◇世に棲む日々(四) 司馬遼太郎
文庫・新品で買った。幕末の歴史を勉強したいと思い、まず読み始めたのがこれ。年末の帰省の新幹線から読み始め、元旦に4巻を読み終わりました。実は司馬作品は初めてなのですが、意外にも読みやすかったです。
タイトルからするとあまりなじみのない感じかもしれませんが、前半の主役が吉田松陰で後半は高杉晋作という話です。高杉晋作というと歴史の勉強では「奇兵隊」を作った人という程度しか習いませんが、あるときは幕府の重臣であるときはお尋ね者であり、妾を連れて四国を逃げ回った上、最後は戦の途中で病死というあたりまでは知りませんでした。しかも28歳くらいで死んでるんですね。もしかして知らなかったのは私だけ?
でも、せっかくかわいい嫁さんもらったのになぜに妾ばっかり大事にする?というところが解せん。そういう時代だったのでしょうか?
◇僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 中島らも
文庫・娘1号がもってたもの。帰省用には「世に棲む日々」しか持って行かなかったら、帰りの夜行バスで読む本がなくなったため、娘1号から借りました。とはいえ、私もPHPから最初にハードカバーで出たときに読んでたので20数年ぶりでしょうか。
中島らもさんの本はほとんど読んでるので同じような話が何回も出てきます。これもあちこちの本で見たエピソードがあれこれ出てきますが、割と品良くまとめられてるので学生向けのお勧め図書に入ってるのでしょう。何はともあれ、おかげでバスの中では退屈せずにすみました。
◇燃えよ剣(上・下) 司馬遼太郎
文庫・上巻は中古で下巻が新品。ご存知土方歳三ものです。「世に棲む日々」に比べれば物語の色合いが強いので、面白いといえばこちらの方が面白いです。TBSドラマの「新選組始末記」では古谷一行が演じてましたが、鳥羽伏見の戦いのあとはさらっと終わって土方の最後についても「函館五稜郭の戦いで壮絶な戦士を遂げた」というテロップだけだったので、なんかスッキリした感じ。
刀を持った侍と銃を持った兵隊が混在した時代ですから、この頃の戦いは生々しかったことでしょう。あれこれ記録が残ってる部分と、明らかに司馬遼太郎の創作であろうというラブシーンなどを考えながら読んでしまいましたが、単なる歴史の記録よりはストーリー性を持たせるための演出があった方が面白いかな?と思ったのでした。傑作です。
◇蟹工船 小林多喜二
図書館で借りた。昨年話題になってたので読んでみました。読みやすい文体ではありませんし、台詞部分は結構きつい方言。若者の間でも話題になったということですが、みんな読んだの? 現代の格差社会に通じるとかいう取り上げ方もあったようですが、私はそんなことは思いません。むしろ作者が後年逮捕され拷問により獄死した事を考えると、総理大臣の物真似やってケラケラ笑っていられる現在はつくづく平和な世の中なのだと実感しました。再度いいますが、買った人は本当にみんな読んだの?
◇九州少年 甲斐よしひろ
ハードカバー・新品で買った。面白かったです。九州の新聞で連載してたものに加筆修正して出版されたとか。甲斐さんの本は「荒馬のように」「稲妻日記」など読んでますが、これはそれこそ少年時代に焦点を合わせたものですので興味深いです。
父親の借金で夜逃げしたり、貧しい中でも母親だけは泣かせないように兄弟で力を合わせて生活してたけど末っ子ゆえにいろいろドジをしたり…というあたりが泣かせます。
ロックンローラーというとあらゆるものに反抗して、というイメージがありますが親孝行のロッカーがいてもいいじゃないですか。ガッコのセンセイや校則が嫌で夜の校舎窓ガラス壊して回るようなのはちょっと戦う相手が違うんとちゃうかなぁと思ったり。まぁそれも時代の違いでしょうか。いずれにしても甲斐さんや甲斐バンドの歌にちょっとでも興味のある人は甲斐です。…あ、違った買いです。(お約束)
◇最後の将軍・徳川慶喜 司馬遼太郎
図書館で借りた。幕末物の三つ目。まぁこうやって固めて読むあたりが凝り性と言われる所以かもしれません。しかしまだ気は済みません(笑)。
徳川慶喜というと幕政が行き詰ったところで仕方なく将軍になり、ほどなく大政奉還を迎えたため個人的には「おぼっちゃまでボンクラ」というイメージしか持ってなかったのですが、すごく骨があって政治力もあるお方だったのですね。
例の田母神氏が「歴史の授業は明治以降を中心にやって、戦国時代などは時間が余ればやればいいんです」とテレビで言ってました。たしかに幕末から明治にかけての歴史というのはもっと学ぶべきだと思います。私のように偉そうに毎日ブログを書いてるものでも一番弱い部分ですし。
それにしても、何がどうだというとこの将軍は混乱の世にあっても毎晩伽をさせてたそうです。時代が違うといえばそうですが頼もしいですね(?)。中島らも先生といしいしんじ氏の対談を思い出しました。雌羊を連れてきて「夜伽申し付ける!」「メェ~」というの。いずれにしても夜伽というとなかなかロマンチックな雰囲気が漂う表現です。誰ですか、いちいち検索してるのは。
◇楯 二谷友里恵
図書館で借りた。図書館で見つけたのですが、吉田豪氏が絶賛してたような気がするので読んでみたくなりました。あの「作文を作品にした」と言われる「愛される理由」から数年経過し、離婚してからというか郷ひろみ氏の「ダディ」より後に出版されてます。タイトルは、書店で五十音順に並べると「ダディ」の隣になるようにしたという話もあるくらい。
内容は「まぁ大変ねぇ」という気がしないでもないですが、周囲の反対を押し切って結婚して二人も子供を作ったのはあなたでしょ?と思うとどうもスンナリ目に入ってこないんですよねぇ(笑) いずれにしても「ダディ」と合わせて読むと面白いかもしれません。ただ、この夫婦はどちらにも興味ないんですよね、私は。
◇闇の貴族 新堂冬樹
文庫・新品で買った。買ったのは数ヶ月前だったのですが、何しろ600ページほどありますので読み始めるのに勇気がいりました。が、いざページを開いたら暇があればこれを読むほどの面白さ。途中からは大体結末が読めてきたりしますが、それでも最後まで読ませるのはさすが。
ところどころ「そんな単純にはいかんでしょう」というところがありますが(電話の番号表示のあたりとか)、全体としてよくできた話です。この人の小説はいくつか読みましたが今のところこれがベストです。
ただ、文庫の裏表紙に書いてあるあらすじと本文の内容の主なところが一致してないという気がします。一番ショッキングな部分を書いてますが、それはちょっと違うのではないかと思う次第。まぁこれは幻冬舎文庫に共通してますか?
ということで、1月のベストはエッセイでは「九州少年」、小説では「燃えよ剣」と「闇の貴族」。今月もいろいろと読めてラッキーでした。幕末物では次に「翔ぶが如く」の1~3巻を買ってあるのですが、いろいろ読んでるうちにどうも薩摩藩が好きじゃなくなってきたのと全10巻というのにびびってるのでどうしようかと。
今のペースで読み始めて3年目に入りましたが、ぼちぼち目が肥えてきたので厳しいですよ(笑)。