国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

昭和33年10月7日 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号から抜粋 第16話

2024-11-07 22:26:50 | 国鉄関連_国会審議
今回が新潟闘争後の、不当労働行為に関する質問の最終回になります。
詳細は本文を読んでいただくとして、内容を要約すれば。
今回の質問は別の議員からも質問書が提出されていることもあり、又労働大臣も出席しての尋問と言うこともあることから、国鉄に対してこうした質問に対してさらなる調査ときちんとした答弁をすることを求めるという異例の苦言が以下のようになされています。
このような委員会の大きな問題となり、しかも労働大臣に質問をされた事項については、今後さらに国鉄当局においては事前調査をして、準備周到にして出席をし、議員の質問に的確に答弁されるよう委員長として要求いたします。
更に、新潟鉄道管理局長の発言に関しても新潟日報の記事を引き合いに、管理局長が国労を潰すと言った発言を新聞記者の前で発言したことに対しての厳重注意と取れる苦言を呈しています。
該当箇所を引用したいと思います。
新潟日報九月三十日付の新聞に、事実を曲げた中傷という見出しで、河村新鉄局長が小林発言に反駁をいたしております。
中略
国会議員の権威に関する重大な問題でございます。この内容は読み上げませんが、まず新鉄河村局長が言っていることは、小林氏は故意に事実を曲げて中傷しておる、国会議員としてあるまじき軽率な態度だということから言い始めて、小林議員の質問に対し否定的な事実を並べ、その中で、しかし新潟地本をつぶしたいというのはなるほど私の持論であるが、こういうことを言って、一番最後の結びには、いやしくも国会議員として軽率きわまる行為といえよう、こういうことで結んでおります。
もう少し掘り下げて調べて見る必要がありそうですが、少なくとも国会の委員会でこうした発言を委員長がするのはかなり異例であり、むしろ新聞記事の内容が事実か否かは国鉄当局と新潟日報の問題であるとして、厳しく注意を与えています。
残念ながら当局側の資料ではこの辺に関する記述が見られませんし、いずれこの新聞記事を見つける必要もあるので、ここでは新潟鉄道管理局長が組合潰しだと明言したか否かは避けますが、この委員会は国鉄にとってもかなり厳しい内容で有ったことは間違いないと言えそうです。

最後に参考資料を別途添えさせていただきます。

以下の記事は「国際労働運動」と呼ばれるサイトからの引用であるが、元々本社の職員局出身であった河村新鉄局長は、革同の拠点であった新潟国労地本に対してかなり強圧的な態度を取っていたようで、新潟闘争の時の様子を以下のように語っています。
 闘争の中止と当局の処分に呼応するように第2組合の策動が表面化した。明らかに河村局長ら当局によってそそのかされた動きだった。つまり、第2組合策動は国労つぶしの不当労働行為そのものだった。そして9月1日に、国鉄新潟地方労働組合(新地労)が3千人で結成に至った。このことは、「闘えば分裂する」「闘っても勝てない」という戦後日本労働運動の「常識」を定着させるかのようであった。
参考:


************************以下は、国会審議議事録です*************************

○園田委員長 小林君の質問に関連をして、委員長から総裁並びに常務理事に申し上げます。衆議院規則第六十六条、委員長は委員会の議事を整理し、秩序を保持するという責任から、委員の質問、言論並びに政府委員の答弁の言論を保護する権限はございますが、その内容を批判し、または擁護する義務はございません。従ってその意味において小林委員の質問を擁護する意味でもなく、批判する意味でもなく、また政府委員の答弁を批判する意味でもなく、公正な委員長の立場として二つだけ申し上げます。
 その一つは、本日小林委員から質問された事項は、先般の社会労働委員会でほとんど同様の質問をなされて、しかも国鉄の総裁並びに関係係の出席は、その委員会の散会直後要求してございます。小林君の質問が事実であるか、あるいは見当はずれであるかということは、委員会で展開される議員の質問、及び直実を調査して事実を並べられて、自分の所見とともに開陳をせられる政府委員の答弁とともに、両方照合して、おのおの結論が出てくるし、見解の一致を見ないものは国民の批判によってこれが出てくるものと委員長は解釈をいたします。そういう意味において、このような委員会の大きな問題となり、しかも労働大臣に質問をされた事項については、今後さらに国鉄当局においては事前調査をして、準備周到にして出席をし、議員の質問に的確に答弁されるよう委員長として要求いたします。
 次にもう一つは、先般小林委員の質問に関連をして、新潟日報九月三十日付の新聞に、事実を曲げた中傷という見出しで、河村新鉄局長が小林発言に反駁をいたしております。これについては吾孫子常務理事も先ほどの答弁の中に若干触れられた模様であります。この新聞をお読みになったかどうか、あるいは総裁にお見せになったかどうか、それはお伺いはいたしませんが、少くともこれは新潟鉄道局の労働争議に対する不当干渉であるかどうかということとは別個の問題として、国会議員の権威に関する重大な問題でございます。この内容は読み上げませんが、まず新鉄河村局長が言っていることは、小林氏は故意に事実を曲げて中傷しておる、国会議員としてあるまじき軽率な態度だということから言い始めて、小林議員の質問に対し否定的な事実を並べ、その中で、しかし新潟地本をつぶしたいというのはなるほど私の持論であるが、こういうことを言って、一番最後の結びには、いやしくも国会議員として軽率きわまる行為といえよう、こういうことで結んでおります。もちろん吾孫子常務理事は、これは談話でもなければ声明でもないと言っておられまするが、いやしくも国鉄局長の地位にある者が役所で、一人であろうと二人であろうとも、新聞記者に向って語る談話としてはきわめて不謹慎であるばかりでなく、国会議員の権威に関する重大な問題であります。憲法五十一条には「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」これは国会議員が無責任であるという意味ではございません。審議並びに討論について、国の最高議決機関として権威ある自由なる討論を与えるために憲法で保障された国会議員の唯一の基本的な保障であります。今日まで委員会において某議員が政府委員に質問をした際、その政府委員がその質問に答弁しないで、議員の質問が不当であるかのごとき印象を与え、あなたはそういう質問をしたが、日本国の現状はこうであるということは御存じかと逆質問をした例があります。その際、委員長は直ちに政府委員の発言の中止を命じ、政府委員には、出席をして国会議員の審議、質問に応じて答弁する権限はあるが、国会議員に質問する権限は与えてないと、非常に厳重な抗議をしたことがございます。これもともに国会議員の言論に対する権威の保持からきたことでございます。そういう意味において、これが事実であったかなかったかということは、国鉄と新潟日報の対決すべき問題でありましょう。しかしながらいやしくも公器たる新聞に載せられた以上、河村新鉄局長の談話が事実であるかどうか、小林議員がゆかたがけで河村局長と対談されたことについては、委員長は論外であります。いやしくも委員会において発言した内容について一公務員が、たとい大臣といえども総理大臣といえども、自分の職務上院外においてこれに批判を浴びせ、これに対する権威について語るということは、国会議員として許されるべきことではございません。従って、新聞を調べてみたらそういう事実でなかったということでお済ましになるわけにはいきますまい。これは当然社会労働一委員会の問題ではなくて、国会の問題として当局長を招致し、これに対する取調べがあることは当然のことであると考えております。後日にその問題は取り残されます。なおそういうわけでございますから、今後ともこういうことについては総裁も常務理事も特に注意されて、しかも政治的に申しましても、理論的に私が申した通りでありますが、こういう問題になっている事柄の事実を調査し、反省すべきことは反省して、円満に労使の協調に持っていくことは総裁の持論でもあるし、これはまた当然のことであると思います。それを一局長がみずからこれに反駁を加えて、ことさらに紛糾を来たすがごとき言論は、政治上から見ても適当でなかろうと私は判断をいたします。どうぞこういうことについては今後十分御注意あるよう、委員長としてここに発言しておきます。
 なお、ただいま小林委員から提案がありましたが、この提案については、社会労働委員会に属する問題でございますから、これは与野党の理事に諮って後日この問題を決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。

    午後六時八分散会

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