夫が夜勤に行ったあと、
娘は、駅まである人を迎えに行く。
昨夜も、久しぶりに訪ねてきた。
こんばんは。
久しぶりだね〜
彼女は、手作りの ラスクを私の分だと言って手渡してくれた。
とても優しい感じ。
娘が、神戸の彼女と知り合ったのは、
いわゆるSNS。
彼女の年齢は、すぐ上のお兄ちゃんと同じ。
娘は、15になる。
お兄ちゃんは、22。
知り合った時は、まだ娘は13だったと思う。
よく部屋から男の人の声が聞こえてくるようになり、
私は、時々、電話の向こうの彼に横から話しかけた。
私なりの娘の守り方だった。
最初は、無言だった。
母は、懲りずに話しかける。
おはよう!
こんばんは。今日は寒かったねー。
などなど。
そのうち、彼から、私に質問されるほどになってきた。
私は、娘に、もし会うなら、うちに連れておいで。
それだけは、常に言っていた。
初めてうちに来たのは、1年半ほど前。
見た目は男性だけど、中身は女性だと聞いていた。
もう、男性としての機能は、していないと、心配する母に、娘は自分から言ってくれた。
黒い服に、おかっぱの背の高い人。
それから、
行儀の良い、穏やかな雰囲気が、漂っていて、何より、
娘のことをとても気にかけてくれる人だった。
今思えば、
この人のおかげで、娘は変わった。
自分の考えをしっかり持ち、周りをよくみて、
先回りができる人間になった。
あれから何度も、うちに来るけど、
決まってそれは、夫のいない夜。
そして、それを快く思わない息子の目を避けるようにして、
娘の部屋で過ごす。
朝早く、2人は起きてきて、朝食を楽しそうに作って食べる。
私の分も、置いといてくれる。
いつも美味しい。
お料理の大好きな2人。
やがて、夫が夜勤から帰る頃、2人は、家を出て行くのだ。
ここには、彼女が訪れた形跡など、どこにもない。
私は、それがいつも、辛い。
夫に理解できるだろうか?
息子に理解してもらえないだろうか?
彼女は、男性の体で産まれてきた素敵な女性だ。
いつか、ちゃんと話そう。
今日も、2人の姿を見て、思っていた。
もう行くんだね。
素敵な一日を過ごしておいで。