今日は、第2話ですよね。
昨日は、怪しい男たちが又吉の姿を見て歩き出すところだったと思いますが。・・・・
>さて、今日のお客さんの階層はどんなものかな??
又吉は、それとなく様子を探ると.少しあやしげな男たちがデッキに・・・・
又吉が声をかけると、その男たちは車掌から避けるように歩き出すのであった。
列車は、横浜を過ぎて大船を通過したところ、深夜運転になるため停車駅も少ない、夜間警備をかねて又吉は車内を歩いていた時の出来事であった。
又吉は、直感でおかしいと思った。声をかけるべく近づいていくと3人連れの男たちは次の車両へと去ってゆく、又吉の追跡を逃れるように次第に早足になっていく様子が伺えた、確かに怪しい。
又吉はますます、確信を深めて3人の男たちを追うのであった、普通列車とはいえ、中距離列車のため、一部の駅には停車しないし、電車ではないのでドア扱いの心配もなかった。むしろ、客車から飛び降りたりしないか、そちらの方が心配であった。
なにしろ、走行中でもデッキは開いたままであり、実際に走行中の列車から転落死した乗客がいたことも又吉は先輩車掌から聞いていただけに、気がかりでならなかった。
男たちは、どんどんと進んでいく。ついに先頭車までやってきた。
ここは1等車であり、男たちは1等車のデッキ付近で小さくなって固まっていた。
規程では、1等車のデッキに立っていても、1等料金を徴収しなくてはならないわけであるが、流石にそれは出来ない。
又吉は、静かに近寄り、そして低い声で一言。
「切符を拝見できますか。」
男たちは何も言わない、見れば一人は50代の男性で、他の二人も似たような年恰好に見えた。先の戦争で亡くなった父親が生きていればほぼ同じ年であろう。
又吉は、もう一度
「切符を拝見できますか。」
男たちは、顔を見合わせてから、リーダー格と思しき先ほどの男性が、ポケットからくしゃくしゃになった切符を出してきた。
横浜から10円の切符が1枚だけ。後に二人は切符すら持っていなかった。
どうして、乗れたのかも不思議ではあったが、そのときはそこまでは聞かなかった、しかし、明らかに無賃乗車である以上、見逃すわけにも行かず。
又吉は、リーダー格の男に尋ねるのであった。
「この切符は、横浜から10円の切符ですが、これでは3人は乗れないですね。」
「・・・・・」
男たちの沈黙は続く、再び、又吉は尋ねるが、やはり無言。
又吉も少し腹立たしくなってきた時、リーダー格の男が絞り出すような声で
「見逃してくれ・・・、見逃してくれ・・・」
聞けば、3人は東北の農民で、冷害被害のため作物が出来ず、出稼ぎに来ていたとのこと。
港湾荷役などで働いていたが、給料日になっても給料はもらえず、3日、4日と我慢し、1週間後に親方に言いに行くと、逆に袋叩きにされて命からがら逃げ出して、横浜から列車に乗ったとのこと。
又吉は、無言で立ち去るしかなかった。
男たちには、次の停車駅は「小田原」であること それだけしか告げられなかった。
又吉もまた泣いていたのであった、何かが違う。
あまりにも悲しすぎる・・・
又吉は、そっとデッキから最後部にある車掌室に歩き始めた。
リーダー格の男は、深深と頭を下げていた。
後10分ほどで、小田原に到着する。
又吉には、自分の父親ぐらいの男たちに幸多かれと祈るしかなかった。
「ぴーーーー」
物悲しい電気機関車独特の汽笛が夜空に吸い込まれていく。
又吉は、再び車内を歩き始めた、チラッと後ろを振返ると、先ほどの男たちは深々と又吉に頭を下げていた、少し気恥ずかしい思いと、本当にこれでよかったのかと自問自答しながら歩いていると、若い女性に呼び止められた、又吉に何か言うことがあるらしい。
さては???
この続きはまた明日にでも。
昨日は、怪しい男たちが又吉の姿を見て歩き出すところだったと思いますが。・・・・
>さて、今日のお客さんの階層はどんなものかな??
又吉は、それとなく様子を探ると.少しあやしげな男たちがデッキに・・・・
又吉が声をかけると、その男たちは車掌から避けるように歩き出すのであった。
列車は、横浜を過ぎて大船を通過したところ、深夜運転になるため停車駅も少ない、夜間警備をかねて又吉は車内を歩いていた時の出来事であった。
又吉は、直感でおかしいと思った。声をかけるべく近づいていくと3人連れの男たちは次の車両へと去ってゆく、又吉の追跡を逃れるように次第に早足になっていく様子が伺えた、確かに怪しい。
又吉はますます、確信を深めて3人の男たちを追うのであった、普通列車とはいえ、中距離列車のため、一部の駅には停車しないし、電車ではないのでドア扱いの心配もなかった。むしろ、客車から飛び降りたりしないか、そちらの方が心配であった。
なにしろ、走行中でもデッキは開いたままであり、実際に走行中の列車から転落死した乗客がいたことも又吉は先輩車掌から聞いていただけに、気がかりでならなかった。
男たちは、どんどんと進んでいく。ついに先頭車までやってきた。
ここは1等車であり、男たちは1等車のデッキ付近で小さくなって固まっていた。
規程では、1等車のデッキに立っていても、1等料金を徴収しなくてはならないわけであるが、流石にそれは出来ない。
又吉は、静かに近寄り、そして低い声で一言。
「切符を拝見できますか。」
男たちは何も言わない、見れば一人は50代の男性で、他の二人も似たような年恰好に見えた。先の戦争で亡くなった父親が生きていればほぼ同じ年であろう。
又吉は、もう一度
「切符を拝見できますか。」
男たちは、顔を見合わせてから、リーダー格と思しき先ほどの男性が、ポケットからくしゃくしゃになった切符を出してきた。
横浜から10円の切符が1枚だけ。後に二人は切符すら持っていなかった。
どうして、乗れたのかも不思議ではあったが、そのときはそこまでは聞かなかった、しかし、明らかに無賃乗車である以上、見逃すわけにも行かず。
又吉は、リーダー格の男に尋ねるのであった。
「この切符は、横浜から10円の切符ですが、これでは3人は乗れないですね。」
「・・・・・」
男たちの沈黙は続く、再び、又吉は尋ねるが、やはり無言。
又吉も少し腹立たしくなってきた時、リーダー格の男が絞り出すような声で
「見逃してくれ・・・、見逃してくれ・・・」
聞けば、3人は東北の農民で、冷害被害のため作物が出来ず、出稼ぎに来ていたとのこと。
港湾荷役などで働いていたが、給料日になっても給料はもらえず、3日、4日と我慢し、1週間後に親方に言いに行くと、逆に袋叩きにされて命からがら逃げ出して、横浜から列車に乗ったとのこと。
又吉は、無言で立ち去るしかなかった。
男たちには、次の停車駅は「小田原」であること それだけしか告げられなかった。
又吉もまた泣いていたのであった、何かが違う。
あまりにも悲しすぎる・・・
又吉は、そっとデッキから最後部にある車掌室に歩き始めた。
リーダー格の男は、深深と頭を下げていた。
後10分ほどで、小田原に到着する。
又吉には、自分の父親ぐらいの男たちに幸多かれと祈るしかなかった。
「ぴーーーー」
物悲しい電気機関車独特の汽笛が夜空に吸い込まれていく。
又吉は、再び車内を歩き始めた、チラッと後ろを振返ると、先ほどの男たちは深々と又吉に頭を下げていた、少し気恥ずかしい思いと、本当にこれでよかったのかと自問自答しながら歩いていると、若い女性に呼び止められた、又吉に何か言うことがあるらしい。
さては???
この続きはまた明日にでも。
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