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古いアメリカンフォークミュージックの音源を集めた一大コンピレーションアルバムで「アンソロジーオブアメリカンフォークミュージック」というアルバムがある。私がこれを入手したのは、もうずいぶん前のことになる。
これは、ハリー・スミスという人が1926年から1932年にリリースされたレコードの中から84曲をセレクトし、まとめたオムニバスアルバムで、LP時代に2枚組LPの3巻構成で1952年に発売された。
一番古い曲の音源が録音された1926年と言えば、日本では大正15年か昭和元年である。
そんな時代に、アメリカでは今のフォークソングにつながる、原型ともいうべきフォークソングが歌われていたのだ。
曲を聴くと、そのメロディラインや曲調は、今のアメリカンフォークソングに脈々と受け継がれているのが分かる。
このアルバムが語られる時、よくディランの名が出されるが、実際若き日ののディランあたりは、このアルバムから多大な影響を受けたはずだ。
その後のディランのボーカルスタイルや楽曲のルーツとも思える音源が満載。
いや、ディランだけでなく、その後のロック、カントリー、ブルースなど様々なアメリカンミュージックのミュージシャンが、これらの曲から多大な影響を受けているのは決定的な事実として認められている。
私はこのセットをCDの時代になって入手した。お店に頼んで取り寄せてもらった。
ただし、輸入盤である。国内盤は、出ていないのではないか。
入手して聴いた時、その膨大な曲数と、解説ブックのグレードに圧倒された。
そして編者の熱意がひしひしと伝わってきたのを覚えている。
今回は、その膨大なセットの中から1曲を取り上げてみる。
初めてこのセットを聴いた時に、特にインパクトを感じた曲だ。
それは、「Way Down The Old Plank Road」 という曲で、歌と演奏はアンクル・デイブ・メイコンという人。
際立ったノリで歌って演奏するメイコンは、バンジョーの名手。
この曲をユーチューブなどでは今の人がバンジョーでカバーしてる音源もあったが、このメイコンのテンションには誰もかなわないと思う。
メイコンのことは、このコンピレーションアルバムを聴くまで知らなかったので、あらためて今これを書くにあたって少し調べてみた。
すると、ネット上で「1870年10月7日にテネシー州のマクミンヴィルから南へ5マイルほどのスマート・ステーションで生まれ、1952年3月22日に死去しました。本名はデヴィッド・ハリスン・メイコン( David Harrison Macon )です。 」という記事を発見。
バンジョーの名手でありながらも、コメディアンとしての側面もあったらしい。
「歌唱演奏は寄席演芸調であり、ミンストレル・ショーの芸人風でもあり」という説明で紹介されてることから考えると、今の日本だったら「笑点」みたいな番組に出ても似合ったかもしれないが、ミュージシャンとしても超一流であったことから、やはりライブハウスみたいな場所で、トークを聴きながらの弾き語りライブを見てみたくなるようなイメージがある。
実際、トークもステージアクションも自由奔放だったらしい。
この曲の音源を聴くと、まずそのノリが素晴らしい。
独特のシンコペーションを聴かせたボーカルが聴き手をグイグイひきつける。
この1曲だけでも、この人のキャラクターや人柄や雰囲気が伝わってくる。
個人的には、誰もまねできない名人芸の凄腕バンジョー奏者でありながら、賑やかで陽気で、トークも達者で、暖かみのある声の、おじいちゃん芸人・・・・好々爺ミュージシャン・・・・そんなイメージ。
なにより音源聴いてて耳を奪われたのは、パーカッションっぽい音が入ること。
なんでも、足でバタバタリズムをとりながら演奏していたというから、このパーカッション系の音は足で鳴らした音だったのか、それとも、例えば叩きつけるような、そういう弾き方をしてたのか・・・。
アメリカでは、メイコンの名を冠したフェスティバルがあるらしい。
そのへん、アメリカで今でも語り継がれ、リスペクトされてるミュージシャンである、いい証拠だ。
なにぶん、あまりに古い時代のミュージシャンなので、日本ではあまり知られていない。
なにせ、生まれが19世紀だしね。
とりあえず言えるのは、こういう先人が、今の大物ミュージシャンのルーツになって、音楽の歴史に貢献してきたのだ・・ということ。
ともあれ、一度でいいから、小さなライブハウスなどで間近な距離でライブを見てみたかった、じいちゃんミュージシャンではある。
きっと、楽しいライブだったことだろう。
http://www.youtube.com/watch?v=Dqjl8Q61bA8
なお、メイコンの当時のステージぶりを少しでも垣間見える映像が残されていた。
こちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=7tFetm5mTQA
この映像を見ると、サービス精神たっぷりで、愛嬌があり、どこが芸人風でもあるエンタテイナーぶりが分かる。
この曲を今のバンジョー奏者がカバーしてる映像を何種類か見たことがありますが、このメイコンのハイテンションはやはり格別です。
ノリが最高です。
パーカッションは、多分メイコンの足踏みではないかと思われますが、違ってたらすいません。
間奏部分では、足で床を叩いてリズムをとりながら、バンジョーを弾いてたのではないかと。
西部劇の挿入歌になりそうなほど、大変乗りがいい楽曲ですね。
パーカッションは、「馬の駆け足」ではないでしょうか?
バンジョーの音色は、郷愁を感じさせます。
アメリカ音楽の源流とも言うべく、又、ジャンル細分化されていない楽曲は、普遍的ゆえに、いつまでも生命を保ち続けますね。