かつて一世を風靡した青春ドラマ「俺は男だ!」は、森田健作の出世作として知られる。
この青春ドラマ版は、森田健作のキャラクターもあって、今でも割によく知られているし、語られることも多い。
だが・・この作品の原作版については、あまり語られることがないような気がする。
この作品、原作は実は少女漫画なのだ。
作者は津雲むつみさん。
この記事で紹介してる写真は、原作版の小林弘二と吉川操である。
ドラマはかなりの評判を呼び、そこそこ放送が続いたが、実は原作漫画のほうは、決して長編ではない。
私が持ってる単行本では、なんとたったの2巻である。
そう、2巻で完結しているのだ。
ドラマに熱中し、その後長い時間が経過した頃に原作本を入手した時は、
「あれ?たったこれだけで終わりなの?」
と少し拍子抜けしたものだった。
あまり長くないぶんだけ、買いやすくもあったんだけどね。
原作とドラマでこれだけボリュームが違うということは、ドラマがいかにオリジナルでストーリーを膨らませたか・・のいい証明だろう。
モリケンは確かデビュー時は、今の様な典型的な横分けヘアーだった。
それがドラマ「俺は男だ!」で主演するにあたり、髪の毛をザンバラヘアーに変えていた。
前髪を前に垂らしたスタイル。
横と後ろは、当時の普通の高校生よりもやや長め。
彼が横分けからザンバラヘアーに変えた理由は私には分からないが、あのブレイクぶりはそのヘアスタイルのおかげもあったと思う。
漫画版を読んでみると、主人公の小林弘二はザンバラヘアーである。
この作品のドラマ版の主役のオファーがあった時に、当然彼はこの原作は読んだだろう。
きっと、漫画版の小林弘二を意識して、ああいうザンバラヘアーに変えたのだろう。
この原作、読んでみるとわかるが、正真正銘の「少女漫画」である。
コマ割りといい、キャラといい、ストーリーの展開といい。
ただ、コマ割りは、心持ち、他の少女漫画よりは「少女漫画特有のコマ割り」ぶりは抑えめである。
だから、普段少女漫画にあまり縁がない私でも、すんなりと読み進むことができた。
ストーリー的には、弘二と操のラブストーリーである。
熱血学園モノ・青春モノであるのは確かだが、それ以上にラブストーリーである。
ドラマの方では、弘二と操のプラトニックなラブストーリーであることは変わらないが、それ以上に青春ドラマ色の強い展開になっていた。
このへんは、TVドラマ版のアレンジだったろう。
もともと青春ドラマは好きだったので、私はそのドラマのほうにすんなり入り込めたし、熱中もした。
一方、この原作の方は、弘二と操がつい反発し合う・・という設定は同じにせよ、2人がやがて互いに惹かれ合ってゆく・・という心情が、けっこう早い段階から出て来ている。
ドラマでは、弘二と操の関係の進展は、もっとゆるやかだったような気がする。
熱血学園漫画というのは少年漫画にはよくある。
だが、女流漫画家が描き、しかも熱血学園漫画風のスタートで少女漫画誌に連載された作品である・・という点が、この作品の特徴ではないだろうか。
これが少年漫画誌に載った熱血学園漫画なら、男性主人公ばかりにスポットが当たるのだろうが、この作品では、少女漫画誌に掲載されたものらしく、ヒロインの操も、弘二と半々で主人公をつとめている。
もっとも、弘二の性格が熱血学園漫画風なだけで、物語が進むにつれて、そのストーリーは、熱血ものというよりも、どんどんラブストーリー色が強くなっていく。
最後のほうは、あまり熱血ものという感じはしなくなって、純粋に「ラブストーリー」もの・・という感じだ。
印象からいうと、「熱血学園もの」風に始まりながらも、読み終わってみたら「完全にラブストーリー」だった・・そんな感じ。
ドラマでは、原作に出て来ない多彩な人物たちが登場し、主人公の弘二とからみあって色んな事件が起き、青春ドラマとして膨らんでゆく。
弘二と操のラブストーリー・・ってだけではないのだ。
操もメインの人物であるが、あくまでも主人公は小林弘二だった。
また、弘二と操以外の脇役の存在感も強い。ゲストも多彩で、ドラマに奥行きや多様性を与えていた。
そこが、ドラマ版「俺は男だ」の幅広い面白さでもあった。
だが、漫画では、弘二と操の2人の主人公の心理描写が中心。
読んでてじれったいくらい、2人の心は、接近したり離れたりを繰り返しながら、互いの気持ちが強くなっていく。
2人以外の登場人物の存在感は、やや霞みがちだ。
それほど、弘二と操の2人主人公の関係や心情が中心となって物語は進んで行き、終わる。
だから、ドラマ版のイメージが強い人がこの原作を読んだら、ドラマ版との違いに少しとまどうかもしれない。
なにより、私がそうだった。
熱血学園漫画風に始まり、弘二と操の関係にしぼったラブストーリー、それが漫画版「俺は男だ!」。
今では「俺は男だ!」は、どっちかというと森田健作1人のものになっているようなイメージもあるね(笑)。
さて。
ドラマの弘二にしろ、漫画版の弘二にしろ、今の時代では、こういう男性は存在しづらいだろうなあ。
相手にされないか、やっかみを受けるか、へたしたらドンキホーテみたいになってしまいそうだ(笑)。
「自分1人だけ、いい思いしやがって」とか「カッコつけやがって」とか思われて、反発を受けたりして(笑)。
漫画版では「ま、これは漫画だから」と思って、笑って受け流せる。
でも、ドラマ版の弘二は、当時の私は「こんな奴になりたい」と思って憧れたものだった。ドラマだと、実在の人が演じてるわけだから、どうしても漫画よりはリアルに感じてしまう。
ホント、純粋だった私は、「なれるもんなら、こんな男になりたいよ」と思ったもんだった(爆)。
ドラマ版のイメージが強いから、後になって初めてこの漫画を読んでると、読んでて、弘二と操がどうしても森田健作と早瀬久美の顔がだぶって見えて仕方なかった。
漫画版を先に読んだ上でドラマを見たのであれば、もっと違った感想を持っただろう。
弘二のような男が、全ての女性にとっての理想とは思わない。
ああいうタイプは、ドラマの中のキャラだからいいのであって、現実にいたら「引いて」しまう人もいるだろう。
好き・嫌いがけっこうハッキリわかれるキャラだったとは思う。
でも、当時の女性が願う男性像の「理想像の中の一つ」が、この小林弘二だったんだろうね。
今、この小林弘二が本当にいたとしたら、今の女性はどう思うのだろう。
今の世相、今の価値観の中で。
ともあれ、森田健作さんは、この「小林弘二」というキャラをライフワークにして生きている感じがする。
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