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私の漫画遺産 12 「あいつ!」 by 真樹日佐夫・逆井五郎

2021年12月28日 | 漫画・アニメ、そして特撮

 

 

これは黎明期の少年ジャンプに連載されていた作品だ。

当時私はまだまだ少年だった。

この作品はリアルタイムで読んでたのだが、なにぶんあまりに昔のことなので、内容は細かくは覚えてなかった。

また、少年ジャンプは毎号買っていたわけではなく、この作品は主に立ち読みしてただけだったかもしれない。この作品の結末まで見届けた覚えもない。

 

ただ、当時の私にとって、この作品はどうも「気になる作品」ではあった。

当時の少年漫画の中では、テーマが風変りに思えたからかもしれない。

なにしろ、キザ道を極めようとする花之井清彦と、美女コンテストで優勝した宗方真弓が主人公。

一応、真弓の視点で物語は進む。

 

当時それまでのコミックに、「キザ道」を極めようとする男性がメインキャラの作品なんて、他になかったと思う。

「妙なテーマだなあ」と思いながらも、それを少年漫画のテーマに持ってきたのが新鮮に思えた。

 

原作者の真樹日佐夫さんは、あの梶原一騎さんの実の弟さん。

作風も、近いものがあった。

そんな真樹さんの描く恋愛モノなのだが、ある意味「学園熱血恋愛漫画」と言えなくもないか。

 

作画の逆井五郎さんに関しては、私が逆井さんの作品で知ってるのは、この「あいつ!」だけだ。

今見ると、古さを感じる画風ではあるが、当時の私にとっては魅力的に思えた画風だった。

テーマの風変りさと、画風に惹かれて、私はついつい読んでいたのだと思う。

そして「どうも気になる作品」であったのだ。

 

ただ、この作品、決して大ヒットした作品というほどではなかったため、その後年月の経過の中ですっかり埋もれていってしまった。あまり話題にあがることもなく。

私も基本的に忘れてしまっていた。だが、完全に頭の中から消えたというわけでもなく、頭の奥の片隅には残っていた。

ごくたまに、何かのきっかけでこの作品を思い出すこともあり、そのたびに「そういや、あの作品、結末はどうなったのかな」などと思うことはあった。

 

ある日、久しぶりにこのコミックのことを思い出し、検索してみたところ、復刻本があることがわかった。

「あ、あの漫画か。そういや結末がどうなったのか知らないんだよなあ。」と思い、気付いたら、その復刻本を注文してしまっていた(笑)。

 

で、無事に入手し、読んでみたというわけだ。

最初から結末まで、一気に。

 

私がリアルタイムで読んでたのは、作品の序盤のほうだけだったようで、序盤以後の展開はまったく記憶になかった。

 

ただこの主人公の男性「花之井」のルックスは、私が小学校の頃に描いてたオリジナル漫画のうちの1作の主人公に顔が似ていた。傾向が。

だからこそ、当時の私はこの作品が「気になって」いたのだろう。

もしかしたら、自分では意識はしてなかったが、少し影響も受けてたのかもしれない。

自分では、そのキャラは別の漫画家の影響を受けてたつもりでいたのだが(笑)。

やはり、私はこの「あいつ!」には、前述の通り、絵柄で惹かれた部分は大きかったとは思う。

花之井の顔、真弓の目など、特に。

 

とにもかくにも、数十年ぶりに再会した「あいつ!」。

今の感覚で読むと、さすがに古さは感じた。まあ、当たり前か。

キザ道を極める・・・というテーマは、当時は新鮮だったが、今のコミックはそれこそ多様なテーマが溢れているから、驚きはしなかった。

でもね・・・やはり、当時としては新鮮なテーマではあったのだ。特に、少年漫画界においては。

 

 

女主人公・真弓は前述の通り、美少女コンテストで優勝した美少女で、その気になれば芸能界方面にも行けたのだが、本人はそれを蹴って、普通の学園に入学。

そこで出会ったのが、花之井清彦という、この漫画もうひとりの主人公。

花之井はイケメンで、しかもキザ。学園でもモテモテだ。自分になびかない女なんていないと思っている男。

一方、転校生である真弓も、自分になびかない男なんていないと思っている女。

転校してくると、さっそく「選りすぐり」のような男子が真弓へのアタックに乗り出す。

清彦もその中の1人のはずなのだが・・・。

 

花之井は、けっしてケンカが強いわけでもなきゃ、スポーツ万能というほどでもなく、秀才というわけでもない(もっとも、それは仮の姿ではあったのだが)、学園一の「チャラ男」。

彼はそのルックスを活かし、キザ道を極めるためには様々な手段を使う。危険を顧みずに体もはる。社会的な立場を失いかねないこともする。計算もする。

なにが彼をそこまでかりたてるのか。

それには彼の置かれた家庭環境、生活環境が影響していた・・。

 

真弓は自身にアタックしてくる男子たちを冷静に観察し、見比べながらも、花之井のハチャメチャぶりには関心を示してゆく。

そして・・

真弓と花之井は、恋愛において、立場逆転を繰り返しながら、物語は進んでいく。

 

まあ、内容は未読の人のために、このへんにしておこう。

 

現代の感覚で読むと、「この人たち、一体何をやってるの?」とでも言いたくなるような個所もある。

真弓や花之井に共感できない人もいると思う。むかつく人もいるかもしれない。

物語の進行が、都合良すぎると感じる人がいてもおかしくない。

なので、万人に勧めようとは思わない。

 

ただ、花之井の「キザ道」を極めるためのハチャメチャ言動ぶりは、今読むならシリアスな画風の恋愛ナンセンス漫画と読めば、けっこう面白い。

 

連載当時、この作品は私の周りでは話題になっていなかった。

私もこの作品名を、友人との会話に出そうとはしなかった。

でも、私以外にも、この作品が気になっていた奴や、少なくても読み続けていた奴がいたことは私は知っている。

この作品は、密かに気になって読み続けながらも、読んでることを明かさない傾向が私の周りではあったように思う。私も、友人たちも。

なぜだろう。

それは、この花之井というキャラのせいだったのだろうか。

それとも、ストーリーや設定ゆえだったのだろうか。

そういう意味じゃ、不思議な存在感のある作品ではあった。

 

 

ちなみに・・・この花之井清彦は、大人になったら一体どんな大人になっただろう。

若いうちはホストで、ゆくゆくはホストクラブ経営者・・あたり??

女性の扱い方といい、計算高さといい、信念を極めるためには危険なことにも体を張る意思といい。

ただ、この花之井のような女性の扱い方で、現代の女性がどれぐらいなびくかは不明(笑)。

 

 


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