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鉄人28号の謎 金田正太郎の秘密

2013年07月17日 | レビュー(テレビ、ゲーム、本、映画、その他)

え?

なぜ今、鉄人28号の謎・・なのかな?

と思ったが、実際に幼年期に鉄人が好きだった立場としては、買わずにはいられない本だった。

どうやら、鉄人の久々の再アニメ化にちなんでの企画だったようだ。ならば、合点もいく。

まさか最近、早朝に、しかも短い時間枠で、更にしかも!デフォルメキャラでの鉄人再アニメ化がなされていたとは・・。

ともあれ、本屋で少しパラパラと目次を読んでみて、衝動買い。

この本は、表題通りに、鉄人28号や正太郎にまつわる謎がいくつも取り上げられ、その謎を解明している。

謎の検証には、時には独自の回答もある。

 

そう、鉄人と正太郎には、後で考えてみるとたくさんの謎があったのだ。

リアルタイムで見てた頃にはあまり気にならなかったことでも、後で思い出してみると、どうも合点がいかないことがいくつもあったのだ。

例えば鉄人の身長。鉄人の動力源。鉄人の武器。

正太郎の親。正太郎の家と車。

最強のロボットは、どれか。最強の科学者は誰か。

大塚所長のフルネームや、家族。

その他。

などなど、重箱の隅をつっつくような謎も多いが、後で思い出してみると、けっこう不思議な点は多い。

 

鉄人の正式な身長への作者の答えが、「とにかくデカい」という答えだったのは強力な回答だった(笑)。

正太郎が、普段学校へもいかず、同年代の友達もいなく、車を運転し、拳銃を所持し、なぜたった1人であんな豪邸に住んでるのか・・というのは、実はリアルタイムで見てる当時でも、少しは疑問に思っていた。

正太郎の親は欧州に住んでいる大金持ち・・・という推測は、面白かった。で、親から離れ、たった一人で日本で暮らしている事情を察している大塚署長が、正太郎に親を思い起こさせることを何も言わずに正太郎を我が子のように可愛がってる・・という解釈は、中々ハートフル。

最強の科学者は、ファンとしては敷島博士だと思いたいが、ブラックオックスやバッカスを作った不乱拳博士こそが最強・・という説には、私も納得。

 最強のロボットは?という謎に関するこの本の解釈を読んでると、なぜ「鉄人28号」が面白かったか・・その要因が分かった気がした。

鉄人は決して最強ではなかった。自分よりも強い敵と何度も戦う展開だったから、面白かったのだと私はあらためて気付かされた。

ウルトラマンが、ゼットンと同等の能力を持った敵と何度も戦うようなものだ・・・と書けば分かりやすいかもしれない。

自分よりも強い敵と戦うからこそ、苦戦する。鉄人自体は意思をもたないので、鉄人を操縦する正太郎やそのブレーンたちが知恵を出し合って協力して戦った。そこに面白さがあったんだと思う。

はっきりいって、ブラックオックスもギルバートもバッカスもVL2号も、能力的には鉄人よりも強い。

それらの敵ロボットを鉄人を比べると、鉄人の方が見劣りするように感じたことも、しばしばだったし、まともに一対一で戦ったら、鉄人には勝ち目はないのだ。

なにせブラックオックスもバッカスもギルバートも、打倒鉄人のテーマで作られているから、鉄人と同等以上の能力を持っていた。特にブラックオックスなどは、武装しているうえに、鉄人の弱点をつく能力を与えられていた。

結局、鉄人はオックスには一度も勝てなかった。0勝2敗なのだ。どうりでオックスには強烈な印象があったわけだ。ましてや、オックスはやがて、敵から味方に変わった。その時の頼もしさったら、もう!ある時は鉄人を助け、ある時は鉄人とタッグを組んで敵と戦い。

主人公が一度も勝てなかった敵がいる・・・こんな作品、今だって珍しいぐらいだから、当時としては私にとっては強烈な印象を持った。

 鉄人が、能力や強さ的には決して最強じゃなく、しかもその「最強じゃない」設定は、最後まで変わらなかった。

他の作品などでは、主人公が敵わない敵が出てくると、その敵に備えて主人公をパワーアップさせたり、新たな能力や武器を見につけたりさせる作品が世には多いが、鉄人の強さのレベルは最後まで変わらなかった。

じゃないと、主人公はどんどん強くなっていき、やがては敵の設定に苦労するようになり、しまいには敵がいなくなってしまう。もしくは、敵がスケールダウンして見えるようになる。

だが、主役が決して最強じゃなければ、話は続けやすいし、敵の設定もしやすいだろう。

 

この本の作者は、鉄人28号自体は決して最強じゃないが、正太郎や大塚署長や敷島博士などと鉄人が一緒になって戦う「鉄人28号チーム」が最強だった・・・という見方には、私は大いに納得し、共感した。

そして、「最後まで鉄人は決して最強ではなかったから、鉄人28号という作品は面白かったのだ」という、鉄人が面白かった理由を、改めてこの本は実感させてくれた気がする。

 

古い作品なだけに、設定的にはおおらかで、現代感覚からすれば「ツッコミどころ」満載の名作「鉄人28号」。

だが、その存在感は、鉄腕アトムと同等なのだ。昔も今も。

リアルタイム連載時、鉄腕アトムと鉄人28号は、世の子供たちの人気を見事に2分していた。その頃は子供たちは「鉄人派」と「アトム派」に分かれていた部分もあった。その意味では、リアルタイム活躍時はアトムと鉄人はライバル関係にも思えた。

 

だが、鉄人とアトムは、共にロボットコミックというジャンルを開拓し、確立もし、後の日本コミックに大きな道を開いた同士であり、功労者でもある。

その後の日本コミックの流れを見れば、アトムと鉄人は、ロボットコミックの面白さの原点を世に伝える戦友であり、なにやらパートナーのようにも思える。

 

ともあれ、鉄人に興味や思いれがある人にとっては、一気に読み干してしまえる一冊、それがこの「鉄人28号の謎、金田正太郎の秘密」という本ではある。

 


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