ヒグラシが鳴き始める時間、
私達は、
答えがない答えを探し求めていた。
彼は、なかなか寝付けないのは、
先のことを考えて不安になるからだという。
私だって同じ。
何がベストなのか、自分に問いかけて、
ようやく答えが出せても、時間と共に、それも、違う気がしてくる。
そうそう。
常に、
いろんなものが変わって行くから、
答えどころか、
自分もわからなくなる。
周りもわからなくなる。
結果、
考えたところで、
何もわからないことが、分かった。
そう言って可笑しくなった。
みんな、そうなんだろうか…?
他人も、自分と同じ考えだと思っていた頃もある。
でも、実際は、みんな違う。
だから、期待してはいけない。
彼が聞いてきた。
きみの性分って、どんなの?
それはね、多分…。
彼は、私が自分と似ていると言った。
私達は、似たもの同士だったんだ。
でも、
私にとって、彼は期待以上の存在。
いつも、彼の考え方に、自分に無いものを見つけたり、教えてもらったりするから。
そっか。
誰も、期待してはいけないんだった…
彼は、優しく教えてくれた。
期待するのではなく、
尊敬と感謝でいいの。
期待というのは、抱いているその人の世界感だから、
どうしても、ずれてくる。
どんな人でも、期待はずれになりうるから。
ヒグラシから、セミの声に変わる頃、
私は、犬を連れて散歩に出た。
もう八月だね。
改めて、今日までこれたことに感謝する。
将来、彼と私が、どう変わっていくのか、先のことは、わからないし、期待しない。
でも、自分の中で、ある気持ちが芽生えてきているのは確か。
それは、彼が、私の中で、
違和感なく、安心できるということ。
私は、いつか、彼に会いたい。
でも、
彼も、そうだと期待するのはやめておこう。
1時間の散歩の間、彼はずっと、私の隣で歩いてくれていた。