君に会うためにここにきたわけじゃなかった。
別件で来ただけなんだ。
何気にこの辺を歩いていたら、君がいるもんだから、もうビックリさ。
君は、こんなところにいたんだね。
もしかしたら、たまたま近くまで来た私に、君は君がここにいることを私に気付かせたのかもしれないね。
あるいは、もともと私をここに呼び寄せたのかもしれない。自然の力、縁の力を使って。
ひょんなことで君に会うことになってしまった私。君の存在に気付いた時は、不思議な縁を感じたよ。
君のことはずっと気になっていた。とはいえ、四六時中私の心にいたわけじゃない。
でも、心のどこかに君は、いつも居続けたんだ。
子供の時から。
でも、君にこうして直に会うことはないままだった。子供の時は、君の姿は遠かったし、君のもとに来る機会もないままだった。
本当は気になっていたのにさ。
そうしたら、君がここにいるなんて知らないまま私はここに連れてこられてしまい、しかもたまたま私は君のことに気付いたんだ。気づかない可能性だってあったはずなのに、なぜか気づいてしまったんだ。
まさか、こんな形で君に会うなんて。
その時・・・子供の時代に遠望で見えた君は、私の目の前にいたんだ。
しかも、知ろうと思えばすぐにでも深く知ろうとできる位置取りで、君は私の前で待っていた。
しかし・・・困ったんだ。
私にはその時、自分1人で自由に行動できる時間が数分しかなかった。
君に続く道が目の前にあるのに、私は進んでいけなかったんだ。
もし君に続く道を進んでいったら、私はその場では行方不明者になってしまう。
本当は1人で進んで行きたかった。
でも・・出来なかったんだ。現実が私にしがみついていて、私を動けなくしていたんだ。
とはいえ・・・君に続く道が、こうなっているということは分かった。
君がどんな環境の中にいるかも、ある程度分かった。
君がここにいるということも分かった。
君はきっと、これからもここに居続けるだろう。
愚かな人間の愚行や、何かの天変地異でもないかぎり。
この次私がここに来れるのは、いつになるかは分からない。
でも・・
きっと来るよ。
君のことを現実の存在として受け止めたから。
子供の時にイメージした君ではなかったけれど、君であることは変わりない。
今度来る時は、きっと君が目当てだろう。
君に続く道を進んでいくために、ここに来るだろう。
なぜなら、君は、ここにいるから。
そう
君は
ここにいるんだね。