痛みの導火線にはチリチリと火がついて
心臓や喉元を襲ってくるように見える
ゾンビが食いつくとゾンビにまたなる
誰かの息遣いがあいつにも伝わって
痛みの導火線にチリチリと火が着く
ウイルスの中にウイルスがあるのかもシレナイ
と言うのは
俺たちは
ウイルスを囲う
真のウイルスじゃあないかな 地球にとって
無惨で悪いね、いつも
痛みの導火線にはチリチリと火がついて
心臓や喉元を襲ってくるように見える
ゾンビが食いつくとゾンビにまたなる
誰かの息遣いがあいつにも伝わって
痛みの導火線にチリチリと火が着く
ウイルスの中にウイルスがあるのかもシレナイ
と言うのは
俺たちは
ウイルスを囲う
真のウイルスじゃあないかな 地球にとって
無惨で悪いね、いつも
その身のこなし
グラスの傾け方
両の手の指、目のうるみ
そして心中の唄
世の中をハードに過ごすうち
時には
街で
こういった女が現れる
16才の
タバコの煙に瞼一つ瞬かせず
ワインを飲み続けるふやけたアル中仕立ての
おやじの前で
静かにグラスに口づけするジャスミン
16才の
世界は 葦の原で静かに獲物を見つめる
虎の様な女を作り上げたわけだ
ジャスミンは
泥の沼から生まれる蓮の花の様に
”もう少し、ワインが飲みたい
じゃなきゃ、ウーゾか、パスティスが良いよ”
と言う
”そうかい、心配しない方なんだが
君は若い、ペースを乱すなよ”
そう言って家を出た
戻ると彼女は窓の月に照らされながら
愛用のギターを弾いていた
静かな曲だった
それが好きなのか
この家に住んでいる彼女の黒い猫が
ジャスミンの側で目を瞑っている
ジャスミンは シーと呼ぶ
その腰を撫でる
”食べ物を忘れたよ、
何か食べたいなら、もう一度出るかい?”
俺はそう言ったが
ジャスミンは静かなギターを弾いたまま
静かに
”食べ物はいいから
食べ物はいいから
名前を呼んでよ”
そう言った
”ジャスミン、は、
本当の名前じゃないんだろ”
”うん、唄を歌って小銭を稼ぐ
私の通り名”
”どっちがいいんだい、ジャスミンって呼ぶのと
本当の名前を呼ぶのと”
”本当の名前をあんたに呼んでもらうのはまだまだ早いよ
気が向いたら、いつか”
彼女は言い終えると
最後の残りのワインを飲み干し
ウイキョウの香りのボトルを開けて
2つのグラスに、綺麗に注いだ
その身のこなし
両の手の指、目のうるみ
完璧だった
”DEAR タツキ”
DJさんの音楽ありがとう
誰のなんていう曲か知らないけど、
家帰ってゆっくり聞きます
ピース
ユカ
・・・・・・・
音楽はいつも変わらず満たしてくれる
それを感謝されるのは
きっとあの女に音楽の響きが満ちたのだ。
しかし
おれは DEARという表現にはあまりに似つかわしくなく
居心地が変だ
酔って、
カラッケツで、
3日も同じ服を着て
黙った女の体をそっと撫でるような男で
大抵のことからけつ捲っているのに
"DEAR"っていうのはしかし。
もっと業突くでもいいのに
適当な手紙をかいていて
”君に、いい場所が有るように。”
など、
あの女の何かの足しになりそうでもない
つらいと言わない女には
余計に淋しさがあり
ある資格の有る 男には
癒やす
義務があるかもしれない。
がしかし、おれが
破廉恥でいて及び腰なので
DEARと言われるだけの
立ち位置もありそうに思えない。
そこで
おんなに
”おい、空っけつ!!
愛を置いてさっさと帰んな”
と言われるのがふさわしく こっちは
愛と呼ばれるものを、
床で割って
心臓に一刺しのソウルをくれてやって
エヴァンウイリアムスでも
買に出るのがいいように思う
若かりし頃、
親父はアカで、(死ぬまでそうだったが)
反体制は、我が家の日課だった
6才のガキに
政治家の嘘を叩き込んだ
エゴイストを憎め
金満を呪え
若かりし頃、
兄貴はいっぱしの人間になって
法律を振りかざし、(それも体制の一部だが)
日立や、東芝や、
YKKや、リクルートを、全部敵に回してた
お前らを憎め
お前らを呪え。
揚げ句、何やら重大な状態でもんどりうって
倒れたまんま・・・
毒でも
盛られたみたいに
若かりし頃、
俺は知らんぷりをし、
マルクスもレーニンも勝手にござれだ
女と住んで、酒と非合法と下半身が慰みだ、
パンクスとごった返して、(そいつらも反体制だが)
家中でビートが澄んで、、
美しい光景だった
黒い酋長に祝福される夜だった
なのに女は男と出て行った、
スノウとポルノショップを残したまま・・・
ゲームセンターを経営する
赤いアルファロメオに乗った男と
手荷物を持って消えた、
何てこたぁねえ
こっちは反体制だ
結局
、女も
程なく持ち崩したらしく
今はファッションヘルスで
白衣の天使になったらしい
黒い酋長には釣り合わなかったわけだ
運も尽き、金も尽き、ギターを壊し
残されて
ウォッカを
¥1,250.-の
シースルーの瓶を
しこたま手に入れて
・・・破壊した。
氷が解けるのを待って、
一気に破壊した
それは 気分で
爽快な
女の下半身よりも悦楽だった。
でもしかし
しかしウォッカ無しでは
生きるのもままならない、
いっそ飲み死にしようかとも思ったが
それにも飽き飽きして、
退屈なものだから
黙ったまま、コーヒーを飲み続けた、、
素面
とたんにアナキストもアカも、出て行った女も
出て行った兄貴たちも
複雑に絡んできて、
”アタシ、今ネガティブ全開、、、、”
とか言う映画の台詞にジンときた
けど
どうって事無い
ここはラジカルだ
複雑なまま素面のまま
笑ってやる
ランソン・コスタ広場の
噴水の飛沫がわずかにかわせる
ロザリア・ロンバリオの石像の前で
唄っていた女は
ジャスミンと名乗ったが。
本当の名前は別にあり、だがそれも
名の一部に華の字もあったらしく
それらしい響きには違いない
ギターケースには
硬貨や
時には紙幣が投げ込まれ
彼女は歌でその暮らしを賄っていたが
時には嫌なポリ公が
稼ぎが過ぎると横やりを入れに来た
歌には,
ゴヤの山並みに夕陽が落ちる夕べ
涙を流す女もいた、
時には男も。
何に傷つけられたかは分からないが
傷ついたジャスミンは
”夢ででも、逢おうか”って唄っていた
それは
どことなく
心中を
思わせた。
若いジャスミンの路上での歌が終わった頃、
それから彼女の部屋で
一緒に
ワインを5,6杯飲んだ
俺の買ったワインは少々水っぽく
甘ったるかったが
それで 雰囲気は
悪くなかった
彼女は 南米のブランケットを敷いた
ソファーに座りなおし
”たつきはいくつなの?”
と尋ねた
”さあね、生まれたときのことは記憶にないんでね”
とだけ答えたが
35年ウイスキーを飲み続けた,見るからに
酒場のハエの様な面持ちの男だ
早々うかがい知るだろう
”ジャスミンは幾つだい?”
あたしは
16よ
なんてこった
俺は座り直して
タバコの火を消した
これではもう一つ もう一押し
けん引する物の
虎の様な
ドクニンジンの様な
縛り付けるもので、
黒い鳥を殺せ くさびで殺せ
俺の敵になれ
それこそお前に望むことだ
これではもう一つ もう一押し
立ち上げる物の
目の無い龍の様な
スピードボールの様な
凍らせるもので、
黒い島に入れ 銃剣で探せ
俺に塹壕を掘れ
それこそお前に望むものだ
拾い上げたものはたったの石だろ
それでもそれを口にしな
見つけられたものはちっぽけな情念だとして
それでも
それを見せてくれ
これではもう一つ もう一押し
俺を殺してから、
中から探しだして
八つ裂きにしてもいいから
お前の生を存分に楽しんでくれ
たとえ
憎しみによって生きるとしても。
俺は心からそう願っている
この世は、苦しむものだと | |||||
重い荷を背負って | |||||
坂道を登るとか | |||||
誰が決めたのかね | |||||
この世の蜜も 酢も 甘い | |||||
だのに | |||||
苦しんで生きろと | |||||
生きると言うことは 苦しみの | |||||
連続だ と | |||||
あいつは言ったんだ | |||||
木の下で座り続けて | |||||
悟ったというが | |||||
そいつは貴族の生まれで | |||||
生きるために飢えていたわけでも | |||||
人を殺さなきゃ自分が | |||||
生きられなかったわけでもないだろう | |||||
不幸の刺繍でチクチクした、 上流人間 | |||||
って思えなくもない | |||||
そいつは苦悩を生来って言って美徳に | |||||
したが | |||||
本当に苦しみ | |||||
生きるものは | |||||
ただ笑えることさ、と、 | |||||
苦み走りながらでも | |||||
求めるものだ | |||||
あの |
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沖縄の | |||||
おじいや おばあのように
出典 |
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解剖学者で、脳科学者のあの虫好きの老人が言うことの、多くを |
俺は案外気に入っている |
軽妙にしたたかに笑う語り口の真実は玉虫色で |
いろんなところに着地して、人の話を茶化し放題 |
或いは話柄をすりかえる。 |
あの術が嫌いではない |
ただ、 |
死を遠ざけ、向き合うことが出来ないなら、 |
死ななくていいから生まれないで下さいと言うしかない |
との言葉に |
俺は噛みついた |
死を想え |
それはそうだろう。 |
藤原新也もそう言ったしな |
だが、生まれることを選択したのは俺たちじゃない |
そうだろう |
好きで生まれたわけじゃあない、 |
生まれた以上生きていくしかない、 |
好んでこの世に生を受けた奴がいるのか、 |
まあ、もしかしたら |
チベットのあの輪廻の少年はそうして生まれたのかもな |
例えば前の記憶を持ったままいる 10歳の少女なんてのもいたりして |
そういう人もいるかもしれない |
なぜこの世の不調和な頭でっかちの邪で哀れな |
混沌と無秩序に苛まれたままの |
人間を好んで選ぶのか、俺にはわからないが。 |
虫けらでもいいのか、飢えた水草や稲妻や、動物園のパンダでいいか、 |
それもわからないが |
身悶える様な人間でいることは確かに骨折りだ |
しかし苦も無く世を渡る人間にありたいと |
そうも思えない |
人間として死にゆく |
その時間の過ぎる中 |
何も見つからなくても 何かを失っても |
生まれた以上は、生きるだろう |
そして |
全ては通過点でしかない |
小さなマッチから |
マッチ箱を取り出す |
それにタバコで火を灯し |
赤ワインのボトルに注いだグラスを叩き割る |
ボール紙の中で、宙が虹を飛び |
骨に咥えられたちんけな鶏が |
街を渡って海に移り住む |
小さく冷たく湿った火で |
水面を焼いてみる |
静かに音もなく船もすすみ |
影もなく巨大な氷山を砕く |
47年経った今、全てが新しく |
なった様に思う |
ちぎれた雲が地中で埋もれ |
た
|