心が楽になるのを感じるブログ ~心理学・HSP~

わかりやすく書いていきますので、読んで楽になってください。心理支援事業を行っている公認心理師&社会福祉士のブログです。

「怒り」について(1)

2020年11月09日 15時17分33秒 | 感情・情動・気分

「怒り」というネガティヴな感情を、数回に分けて説明していきたいと思います。 いきなりですが、

【怒りとは】

自分が何らかの形で「被害」に遭っていることを知らせてくれる感情

「自分が困った状況にある」という心の悲鳴

と言えます。

例えば、買ったばかりのピカピカの新車で、街へショッピングへ。

買い物を終えて、車を止めていた駐車場へ戻ると、なんと、当て逃げされているではありませんか。

「あー、買ったばかりの新車がこんなふうになるなんて。。。」

とがっかりした後、ふつふつと怒りがこみあげてきます。

「ぶつけておいてだまって当て逃げするなんて、ひどい!」

この時の怒りの感情は、せっかくの新車がもう台無しになったとか、謝罪もせずにだまって逃げた相手への思いとか、いろいろ含めて、「被害に遭っている」という自分の気持ちの表れです。

例えば、仕事が長引いて疲れて帰ってくると、先に帰っていた夫はビールを飲みながらゴロゴロしています。キッチンを見ると、洗い物の山。それに私の夕食を代わりに作ってくれているような形跡もありません。思わず、ため息をついていると、テレビを見ている夫がへらへらと笑っています。

「テレビ見てゴロゴロしているんだったら、せめて洗い物ぐらいしてよ!私だって仕事して帰ってきているんだよ!」

とイラっとして怒ってしまいました。この時の怒りの感情は、仕事で疲れて帰ってきているのに自分だけが家事をしないといけないから、「被害に遭っている」し、「自分が困った状況にある」という心の悲鳴の表れです。

さて、いずれの例も、当て逃げした相手や家事を手伝わない夫のせいで「怒らされている」ように見えますが、実は「怒り」というのは、相手に怒らされたのではなく、「自ら怒っている」のです。当て逃げとか夫が手伝わないということはあくまでもきっかけに過ぎず、本当は「自分の領域」で怒りの感情がわいたのです。

ここで、どうして「怒り」の感情がわくのか、その原因を追究してみましょう。

【怒りがわく原因】

1.想定外のことが起こる(突発的に)
2.「我慢」していることに触れる・触れられる
3.「評価」される/自分の領域を侵される
4.心の傷

1.想定外のことが起こる(突発的に)

人は想定外の事態が起きると、自分を守るために怒りの感情がわきます。先ほどの当て逃げの例は、想定外の「突然の被害」のため、反射的にそれを撃退しようとする心理が働いたことになります。

また例えば、恋人とデートの予定を入れていて楽しみにしている金曜日。あと少しで退社時刻を迎えるのに突然上司から仕事を振られたとき、

「今からデートなのに。。。どうしよう」

という思いと同時に、上司に対して怒りがわくかもしれません。これも想定外の「突然の被害」のため、反射的にそれを撃退しようとする心理が働いていますし、「自分の予定が狂ったので困っている」という気持ちの表れでもあります。

2.「我慢」していることに触れる・触れられる

先ほどの夫が家事を手伝ってくれないという例は、まさにこれにあたります。「自分は我慢している」のに、「相手は我慢していない」。「自分はちゃんとやっている」のに「相手はやっていない・してくれない」。しかも、その怒ってしまった日は、「仕事が長引いた」という想定外のことが起こっているため、常に我慢をしている状況にあると、より一層対応できなくなり、「怒り」の感情がわいてしまったのです。

3.「評価」される/自分の領域を侵される

先ほどの家事を手伝わない夫の例ですが、奥様に「テレビ見てゴロゴロしているんだったら、せめて洗い物ぐらいしてよ!私だって仕事して帰ってきているんだよ!」と怒られた後、夫は謝るどころか、

「はぁ?仕事しているのはお互い様だろ?俺だって疲れて帰ってきてるんだ。家に帰った時ぐらいゆっくりしたっていいじゃないか!」

と逆ギレしてしまいました。

実は、夫が怒ったのは、ネガティヴな「評価」をされたので「自分の領域を守る」ために自己防衛に走ったからです。

また、自分の領域を守るという意味では、このような例もあります。

最近ちょっと太ってきたなあと気にしている矢先に、友達から、

「あなた、最近ちょっと太ってきたんじゃないの?健康のためにもダイエットするべきよ。」

と言われて腹が立ってしまうこともあります。友達はよかれと思って「アドバイス」をしたのだと思いますが、本人にとっては踏み込んできてほしくない「自分の領域」だったため、その領域を守るために怒りの感情がわいたのです。

4.心の傷

中学3年生の息子さん、期末テストも終わり一段落。結果も予想以上によかったようです。このところずっと勉強ばかりだったので、たまには息抜きしようと思い、学校から帰ってきてすぐにスマホをいじり始めました。久しぶりで楽しくてあっという間に2時間経ちました。すると、2時間たっても一向にやめる気配がないことにしびれを切らしたお母さんが、

「いつまでスマホ触ってるの?そろそろ勉強したらどう?ほんとにあんたは、だらしない子ね!」

と言ってしまいました。

「後でやろうと思ってたんだよ。テスト終わったばかりだし、結果もよかったんだからたまにはいいじゃないか!いちいちうるさいよ!」

と息子さんは怒って自分の部屋へ行ってしまいました。

こういうとき息子さんがこんな言い方をして怒るのはよくある話、と思うかもしれませんが、実はこのお母さん、常に息子さんに対してこういう言い方をしているので、息子さんからすると、

「うるさい母親」
「僕のことを認めてくれていない」
「僕はだらしないと思われている」

という思いが募り、「心の傷」になってしまっていて、「母親に対する不満」が募っている状態です。

心が深く傷ついている人は、これ以上傷が深まらないことに意識が集中し、ほんの少しの「脅威」でも徹底的に排除しようとしてしまいます。このため、先ほどのお母さんの指摘に対して、「心の傷」がこれ以上ひどくならないよう、自分を守るために「怒り」の感情がわいたのです。

以上、怒りがわく理由について主なものを書いてきましたが、最後に1つ。

●相手との関係の中で「怒り」が起こるとき、「役割期待のずれ」がある

と言えます。なので、誰かに怒りを感じるときには「役割期待のずれを検証してみる」ことで、怒りをやわらげたり、怒りの感情が簡単にわかない心を持つことができるようになります。

 

■参考図書

 

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