生後一か月の猫がおれのところにやってきたのは
冬の終わりの頃だった
メスだった。
か細い声で鳴いたが、威勢は良かった
おれはなんと言うか、パンクスとか
刹那主義とかを思っているくせ
なぜ猫なんか。
どちらかと言えば
鳥は鳥かごから放してやりたかった
犬は野良で吠えていればいいと思ったし
野性というものに惹かれているはずだった
それでも猫を愛した
いたずらに腹を立てたが
嫌いになることは一度もなかった
何の役にも立たない猫の手が
おれの心を掴んだ
かつては、
手放したくない女が何人かいたにはいたが
今はほとんど忘れてしまった
昨日、
9年という日々を過ごした猫が死んだ
おれはしばらくは、
その猫のことを忘れることはないだろう