入部のイントロが最高で、それだけで一気にこのアルバムに引き込まれていく感じだった。
凄くこの曲を気に入ったので、当時私がよく作っていたオリジナル編集でのベストヒットカセットにもこの曲は入れたかった。だが、入れられなかった。
というのは、私が買ったこのアルバムは中古盤で、1曲目のこの曲にレコード特有の「音飛び」があったからだった。
ダウンロードなどに親しみ、レコードというものをあまり扱ったことがない今の人にはわかりづらいかもしれないが、「音飛び」という状況がレコードにはあり得たのだ。
盤に問題があり、その結果、レコード針が特定の箇所で、曲の少し先に飛んでしまう現象。その結果、曲の流れが不自然なものになってしまう。
よりによってオープニングのこの看板曲的存在の曲に音飛びがあるとは・・。
とはいえ、このアルバム自体、かなり安価な値段で買った覚えがあるし、仕方ないとも思った。
もじかしたら、このアルバムの前のオーナーがこのアルバムを手放したのは、それが理由だったのかもしれない。
1曲目のこの曲で音飛びがある以外は、あとはスムーズに最後まで聴けた。
なので、アルバム自体の内容を把握するのは問題なかった。
前述の通り、3曲目までの曲の配列は最高で、それ以後ややアルバムのムードが変わる気がした。
泥臭い曲が出てくるのだ。だが、それもまたボズの音楽性。
というのは、このアルバム以後に出たアルバムでは、全体的に泥臭い印象のアルバムもあったからだ。
後に大ブレイクして一般的に知られたボズのイメージは、洗練されてオシャレなAOR路線であろう。
その路線は、やがて発表される「スローダンサー」などで大きく開花することになった。
そして、あの金字塔「シルクディグリーズ」につながった・・・という流れだろう。
このアルバムを聴いて私が感じたのは、後の洗練されたオシャレなAOR路線の音楽性と、泥臭い音楽性は、初期の頃からボズの中に同居していたということだった。
このアルバムでは、その二面性がよく出ていたようにも思う。
とにもかくにも、やがて来る「シルクディグリーズ」の黄金時代への息吹が芽吹き始めているこのアルバム。
なんといっても、オープニング曲にこの「We Were Always Sweethearts」が出てくることが魅力だと思う。
まさにご機嫌なオープニングなのだ。
ボズのベストアルバムなどには、この曲はセレクトされたり、されなかったりしているようだ。
さすがに「ロウダウン」や「ウィーアーオールアローン」はベストアルバムには必ずセレクトされるが、この「恋人同士」や「スローダンサー」や「ハードタイムス」などの名曲やヒット曲がベストアルバムによっては外されることもあるのが、個人的にはちょっと不思議。ボズのキャリアには欠かせない魅力的な曲だと思うだけに。
私がもしもボズのベストアルバムの選曲をするなら、以下の曲は入れると思う。
ロウダウン
恋人同士
ハードタイムズ
スローダンサー
ダイナフロー
ハーバーライト
ハリウッド
ジョジョ
トワイライトハイウェイ
ローンミーアダイム
シモン
ウィアーオールアローン
CDならもう少し入る・・・というなら、あと数曲は会社の思惑を反映させるけど。
もしかしたら、「ローン・ミー・ア・ダイム」はベスト盤に入れるには尺が長すぎると言われるかもしれない。12分以上ある曲だから。
その場合は、最近のアルバムからもセレクトして入れてあげたほうがいいのかもね。
個人の趣味で決めていいというなら、つい初期の曲になってしまうが、「ウェイティング・フォー・トレイン」「セイル・オン・ホワイト・ムーン」「素敵な女たち」などだが、そのへんを選ぶとあまりに個人的な趣味に走りすぎかもね(笑)。
ボズの現行のベストアルバムは何種類かあり、それを見てると、収録曲は、「なぜ、あの曲を外すんだろう」「この曲は入ってるのに、あの曲は入っていない」などと思える選曲があって・・・。
片方は「スローダンサー」が入ってなかったり、もう片方は「ハリウッド」が入ってなかったりするのは、個人的にちょっと不思議。
で、今回取りあげる「恋人同士」もまた、ベストアルバムには必ず収録するにふさわしい曲だと私は思っている。まあ、ちゃんと収録しているベストアルバムもあるのだが、収録していないベストアルバムもあって。
蛇足だが、「恋人同士」という邦題は、もう少し何とかならなかったのかなあ・・・という気はする。原題のエッセンスはある程度活かしてるとは思うけど。
かといって、原題「We Were Always Sweethearts」は、日本人が言うには少し長いかな・・という気もするし。
そのへん、難しいね。
え?
私のあげたリストに、ボズの最近の曲が入っていない?
す、すいません、近年のボズのアルバムはまだ聴いてないのです・・。
なので、あくまでも私が聴いていたボズの曲のなかから、選びました。
なんでも、一時ボズは音楽を引退して、別のビジネスをやっている・・という話を耳にしたりもしました、
まあ、最近は本業の合間に音楽活動も行っているみたいですが。
https://www.youtube.com/watch?v=wEAEdVLUs_4
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