テレビ朝日で「素浪人 月影兵庫」のリメーク番組が始まった。
月影兵庫といえば、大昔、近衛十四郎と品川隆二の伝説の名コンビによって大ブレークした番組。
最高視聴率は30%代半ばまであったそうだ。
私は大好きだった。
番組の売りは、近衛さんの日本一の殺陣、そして近衛&品川ご両人の抱腹絶倒のかけあいにあった。
今回、兵庫を演じるのは、松方弘樹さん。
近衛さん亡き今となっては、ファンとしては一番納得できるキャスティングだ。
なんといっても、松方さんは近衛さんの息子さんだから、実際兵庫に扮した姿を見てるとオヤジさんによく似てる。
オヤジは日本一のチャンバリストだったが、息子の松方さんにとってもチャンバラは得意。
まさにナイスキャスティングといいたい。
問題は焼津の半次を誰が演じるかだった。
過去に近衛主演の「素浪人シリーズ」は何作かあった。
「月影兵庫」「花山大吉」「天下太平」「いただき勘兵衛」など。
このうち、近衛&品川のコンビで演じたのは「月影」「花山」の2作。
近衛&品川のコンビがあまりにおもしろすぎたので、「天下」「いただき」を見るたびについつい「月影」「花山」と比較してしまっていた。
で、比較してしまうと・・・やはり品川隆二さんの不在が私の中ではひびいていたものだ。
どっちが欠けてもダメだったんだ・・ということを改めて実感したものだった。
思うに「月影」「花山」以外の素浪人シリーズがイマイチ盛り上がらなかったのは、時代の移り変わりのせいもあろうが、旦那とコンビを組む人物のキャスティングや設定がうまくいかなかったせいもあるような気がしている。
いや、どの相棒役の役者も頑張って演じてはいた。
だが、品川半次は、超えるにはあまりにも大きな壁だったともいえる。
だからつい「やっぱり、品川半次がいないと!」となってしまうわけだ。
単に主人公を引き立てる「相棒」を演じるだけなら、品川さんじゃなくてもいいのかもしれない。
だが、「焼津の半次」というのは、単なる引き立て役ではない。
主人公と持ちつ持たれつの存在で、存在感的には主人公と同格といってもいいだけの魅力を持ったキャラ。強力なんだ。
半次を主人公にドラマを作ることも可能なくらいに。
どこかユーモラスな部分もありながらも落ち着いてて、べらぼうに強く、いざという時に頼りになる旦那(近衛)。
表情豊かで、おっちょこちょいで、喜怒哀楽が万華鏡のように多彩で、オーバーな演技はギャグのようで、完全に三枚目だが、ケンカはそれなりに強い半次。
半次を演じた品川さんは本来非常にハンサム。でも、ハンサムな顔でありながら、作中では表情を思いっきり崩しっぱなしで、体当たり的演技で三枚目に徹していた。
「月影」「花山」では、旦那(近衛)と半次は対等の存在感があり(さっきも書いたけど)、お互いにののしり合ったりを平気でやる。
半次は旦那の男意気に心酔していながら、素直になれなくて、つい普段は対等に張り合おうとする。その結果、旦那につい、くってかかってしまう。
旦那はそんな半次に呆れながらも、心の中では「愛すべき奴」だと思っているし、半次を良き相棒だと思っている。友情も感じている。
クライマックスのチャンバラでは、戦いの前に二人とも敵を睨みつけてタンカをきり、いつも二人で敵集団をやっつけていた。で、半次だとどうしても敵わない敵がまざっている時は、半次をどかせて、旦那が一対一でやっつけていた。
このへんの関係が絶妙だった。
だが、半次以外の相棒だと、どうも旦那が生きてこないこないようにも思えた。
やっぱ、旦那と張り合って、遠慮なくくってかかれるような相棒じゃないと。
また、旦那も半次も明るかった。
半次がいるおかげで、普段渋い男であるはずの旦那まで明るかった。
いや、旦那も決して暗くはない。だが、半次と組むことで、旦那の明るさは、より引き出されていた感がある。
そんな2人の明るさの根底には人情味が溢れていた。
また、いざという時に、半次のケンカ剣法じゃ敵わない敵を旦那がやっつけるからこそ、旦那の剣豪ぶりもカッコよくて、際立った。
今回のリメーク「月影」。
1回目を見た限りでは、旦那はこれでいいと思う。松方さんの他に誰がいるというのか。
心配してたのは焼津の半次なのだが・・私が見た限りでは、今のところ、その心配は当たってしまっている。
半次は底抜けに明るくなくちゃ。感情表現が豊かな、三枚目に徹してくれなくちゃ。ギャグになってもいいのだ。
旦那にくってかかってくれなくちゃ。妙に旦那と張り合おうとしてくれなくちゃ。
お互いに遠慮なく憎まれ口をたたき、時にはののしりあってくれなくちゃ。互いに呆れるくらいに。
また、本格的な剣豪には敵わないまでも、そんじょそこらのザコ侍には勝てるだけの強さは持っていなくちゃ。
そんなことを思ってしまった。
でもまあ、1回目。
今後は二人で旅をして行くわけだし、お互いに段々慣れて来て、漫才のように明るく憎まれ口をたたきあってゆくようになっていってくれることを期待したい。
憎まれ口を互いに言い合い、互いに呆れあいながらも、根底には友情がある。
ベタベタせず、付かず離れずでも、心の中では通じ合ってる、そんな旦那と半次の友情は、私にとって理想の友情の姿だった。
とりあえず、今後のリメーク「月影兵庫」に期待したい。
旦那は今のままでいいけど、半次にはガンバってくれ!と言いたい。焼津の半次を演じるのは、大変なのだ。焼津の半次の役はとんでもない大役なのだ。プレッシャーはさぞかし相当なものではないか。過去の「元祖・月影」を見れば見るほど。
昨今、リメーク番組は増えてる。
リメークする際、ついつい自分ら流の演出スタイルをうちだそうとするために、初代の作品をないがしろにしてしまう場合がある。例えば、変えてはならない設定部分を変えたり、キャラの性格を変えたり。
それは演出側の意地でもあり、また「性」でもある。気持ちは分かる。でも、それは、往年のファンにとっては「制作側のエゴ」でもあるということだ。
今回のリメーク「月影」には、初代に対するある程度のリスペクトは感じたが(だから私は好意的に見た)、変えてはならない設定を変えてしまってる部分はある。
クモが苦手だったはずの半次はどこにいった?猫が苦手だったはずの兵庫はどこに?
これは作品の大きな隠し味だったと思うのだが・・。そのへんは、残念。そのへんもリスペクトしてほしかった。
リメーク作を制作する場合、初代が偉大であればあるほど、リスペクトの精神がないと、なかなかうまくいかないと思う。
なぜなら、初代のファンも注目してくるからだ。
また、世代を超えてヒットさせたいなら、初代のファンを引き込むことは不可欠。
ちなみに・・・1回目の放送で、品川隆二さんがゲスト出演していた。
で、今の松方兵庫にむかって、こう言うシーンがあった。
「俺も昔はあちこち旅してた。二人でな。あの旦那(つまり初代の近衛兵庫のことであり、ある意味花山大吉のことでもある)、今どうしてるかな。会いてぇなあ。」
また、松方兵庫に向かって、
「あんた、(俺が一緒に旅した)旦那にそっくりだよ」
とも言うシーンがあった。
で、それを言われて、いたずらっぽくも嬉しそうに微笑む松方兵庫。
このシーンに私は、プッと吹き出しながらも、ジ~ンとして、ウルウルきた。泣きそうになった。笑い泣き・・だ。
切なすぎるよ。心をくすぐってくれるよ。
まさに品川さんがこういう台詞を言うからこそ、重みもあるし、説得力もあるんだ。
この台詞を入れてくれたシナリオライター、監督、プロデューサー、そして品川さんご本人に感謝したい。
このへんは初代に対するリスペクトを感じた。
このシーンを見れただけでも、今回は見てよかったよ。
品川さんは、劇中どんな思いで、この台詞を言っていたのだろう。
・・・ご本人に、聞いてみたい・・・。
子供の頃「初代・月影」「花山」をこよなく愛してた私としては。
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