道はこれから本格的な登山道になってゆく。早速、ルートは下り坂になった。
さあ、降りてゆこう。霧の中を。
ちょっと下りはじめると、左側に谷らしきものがあることに気付いた。水が流れる音が聞こえ、しかもその音はあたり一帯に響いている。
場所によってはその流れは滝のようにも見えた。昨夜の激雨で水量は増しているのだろう。
その水の流れは、天女ヶ原湿原登山道と並行して流れているかのようだ。
いや、実際このあたりではそうなのだろう。
この登山道を降りてゆきながら見れば、ほう、こうして水の流れが登山道に近づいてきている。
後から分かったことだが、このあたりのルートは、だいぶ楽な方だ。
余裕もまだある。ひたすら心地よく、楽しい。
風景にも癒される。
私が今歩いているのは当然「下り」。登りだと、もっと大変だろうな。
だが、途中ですれ違った3人の登山者は普通に登ってきている。特に最初の2人は。
1人めは外国人男性。スタスタと、いいペースで登ってきている。手なれた登山者って感じ。
その次にすれ違った2人めは、女性。「下の方は、かなり水が多いですから気をつけてください。」と声をかけてくれた。
そしてその後少し間が合って、すれ違った3人めの登山者は、おじさん。さすがに、ちょっとしんどそうだった。
そりゃそうだろう、登りはこんな感じの道が続くのだもの。↓
いや、むしろ、これでもまだ楽な方なのだ。それはこの先、私は思い知ることになる。
おじさんいわく、「いやあ、(ここまで来るのに)水浸しになってしまいましたよ。ゆうべの雨がかなり残ってます。」と、半分ぼやきながらのアドバイス。
むむ・・これは、下の方は私もかなり水に濡れてしまうのは覚悟しなければならないかも。
ともあれ、本格登山者は、ロープウェイを使わずに、山麓から自力で山頂を目指すのだろう。それも、こだわりなのだろう。
歩いていると、どこからともなく、鳥らしき鳴き声が。こんな高さのところにも、いるのかな・・。
鳥の鳴き声らしきものは、谷を流れる水の音とハーモニーして、あたりに響いていた。
登山道は、歩き続けてゆくと、岩でどんどんゴツゴツしてきた。
岩は濡れており、うかつな歩き方をしたら、うっかりすると足を滑らしそうだ。
このゴツゴツとしたルートは、滑りやすく、なおかつ歩きにくく、下りでも十分きつくなってきた。
膝にくる。
でも、行かねば。ここから引き返したら、かえってハードになってしまう。
途中で、先ほどの川がルートを横切る場所があり、そこでついに私は足を滑らした。
咄嗟に岩か何かをつかもうとして、すってしまい、その際右手首を切ってしまった。血がうっすら・・。
気付けば、左手の指にも切り傷が2か所できている。
たまらず、そこで一休みすることにした。清流わきの岩に座って足元の清流を眺める。
顔が汗だくなので、この清流の水で顔を洗った。そういや、尾瀬でも同じことをしたっけ。
冷たい水が、汗でほてった顔に心地いい。
流れる水の音も、いい。
やがて・・ルートはどんどん細くなり、左右の植物が道を覆うとでもするかのように左右から伸びていて、いちいち私の体に触る。
しかも、その葉は、さっきの登山者が言っていたように、どれもかなり水を含んでいる・・・というか、濡れている。
そんな植物たちに触られ続けて歩いているおかげで、私の服はどんどん濡れてきた。
服の染みは、もう汗なんだか、植物がなすりつけた水なんだか、区別がつかない。
しかも・・・そのルートには・・だんだん水が流れるようになってきている。
沢歩きをしている感覚だ。しかも、そういう状態が延々と続く。
この下の写真など、まだいいほうだ。流れる水の幅が控えめな場所だから。
だが、この先、場所によっては、この登山道の横幅すべてを占めて水が流れてたりするようになった。
しかも、水から出ている岩は滑りやすい。
何度も、足首をひねってしまいそうになった。そういう道では、とても写真など撮るどころじゃなかった・・。
豪雨・・いや、激雨の翌日の登山道のハードさを、つくづく思い知らされた。
さきほどすれ違った登山者のアドバイスやぼやきが、よく分かった。同感だ。
そういえば・・・このルートは、登山道でありながらも、天女ヶ原湿原へのルートでもあるはず。
湿原は・・・どこにあるのだ?
まさか、気付かぬうちに、もう通り過ぎてしまったのか?
いや・・湿原らしきエリアには・・まだお目にかかった覚えはないのだが・・。
だとすると、この先にあるのだろう。そう思って、それを支え(?)に、進む。
・・・まだかな?
まだ湿原には出ないのかな?
いつ出るのかな・・?
そして、・・・天女は????(笑)
つづく
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