ギターに関して、よく聞かれる質問にこういうのがある。
2~3万円クラスの安い国産ギターと、100万円前後の値段がつく舶来ギターに、はたして値段分の差があるのか? ・・・・という質問。
正直私も10代の頃にマーチンD-45に憧れながらも、値段的にとても手が出なかった時、同じ疑問を持ったことはあった。
その後・・・そんな疑問は持ちながらも、それ以上に「あこがれ」の気持ちの方が勝ち、長い年月が経過する中で舶来の高級ギターを私も手にすることになった。
それで正直な思いを書いてみたい。
私が最初に手にしたギターは国産の15000円のギターだった。
初めて買うギターだったので、試し弾きなどもできるわけもなく、ただただレコード屋で売られていた安物ギターを、そのまま買った。選択の余地もなく。
そう、楽器屋で買ったのではなく、レコード屋で売られていた安物ギターだった。
レコード屋は本来楽器を売る店ではないので、オプションとして売っていたのだろう。
中学から高校にかけてアコギは数年間そのギター1本で通し、曲を作ったり、歌ったりしていた。
その時は、ギターというのは、こんな音なんだろう・・・と思っていた。
特別「良い音」とは思わなかったが、「イマイチな音」という実感もなかった。
と言うか、比較の対象が家にあったわけではなかったので、「違い」というものを実感できなかったのだ。
やがて、まわりの音楽仲間たちがバイトなどでお金を貯め、私よりも高いギターを入手。
といっても、せいぜい3~4万円前後のギターだったと思う。
ちょっとうらやましくなった私は、対抗心があったのかどうかわからないが、バイトやお年玉のお金を貯め、高校3年の時に、一気に定価10万円の国産ギターを購入。
まあ、値引きしてもらって、実際の購入額はもっと安かったけど、それまで使っていたギターとは値段の差はしっかりあったのは確か。
それは、ライダーというブランドのギターだった。
この10万円のギターを買って弾いてみたら、もうびっくり。
ただただビックリ。
こうも音が違うのか・・・と愕然とした。これはもう、「劇的」な違いだった。
誰が聞いても分かるぐらいの歴然とした差があった。
そのギターで自作曲を歌ってカセットに録音して、後でその音源を聴いてみたら、さらにビックリ。
高音の艶、低音の迫力や深みなどなど。15000円のギターが小ぶりなギターで、10万円のギターがドレッドノート型だったから、その違いもあったかもしれない。
でも、ボディサイズだけの違いだけでもなかったのは、その音質でわかった。
これはもう、きっとマーチンの音に近いんじゃないか・・とか、マーチンがこれより良い音なら、一体どんな音なんだ・・・とも思った。
結果、15000円のギターと、10万円のギターの差は、誰が聞いても分かるくらい「あった」。その音の質に。はっきり言って、歴然としていた。
その後・・・社会人になり、ボーナスなども貰えるようになった私は、長年のあこがれだったマーチンを月賦で購入。
それは100万円のギターではなかったが、それでも新品で50万円ぐらいするギターだった。もっとも、値引きなどでもっと安く買ったけれど。
で、以前買った10万円の国産ギターと、50万円のマーチンギターを弾き比べてみた。
違いは・・確かに「あった」。というか、なきゃ困る(笑)。
まず違いは、これはマーチンの特徴なのだろうが、音が抜けるように明るい。
で、録音してみて更にわかったのは、録音した音をモニターしてわかったマーチンの「音の通りの良さ」であった。
でも、値段的には40万円もの差がある。良くて当たり前だ。
問題は、その音の違いが40万円分あるのかどうかだ。
10万円の国産ギターも、低音の迫力はマーチンにそうひけをとっていたとは思えなかった。高音のキラキラ感も、そうだ。
弾きやすさに関しては、むしろ国産ギターの方が若干弾きやすいくらいだった。
ただ、マーチンの方が、音に明確なキャラクターはあった。いわゆる、「マーチンの特徴」というやつだ。
10万円の国産ギターは、一応マーチンのコピーモデルだったと思う。
なので、基本的にはマーチン的な音を目指して設計されていたと思う。
また、ルックスも。
そのギターは、まぎれもなく良いギターだったのは確かだ。
40万円分の差があるのだから、その値段差分の大きな音が出る・・・というわけでは決してない。
その理屈でいくと、例えば100万円のギターは、1万円のギターの100倍の音量がなければいけないことになる。・・・そんなの、ありえない(笑)。
マーチンとて、ほっておけば埃もつく。ぶつければ傷もできるし、湿気の影響も受ける。環境によって、良く響く時もあれば、あまり響かないこともある。
パーツなどでリペアが必要になることもある。
それは国産もマーチンも全く変わらない。
ギターにはもう長い歴史があり、作り方については様々なメーカーによってさんざん研究されてきている。
なので、どう作れば良いギターになるか・・・という方法論は、ギターメーカーならそれなりに心得ているだろう。
例え安いギターであっても、ある程度の値段・・・・たとえば3~5万円以上のクラスのギターなら、これまでの様々な研究・改良の繰り返しで培われてきた技術や方法論で、値段に見合った、それなりに良いギターは作れるのだとと思う。
奏者にも「好み」というのがあるので、どれが良い音なのかは、個人差はあると思う。
それでも・・・私が初めて入手した15000円のギターはともかく、例えば5万円以上くらいのギターなら、10万円ちょいのギターとの「値段分の差」は感じにくい場合はあると思う。
同様に10万ちょいのギターと、100万円のギターとの「値段分の差」もまたしかり。
もちろん、「違い」はある。
だが、その「違い」が何10万円分もの差に繋がっているか。
これは微妙だ。
ただ、言えるのは、ある程度のグレードのギター以上に更にグレードを上げるとなると、その差はともすれば「微々たるもの」であることもある。
だが、その「微々たるもの」のグレードを上げるのには、材料や工程などで費用がかかってくるのだと思う。
例えば、スポーツに例えてみよう。
オリンピックに出れるアスリートたちは、競う相手との微々たる差で勝敗が決まる。
一般人との明らかな差はあっても。
その「微々たる差」を勝ち取るために、日ごろの特訓を重ねているはずだ。
その差は、数秒だったり、競技によっては「1秒以下」のミクロな差でしかない。
でも、そのミクロの差をつけるために、日ごろの猛特訓や節制があるんだと思う。
それに似ている気はする。
この例えでわかってもらえるだろうか。
ギターに話を戻せば、値段に見合った分の差の「音」は感じるのは難しい。
装飾などに凝っている高級ギターになればなるほど。値段の中には装飾にかかっている費用も入っているはずだし。
だが、ある一定のグレード以上になると、その微々たる差をつけるためには、金がかかる・・・ということなのではないだろうか。
もちろん、有名ブランドのギターになると、ブランド料の値段も加味されているとは思う。
質的には、海外の有名ブランドのギターを凌駕する国産ギターはしっかり存在する。国産ギターは、優秀だしね。
とりあえず、例えば10万円のギターと、何百万円もするギターは、値段的には何百万円も差があるが、双方のギターに何百万円分もの音の差があるかどうかは微妙だと思う。
もちろん違いはあっても、それが何百万円分もの差なのかどうかは、特に。
でも、そのわずかな差を、大金はたいて求めるギターファンがいる・・・そういうことなのだと思う。
そのわずかな「差」をつけるためには、より手間のかかる作り方や、材質選びをして、そこにコストがかかるのだろう。
私はそう思えてならない。
なぜなら・・10万円以下のギターでも、十分に良い音がするギターはたくさんあるし、音の傾向の違いを「そのギターの個性」として使うことも可能だからだ。
その個性だからこそ出せる音や弾ける曲もあるはずだし、扱い方もあるはずだと思う。
有名プロギタリストの中では、むしろ安い価格のギターの音が好きという人もいる。
私自身も、安いギターには安いギターならではの音の特徴はあると思うので、曲によっては高価なギターよりも、むしろチープなギターの方が合う曲もあると思っている。
強いてあげれば、何十万円もの差があるだけ、オーナーはより丁寧に扱うだろう。
それが何百万円もの差があれば、なおさら。
あと、それが有名な一流ブランドのギターだと、その名前のネームバリューの価値を持っているという満足感。愛着もわくだろう。
ギターの音の個性や傾向の違いは、値段の差では計りきれないことはある。
何十万円や何百万円もの値段分の差を、歴然とした音の違いに求めるなら、無理に高いギターを買う必要はない気はする。その差の基準が、奏者の感覚や満足度や使用楽曲や使用方法に負うものである以上。
初心者用のチープなギターならともかく、一定の値段以上のギターなら、たいがいどれも一定のレベルは保っていると思う。
そう、たいがい。
かなり極論に近いことを書いてしまったようにも思うし、私の主観による考えであるのも確かだ。でも、私の考え方は・・・上記の感じではある。
ともかく、オーナーにとって「愛着が湧くギター」「愛情を注げるギター」、それこそがその人にとって良いギターなのだと思う。
ギター選びをする場合、その基準は人それぞれだと思う。
もしも、ブランド名に愛着を感じそうな人は、とりあえずそのブランド名のギターを買ってしまってもいいだろうと思う。
というのは、楽器屋などで色んなメーカーのギターを弾き比べると、お目当てのブランドギターと同等以上の音がする別ブランドのギターもあったりする。
ただ、その差があまりに歴然としていれば別だが、微妙な違いの場合は、お目当てだったブランドのギターにしてしまってもいいと思う。
もともと欲しかったブランドなら、買ってから愛着は湧くはず。
所有欲が満たされるし。
もしも、その場でお目当てのブランドギターに勝るとも劣らない別メーカーのギターを選んだ場合、それはそれで後悔はしないとは思うが、本来欲しかったブランドギターを欲しいという気持ちは、宿題のように残り続ける場合がある。
その場合、別のギターを買ったにもかかわらず、本来ほしかったブランドギターをあらためて買ってしまう可能性がある。
そうなると、結局は出費につながってしまう。
また、ブランド名より、音や弾きやすさで選ぶ場合は、実際に楽器屋をめぐり、色んなギターを試し弾きするのはマスト。あれこれ店をめぐって探す・・・その過程もまた楽しいものだ。
特に「弾きやすさ」などは、実際に自分で手にとって演奏してみないと、実感を感じにくいポイントだ。なので、試し弾きは大事。
もし、デザインで選ぶ場合は、特殊なデザインのギターの場合、なかなか楽器屋では売られていない場合は多い。
その場合は、それこそネットショッピングでもいいのだろう。音や弾きやすさはギター選びでは大事な要素だと思うが、ルックスもまた大事な要素なのは確かだと思う。ステージで目立ちたいとか、他人と違うルックスのギターを持っていたい・・という思いが強い人には、特に。
そういえば、ユーチューブなどを見てると、高級ギターと初心者用ギターを弾き比べ、音の違いを検証する動画を見つけることがある。
私自身好きなテーマなので、そういう動画を見つけると、ついつい見てしまう。
何十万円もする高級ギターと、1万円前後の安いギターに、どれほどの違いがあるか。
聴いてると、音に多少の違いは感じても、それが何十万円分もの差があるかは微妙に思えることもある。
もちろん、弾き手の演奏技術も、優れているからなのだが。
時には、もしもその2本のギターのブランド名を伏せられたら、判別しにくい場合もあることは否めない。
これは、私がタブレットで聴いてるから・・というのもあるのだろう。
タブレットで聴いてる限り、その音は文字通りの「生」の音ではない。
思うに、そのギターの本来の音、特徴、弾きやすさなどは、実際に自身でリアルタイムで弾いてみて、違いがよくわかるのだと私は思う。
昔、我が家に、ギターを全く弾けない人が来た時、我が家にあった数本のギターを実際にその人に持たせ、弾いてみてもらったことがある。
その人は、当然スケールも知らなきゃ、コードも知らない。
なので、指1本で適当にフレットを押さえてもらい、単音を鳴らしてもらったり、6本の弦全体をポロンと弾きおろしてもらったりした。
するとその人が言ったことは・・
「あれ? ギターなんてどれも同じ音なんだろうと思ってたんだけど、ギターによって音がこうも違うもんなんだね。」
という感想。
ギターが弾けない人でも、実際にリアルタイムで自分で鳴らしてみると、わかるのだ。その違いが。
そう、違いを一番感じることができるのは、弾き手なのだ。
微妙な違いというのは、弾き手こそが一番理解できるのだ。
もしも、聴き手がその違いをはっきり判別できる場合は、よほどそのギターが優れているか、個性的か、あるいはチープか・・・の良い証拠なのだろうと思う。もちろん、弾き手の技量や、弾き方も影響はするけどね。
その聴き手が、弾き手の傍にいて、すぐ近くで聴いてる場合は、弾き手に近いぐらい「違い」をわかるとは思うが、そんな場合は弾き手はもっと「違い」を感じてるとは思う。
なので、出来れば、ギターを弾けない人でも、何本かのギターを実際に自身で生で鳴らして比べてみてほしいと思う。
そうしたら、違いは分かりやすいと思う。
録音して、それを再生した時に聞こえる音より、生の音のほうがわかりやすいから。
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