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「江川と西本」  作・森高夕次、作画・星野秦視

2016年09月16日 | 漫画・アニメ、そして特撮

「江川と西本」というコミックが個人的に好きだ。

作・森高夕次さん、作画・星野秦視さん。ビッグコミック・スペリオール連載作品。

 

これは80年代に巨人の投手陣を支えた2大エース、江川卓さんと西本聖さんのことを描いたコミック。

 

新聞やテレビで提供される情報や、当時のチーム内での二人の存在の仕方など、内なる情報を知らないファンであっても二人のライバル関係は見てて伝わってくるものがあった。

また、今にして思えば、あの二人が同じチームにいて、競い合ったからこそ、当時の巨人軍の強さにつながったのは、誰もが認めることだったのではないだろうか。

 

思えば、80年代と90年代の読売巨人軍の投手陣は、今考えると投手陣の黄金時代だった。まさに投手王国と呼ぶにふさわしかった。

 

80年代は、江川・西本の絶対的な両エースを軸に、定岡、加藤初も活躍していた。抑えでは角が大活躍していた。

 

90年代は、斎藤・桑田・槇原の強力3本柱。他に宮本や木田などもいた。

 

これだけの投手が同じ頃に同じチームにいたなんて、信じられないぐらいだ。

絶対的なエースが複数いるなんて、贅沢だったと思う。

 

当時の巨人の投手陣に対抗できる投手陣を持っていた球団は、同リーグでは80年代後半から90年代前半の広島カープぐらいだった印象があった。北別府、大野、川口、長富、そして抑えにあの津田。

当時の広島のこの投手陣の顔ぶれも、すごすぎる。

エースが一体何人いるんだ?・・という感じだった。

 

まあ、話を元に戻すが、江川投手や西本投手は当時はどちらもリーグを代表する投手だったはず。

どちらか1人がチームにいても、絶対的なエースだったと思う。

だが、そこに至るまでの両投手の道のりは対照的だったようだ。

「江川と西本」は、そのへんを描いている。

江川投手は高校時代から怪物と騒がれていた。高校時代の江川投手の投げた球は、とうてい高校生では打てるようなしろものではなかったようで、バットにボールがかすっただけでも拍手がきたほどだったらしい。

高校3年時でのドラフトで江川投手は文句なしの1位指名されたが、プロ入りはせずに大学へ。

そして大学でも絶対的なエースとして君臨。大学時代は、打者としても活躍したりした。それだけ、野球のセンスに恵まれていたのだろう。

で、問題の大学4年時でのドラフトで色々なことがあり。

紆余曲折で巨人に入った時は、ダーティなイメージでとらえられてはいたが、それでも、超エリートであることは確かだった。

 

 

「江川と西本」は西本投手が主役だ。西本投手の視点で描かれている。

西本投手は江川投手とは違い、決してエリートというわけではなかった。

巨人入団はドラフト外。

巨人が甚大な代償を払ってまで獲得に行った江川投手とは対照的だ。

ドラフト外でひっそり(?)入団した西本投手と、鳴り物入りで入団した江川投手。

その二人がやがては巨人の2大エースとなった。

 

どちらかというと、私の印象では、西本投手が絶えず江川投手に対抗心を燃やし、それをばねにのし上がって行った感があった。

ただし、相当量の練習をして。

 

当時、スポーツ新聞の記事を読んだり、テレビで二人の様子を見てると、決して仲がよさそうには見えなかった。

でも、プロで、しかも同じ先発型投手である以上ライバルでもある。仲良しこよしじゃやっていけない部分はあるはず。

2人が競って切磋琢磨して、しかもどちらもエースらしい働きをして、その結果チームが勝てていけるなら、球団にとってもファンにとっても、ある意味理想的だったろう。

また、実際にそうなったわけだ。

 

現役時代、意地と根性で競り合い、強烈なライバル心を隠さず、猛練習でのしあがった西本。

溢れる素質により、圧倒的なピッチングをして、その凄さを見せつけた江川。

チームがたとえ江川で負けても、まだ西本がいた。

たとえ西本で負けても、まだ江川がいた。

そんな安心感があったのではないか。

まさに2大エースだった。

その二人のおかげで、チームはあまり大崩れはしなかったような印象が私にはある。

 

近年、そんな二人が長い年月の後に再会する番組があった。現役時代あれほど競い合った二人が、長い年月の後にどんな再会をし。どんな会話をするのか私は興味あった。

どちらかというと、西本の方が江川に再会できることに対する思いは強いように思えた。

 

二人の現役時代は、私はきっと仲が悪いのだろうと思って見ていた。

だが、近年の二人の再会番組や、周りにいた人の証言によると、ファンが思うほどには険悪な関係ではなかった・・という話もある。

実際のところは、当事者じゃないとわからないのだろう。

 

思えば、潜在的な才能や素質という意味では江川のほうが凄かったのだろうと思う。

とはいえ、西本が江川に強烈な対抗心を燃やしていたのは事実だったろう。そしてそれがあったからこそ、西本は努力を重ね、江川と並ぶエースになったのだろうと思う。

 

このコミックで描かれている江川、西本、二人のキャラが実際にこうだったのかはわからない。

でも、一時代の怪物と呼ばれた江川と、妙な縁でつながっていくことになる西本の過程は、面白い。

コミックならではの脚色はあるはずだとは思うが、こんな感じであったとしてもおかしくない・・・そんな気持ちで読める。

 

江川投手といえば、かつて江川投手を主人公にして描かれたコミック、「たかされ」という作品があった。

描いたのは、本宮ひろ志さんだった。

 

「たかされ」といい、今回の「江川と西本」といい、江川卓という人物はコミックにされやすい人物なのだろう。

というか、漫画家を触発してしまう人物なのだろう。

江川投手をその学生時代からリアルタイムで見ていた人間にとっては、高校時代の神がかった凄さ、大学時代の安定感、ドラフトでの騒動、そしてプロ入りしてからの活躍など、まさに江川投手はドラマチックな生き方をした人物なのだろう。

 

以前このブログで私は江川投手について、こんな記事を書いていた。その部分をコピーして引用しておく。

「江川投手の背中には、本来もっと高い数字をあげられたはずの通算成績が隠されてるような気がする。
そう、もぎとられ、つぶされた、もっと高い数字の生涯成績が埋まっているように思えてならない。
彼の実際のプロ生活は、私には不完全に終ったように思えてならない。」

 

だが、その江川投手は、西本投手というライバルを、同じチーム内に得ることができた。

もしも西本投手がいなければ、江川投手のプロ通算成績はもっと少なかったのかもしれない。

もちろん、江川投手がいなければ、西本投手のプロ通算成績ももっと少なかったかもしれない。

 

特に江川投手は、彼と同等の投手としてのライバルになれる投手など、学生時代には望むべくもなかっただろう。

プロ入りしても、入団したチームによっては、彼と同等に張り合える投手などいなかった可能性もあったはず。

それが、当時の江川投手が入団したチームでは、西本投手という、江川投手とは別のタイプの投手で、しかも同等に張り合える投手がいたというのは、幸せなことだったように私には思えてならない。

 

 

 

だからこそ、このコミックが江川投手の視点ではなく、西本投手の視点で描かれている・・・ということが面白い。

 

「江川と西本」。

これからも注目していきたい作品だ。

 

できればドラマにでもしてくれないかなあ。

 

江川投手の放っていたオーラ。

西本投手に感じた炎。

私にとってはどちらもとうてい忘れられない選手であり、大好きな選手だった。


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