「スポーツ根性もの」と呼ばれるジャンルのマンガが一大ブームを起こした時代があった。
代表的なのはなんといっても「巨人の星」「あしたのジョー」。女の子が主人公の「サインはV」「アタックNo.1」なんてのも人気があった。
そういう作品の中には、現実にはありえない技がてんこ盛りで、そういう技こそが作品の人気にも大きく影響を与えていた。
今回とりあげる「柔道一直線」もそうだった。
原作は梶原一騎、作画は永島 慎二・・というタッグによる漫画(劇画)。
ただし途中から作画は斉藤ゆずるにバトンタッチしている。
その漫画はテレビ化されて、その人気は爆発的だった。テレビ版はアニメではなく、実写ものとして製作された。
もちろん、柔道モノだ。
いやはや色んな技が出て来た。
今思い出してみれば、出て来る技は、柔道モノとは言いながらも、実際的にはどちらかというとプロレス系の技のような技が多かったように思える。
二段投げ、ライナー投げ、地獄車、大噴火投げ、その他。
上にあげた技を実際の柔道でやろうとしたら、まず決まらないのではないだろうか。
実際の柔道の試合を見てると、両者とも動きっぱなしで、隙がない。よほど相手に隙がないと。
二段投げをかける時は、まず相手を頭の上に持ち上げて、くるくる回した上で壁に向かって投げていたように思うが、実際の柔道では相手を頭の上に持ち上げるなんて無理だろう。
持ち上げてる途中で逆に何か技を相手からかけられそうだ。
ライナー投げでは、両者の実力が伯仲すればするほど、あんな投げられ方はしないだろう。
だって、投げられた相手は、まるで「気をつけ」でもしたような礼儀正しい格好ですっ飛んでゆく。
実際には、投げられそうになったら、相手はもっともがくはず。
もがいたら、あんな礼儀正しく投げられることはないと思う(笑)。
地獄車は両者がからみあって、車輪のように床を転げまわっていく技だった。だが、これまた、実際にはああいう技をかけられたら相手はもがくはず。回転している最中にふりほどかれると思う。態勢が崩れて。
大噴火投げでは、空中高く放り投げた相手が落ちて来た時に、頭で受け止めダメージを与える。
いったん投げたら、わざわざ頭突き(?)を食らわさなくても柔道ならオーケーじゃないのかな(笑)。
プロレスなら「見映え」的に、頭突きをくわえたほうが映えるとは思うが。
この柔道一直戦では、技をかけられた相手が技をふりほどこうとしてもがく・・という概念はなかったような。
ただただかけられるに任せる、投げられるに任せる・・・そんな感じだった。
この番組にでてくる柔道選手は、素直で大人しく、あきらめが早かった・・ということになりそうだ(笑)。
プロレスなら、ショー的な要素もあるから、相手のかけた技を「客に見せる」という演出もありそうだ。
だが、柔道の試合では、動きがスピーディだし、相手に技をかけさせるような動きはしない。そんなことをしたら、一瞬のうちに1本とられて負けてしまうだろう。
かけられても、かけられっぱなしってことはない。
そう考えると・・・やはり「柔道一直線」の技は、プロレスに近かったような気がする。
蛇足ではあるが、「見せる技」という意味では、近藤正臣が結城真吾という役で主人公・一条直也のライバルとして登場した。
そこでの近藤正臣は凄かった。だって、足の指でピアノを弾いてしまうんだもの(笑)。
そんなのエルトン・ジョンだってできやしない(?)。
この技は柔道とは関係ないが、「見せる」という意味ではインパクト大だった。
柔道とは関係ないそんな技まで番組に取り入れてしまうなんて。
まさに「見せるサービス精神」にあふれた番組だった。そんな性格(?)を考えれば、プロレスみたいな派手な技があの作品には必要だったってことだね。
そんなことをつらつら考えてみると、「柔道一直線」を川柳にすれば、つい・・・
「柔道か? 違う!ほとんど プロレスだ!」
・・と詠みたくなるのだ。
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