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第四章 JR体制への移行と国労の闘い
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第五節 JR体制下での賃金・労働諸条件をめぐる取り組み
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一 JR各社の就業規則と労働協約
労働条件条項のないJR各社提案の労働協約と国労要求案
新就業規則は、4月1日のJR各社の発足から1カ月の間に労基法上の手続きを経て発効することになるが、他方、この4月1日以降JR各社は、各労働組合に労働協約案を提案してきた。これに対して鉄道労連(JR総連)各単組および鉄産総連各単組は、ただちに会社提案通りの内容で新協約を締結し、国労は各エリア本部に団体交渉権限を委譲し、中央本部とエリア本部が一体となって協約締結交渉をすすめた。
JR各社が提案してきた労働協約案は、第1章総則、第2章組合活動〔第1節就業時間中の組合活動、第2節専従者、第3節組合による企業施設の利用〕、第3章経営協議会、第4章団体交渉、第5章紛争処理〔第1節平和条項、第2節争議条項〕、第6章苦情処理、第7章簡易苦情処理、第8章付則の全92条からなっていたが、その特徴は、会社と労働組合との関係を規定したいわゆる債務的部分しかなく、職場の労働条件などを規定した規範的部分はいっさい含んでいないということであった。
そのうえ紛争処理の章では、協約上の「平和義務」をわざわざ規定するとともに、「協議または交渉を経なければ争議行為を行わない」とか、「組合が争議行為を行う場合には、日時及び場所並びに争議行為の概要を10日前までに、また、争議行為の目的、形態、規模、日時、期間及び場所等の具体的かつ詳細な内容をその72時間前までに文書もって会社に通知しなければならない」などの労働組合側の手足を縛る平和条項や争議予告条項が規定されていた。
たしかに、提案協約案のなかに団体交渉事項として賃金・賞与及び退職手当の基準や労働時間・休憩時間・休日及び休暇の基準等があげられていたが、しかし少なくともJR各社発足時点では、国鉄職員の全員解雇と新会社等への「採用」という形式を経過することによって具体的な労働条件等は会社側で一方的につくった就業規則で規律し、しかも従前の労働条件を大幅に切り下げての発足だったのである。
すでに国労は、JR各社発足前の3月27日、創立総会を終えた各新会社に対し基本労働協約の締結を求めて団体交渉の申し入れを行っていた。その国労提案の基本労働協約案の骨子は次のようなものであったが、いわゆる平和条項的なものはもたず、債務的部分しかない会社提案の協約案とはかなりの違いがあった。
国労提案の基本労働協約(案)
1 団体交渉に関する協約は交渉して別に定める。
2 昇給、昇格・降格、昇職・降職、出向、転勤、派遣、異動、休職等に関する事項は、この協約に基づいて交渉してきめる。
3 職制、勤務、賃金、退職金、労働安全、労働衛生、福利厚生等、その他労働条件に関する事項は交渉してきめる。
4 会社側が定める諸規則、就業規則の細部について制定・改廃するときは、労働条件に関する事項は交渉してきめる。
5 会社と組合は、この協約を遵守し、企業の民主的にして健全なる発展と従業員の労働条件の維持・改善、その地位の向上をはかるために努力する。
6 懲戒の基準及び解雇に関する事項は、別に交渉してきめる。
7 会社は、組合員の組合活動の自由を認める。したがって、正当な組合活動に干渉せず、また組合活動をしたことを理由とする直接・間接のいかなる不利益な取り扱いもしない。
8 組合活動は原則として時間外とする。ただし、次の各号の一に該当する場合は、別に定めるとおりとする。
1 労使間の各種会議(団体交渉を含む)
2 各級機関の諸会議
3 会社と合意した組合の諸行事
4 その他
9 会社は、組合より申し出のあった場合には、組合業務の専従者としてこれを認める。
専従者は社員としての身分を保有し、専従期間は無給休職とする。ただし、福利厚生、施設の利用、見舞金等の支給その他、会社が社員に与える利益の供与及び勤続年数、退職金の計算については、休職の取り扱いをしない。
10 専従者の数は別途交渉してきめる。
11 組合が専従を解除し会社に届け出た場合は、元職場に速やかに復帰させる。その際、不利益な扱いしない。なお、細部の取り扱いは別途交渉してきめる。
12 専従期間中の昇給・昇格は行わないが、復職の際に別の定めにより取り扱う。
13 会社は、組合が組合活動のために会社の施設等の利用を申し出た場合は、原則としてこれを認める。
14 組合事務所、掲示板等の供与については、別にさだめる。
15 会社は、組合及び組合員の政治活動の自由を妨げない。
16 会社は、組合員が公民権を行使し、政治活動を行い、または公職につくこと及びそのために立候補することを認める。ただし、次の場合は退職するものとする。
1 国会議員 2 国務大臣 3 各首長に当選・就任した場合。
17 会社は、職場慣行の変更については組合と交渉して行い、一方的に行わない。
18 組合は、争議行為の実施にあたっては輸送の安全確保上最小限度における保安要員を配置することとし、その範囲については別に定める。
19 会社は、争議行為中であっても、組合の申し入れがある場合は誠意をもって団体交渉を行う。
20 会社は、組合の争議行為に対して代替要員の配置等スキャップ行為は行わない。
21 この協約の解釈・適用について疑義が生じた場合は、交渉して解決する。
22 労働協約の更新・改廃・延長については、有効期間満了の3カ月前に労使いずれか一方から相手側に文書をもって通知し、交渉をする。
なお、協約期間満了期日までに合意に達しない場合は、有効期間を90日間自動延長し、交渉を継続する。
23 この協約の有効期間は1年とする。
国労はこの基本労働協約案を対置しながら、各エリア本部に団交権を委譲して中央・エリア本部が一体となって協約締結交渉を続けたが、他労組がすでに締結している状況のもとで国労の交渉は難航し、要求は前進しなかった。しかし4月末にいたり、在籍専従者の配置など日常の組合活動の必要性から、九州エリア本部をのぞき会社提案のまま締結せざるを得なかった。しかも協約締結時において、各会社側は国労中央執行委員長名での締結を拒否するなどの嫌がらせの態度に出たが、中央本部はやむなく各エリア本部委員長に協約締結権を委任した。
続く
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第四章 JR体制への移行と国労の闘い
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第五節 JR体制下での賃金・労働諸条件をめぐる取り組み
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一 JR各社の就業規則と労働協約
労働条件条項のないJR各社提案の労働協約と国労要求案
新就業規則は、4月1日のJR各社の発足から1カ月の間に労基法上の手続きを経て発効することになるが、他方、この4月1日以降JR各社は、各労働組合に労働協約案を提案してきた。これに対して鉄道労連(JR総連)各単組および鉄産総連各単組は、ただちに会社提案通りの内容で新協約を締結し、国労は各エリア本部に団体交渉権限を委譲し、中央本部とエリア本部が一体となって協約締結交渉をすすめた。
JR各社が提案してきた労働協約案は、第1章総則、第2章組合活動〔第1節就業時間中の組合活動、第2節専従者、第3節組合による企業施設の利用〕、第3章経営協議会、第4章団体交渉、第5章紛争処理〔第1節平和条項、第2節争議条項〕、第6章苦情処理、第7章簡易苦情処理、第8章付則の全92条からなっていたが、その特徴は、会社と労働組合との関係を規定したいわゆる債務的部分しかなく、職場の労働条件などを規定した規範的部分はいっさい含んでいないということであった。
そのうえ紛争処理の章では、協約上の「平和義務」をわざわざ規定するとともに、「協議または交渉を経なければ争議行為を行わない」とか、「組合が争議行為を行う場合には、日時及び場所並びに争議行為の概要を10日前までに、また、争議行為の目的、形態、規模、日時、期間及び場所等の具体的かつ詳細な内容をその72時間前までに文書もって会社に通知しなければならない」などの労働組合側の手足を縛る平和条項や争議予告条項が規定されていた。
たしかに、提案協約案のなかに団体交渉事項として賃金・賞与及び退職手当の基準や労働時間・休憩時間・休日及び休暇の基準等があげられていたが、しかし少なくともJR各社発足時点では、国鉄職員の全員解雇と新会社等への「採用」という形式を経過することによって具体的な労働条件等は会社側で一方的につくった就業規則で規律し、しかも従前の労働条件を大幅に切り下げての発足だったのである。
すでに国労は、JR各社発足前の3月27日、創立総会を終えた各新会社に対し基本労働協約の締結を求めて団体交渉の申し入れを行っていた。その国労提案の基本労働協約案の骨子は次のようなものであったが、いわゆる平和条項的なものはもたず、債務的部分しかない会社提案の協約案とはかなりの違いがあった。
国労提案の基本労働協約(案)
1 団体交渉に関する協約は交渉して別に定める。
2 昇給、昇格・降格、昇職・降職、出向、転勤、派遣、異動、休職等に関する事項は、この協約に基づいて交渉してきめる。
3 職制、勤務、賃金、退職金、労働安全、労働衛生、福利厚生等、その他労働条件に関する事項は交渉してきめる。
4 会社側が定める諸規則、就業規則の細部について制定・改廃するときは、労働条件に関する事項は交渉してきめる。
5 会社と組合は、この協約を遵守し、企業の民主的にして健全なる発展と従業員の労働条件の維持・改善、その地位の向上をはかるために努力する。
6 懲戒の基準及び解雇に関する事項は、別に交渉してきめる。
7 会社は、組合員の組合活動の自由を認める。したがって、正当な組合活動に干渉せず、また組合活動をしたことを理由とする直接・間接のいかなる不利益な取り扱いもしない。
8 組合活動は原則として時間外とする。ただし、次の各号の一に該当する場合は、別に定めるとおりとする。
1 労使間の各種会議(団体交渉を含む)
2 各級機関の諸会議
3 会社と合意した組合の諸行事
4 その他
9 会社は、組合より申し出のあった場合には、組合業務の専従者としてこれを認める。
専従者は社員としての身分を保有し、専従期間は無給休職とする。ただし、福利厚生、施設の利用、見舞金等の支給その他、会社が社員に与える利益の供与及び勤続年数、退職金の計算については、休職の取り扱いをしない。
10 専従者の数は別途交渉してきめる。
11 組合が専従を解除し会社に届け出た場合は、元職場に速やかに復帰させる。その際、不利益な扱いしない。なお、細部の取り扱いは別途交渉してきめる。
12 専従期間中の昇給・昇格は行わないが、復職の際に別の定めにより取り扱う。
13 会社は、組合が組合活動のために会社の施設等の利用を申し出た場合は、原則としてこれを認める。
14 組合事務所、掲示板等の供与については、別にさだめる。
15 会社は、組合及び組合員の政治活動の自由を妨げない。
16 会社は、組合員が公民権を行使し、政治活動を行い、または公職につくこと及びそのために立候補することを認める。ただし、次の場合は退職するものとする。
1 国会議員 2 国務大臣 3 各首長に当選・就任した場合。
17 会社は、職場慣行の変更については組合と交渉して行い、一方的に行わない。
18 組合は、争議行為の実施にあたっては輸送の安全確保上最小限度における保安要員を配置することとし、その範囲については別に定める。
19 会社は、争議行為中であっても、組合の申し入れがある場合は誠意をもって団体交渉を行う。
20 会社は、組合の争議行為に対して代替要員の配置等スキャップ行為は行わない。
21 この協約の解釈・適用について疑義が生じた場合は、交渉して解決する。
22 労働協約の更新・改廃・延長については、有効期間満了の3カ月前に労使いずれか一方から相手側に文書をもって通知し、交渉をする。
なお、協約期間満了期日までに合意に達しない場合は、有効期間を90日間自動延長し、交渉を継続する。
23 この協約の有効期間は1年とする。
国労はこの基本労働協約案を対置しながら、各エリア本部に団交権を委譲して中央・エリア本部が一体となって協約締結交渉を続けたが、他労組がすでに締結している状況のもとで国労の交渉は難航し、要求は前進しなかった。しかし4月末にいたり、在籍専従者の配置など日常の組合活動の必要性から、九州エリア本部をのぞき会社提案のまま締結せざるを得なかった。しかも協約締結時において、各会社側は国労中央執行委員長名での締結を拒否するなどの嫌がらせの態度に出たが、中央本部はやむなく各エリア本部委員長に協約締結権を委任した。
続く
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