今日のひとネタ

日常ふと浮かんだことを思いのままに。更新は基本的に毎日。笑っていただければ幸いです。

本 人の縁とは不思議なもので…/さだまさし

2024年11月02日 | ブックレビュー

 こちらはさだまさしが出した初めての本。発行が昭和51年3月なので私は小学校を卒業する頃。すぐ重版がかかったようで4月の段階では既に4刷になってます。

 兄が買ってきたのですが私もすぐに読みました。兄はグレープのセイヤングを毎週録音してて私もそれを聞いてたので、出版前から注目していた本ではありました。もう何回も読んでますが、ちゃんと最初から最後まで読んだのは数十年ぶり。

 目次は画像の通りですが、中学生の頃は千葉とか東京の地名や距離感がまったくわからず、学生時代のバイトの描写も「ふ~ん」と思ってただけでしたが、今読むとあれこれよくわかります。昔読んだ時よりは大人になってからの方が圧倒的に面白いです。

 

 やはり気になるのは「栄光の相棒伝」であって、グレープの吉田政美の事を書いているわけですが、こちらも当時の二人の関係がよくわかって大変興味深いです。吉田氏が箱バンの仕事をすっぽかして車で長崎まで来てしまい、一時は大変な事態だったようですが、それがきっかけでデュオを結成したと。

 中学生の頃に読んだ時は「ふ~ん」という感じですが、色々世の中の事を知った今では、キャバレー周りのバンドに入ってプロのミュージシャンになったものの、その世界に染まって行きつつある友人を心配するさだまさしの気持ちはよくわかります。そんな中、彼の部屋でジャズの専門書を見つけて少しほっとしたという話もありました。

 もっとも、突然グループを結成したわけではなく、それまでの交友関係やバイト先の様子を見ていると、さだまさしには吸引力があるというか魅力があって、色んな人が寄ってくるのですね。その中では頼ったり頼られたりというのもありますが、単に音楽的な才能が注目されてるだけじゃなくそれこそ人間力といいますか。

 ただ、この本では音大への進学をあきらめた経緯は書かれておらず、それについては新書で出してた「本気で言いたいことがある」という本が詳しいです。こちらの「本」を読んだ段階では、「この人はバイオリンをやりに東京に来たのに、なぜ普通の高校に通って、しかもさぼってばかりいるんだろう?」と不思議に思った記憶があります。

 なお、この本には「戯曲 朝刊 -蔵太家の場合-」というのが収録されており、これは実際に上演されたものの様子。その配役はこのようになっています。

 グレープと同じ事務所だったクラフトのメンバーが演じてます。それにしても、浜田金吾さんにとっては黒歴史かもしれません。私は再演を望みたいですが絶対やらんでしょうね。


語尾はコスプレだとか>紋切型社会

2024年08月13日 | ブックレビュー

 武田砂鉄の「紋切型社会」という本を読んでて色々ハッとさせられました。この本は「言葉で固まる現代を解きほぐす」という副題もついていて、様々な場面での言葉の使われ方についてをあれこれ掘り下げているものです。

 その中で特に「語尾はコスプレである」というのが面白くて、要するに「○○だぜ」というのと「○○のよ」という風に語尾を変えるだけで人格自体が変わって見えるというもの。

 それ自体は別にハッとはしないのですが、英語の翻訳の場合に「英語に語尾なんてないんだから」という戸田奈津子の話が面白いです。また、ジェーン・スーのエッセイ「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」を例にとって「このタイトルなど、語尾だけで立場を明確に主張している。」というのも大いに頷けます。

 ジェーン・スーがコラムの締めを男性言葉にすることが多いのも例示し、女性が女性性を排するために一人称で「俺」を使うより「だな」などと「語尾をいじるほうが劇的に刺さる」とも指摘しています。

 たしかに、彼女のトークショーの取材映像ではファンにジェーン・スーの魅力を尋ねたところ「とにかく言葉のチョイスが絶妙で。」と言ってたのを見ました。この辺は本当に言葉の魔術師だとも思いますが、それに魅力を感じる人はそれを楽しめる感性を持っているということでもあって、彼女の本が売れるというのはそういう人が多いという事ですから出版業界にとっても喜ぶべきことでしょう。

 その他にも、お茶の水博士や阿笠博士の「〇〇じゃ」の博士ことば、「〇〇でちゅ」という赤ちゃんプレイなどについても取り上げられており、なかなかに考えさせられる本です。

 「語尾のコスプレ」ということだと、柔道漫画でアニメにもなった「YAWARA!」で柔の祖父、猪熊滋悟郎が言った「柔の道は一日にしてならずぢゃ」も印象的だし、川崎のぼるの「いなかっぺ大将」では「わしは…わしは…菊ちゃんも花ちゃんも好きだす!」「菊ちゃん、あんなアホほっといてわてと遊びまひょ~」「大左衛門、しっかりするぞなもし!」なんてのもありました。(まあこれは方言なので語尾だけではありませんが。)

 そうやって語尾をいじるだけで書いた人の人格まで想像させるというのは、考えただけで楽しくなります。私もこのブログでは日々日本語表現について考えてますので、とにかく明日からもビシバシ行かせてもらうでぇ~! ←と、ここはカネヤン風

 で、実はこの本は図書館から借りてきたのですが、かなり気に入ったので買う事にしました。今は文庫になってるのでお手軽です。気になる人は是非どうぞ。


タレント本と私

2024年08月04日 | ブックレビュー

 タレント本を読むのが好きです。タレント本の定義がどのようなものかはおいといて、私としては自伝や自筆のエッセイ、評伝や評論、人物伝などを想定しています。そして、「タレント本」とは言えないのかもしれませんが、特定の音楽ジャンルや昭和歌謡について当時の風俗も交えた読み物も「タレント本」として捉えています。

 また、音楽プロデューサーや作曲家、編曲家、芸能雑誌記者の自伝、評伝もタレント本としました。プロレスラーや格闘家の本も相当読んでて、中にはタレント活動をしてる人もいますがそれらは除外しています。

 それで、以下にこれまで読んだものをリストアップしてみました。読書記録は直近17年くらいはブログに残してますが、それ以前は記憶によります。特にさだまさしの「本」は読んだのが中学の頃ですが、今も本棚にありますので読んだのは確実。

 そして、ここでは文章が主であるものを取り上げてますので、例えばキャンディーズの卒業アルバムなどメインが写真というのは除外しています。(「卒業アルバム」は文章も結構ありますけど。) また、歌手や俳優の方が書いたフィクションの小説は一般にはタレント本になるかもしれませんがそれも入れません。


 ということで縛りは多いですが以下そのリスト。

<自伝・自筆エッセイ>

あのねのね/あのねのね 今だから愛される本
あのねのね/帰ってきたあのねのね
いかりや長介/だめだこりゃ
池上季実子/向き合う力
石川ひとみ/いっしょに泳ごうよ 愛が支えたB型肝炎克服記
石川ひとみ/こころ魅かれて
石原真理子/ふぞろいな秘密
伊東四朗/ボケてたまるか
伊藤蘭/Over the noon 私の小さな物語
稲垣潤一/ハコバン70's
稲垣潤一/かだっぱり
井上堯之/スパイダースありがとう
内田裕也/俺はロッキンローラー 
大橋巨泉/巨泉:人生の選択
大橋巨泉/ゲバゲバ70年! 大橋巨泉自伝
大竹しのぶ/私一人
奥居香/ばかたれ
小野リサ/フェリシダージ
甲斐よしひろ/荒馬のように
甲斐よしひろ/稲妻日記
甲斐よしひろ/稲妻日記 Part2
甲斐よしひろ/九州少年
桂米朝/私の履歴書
川添象郎/象の記憶
川村かおり/ヘルタースケルター」
小泉今日子/書評集
熱き心に/小林旭
小松政夫/昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年
コラアゲンはいごうまん/実話芸人
斉藤由貴/ネコの手も借りたい
斉藤由貴/運命の女
サえきけんぞう/さよなら70's
酒井政利/プロデューサー
さだまさし/本
清水ミチコ/読むがいいわ
庄野真代/庄野真代のThe 世界漫遊記
笑福亭鶴光/かやくごはん
鈴木ヒロミツ/余命3ヶ月のラブレター
高杢禎彦/チェッカーズ
武田鉄矢/ふられ虫の唄
田代まさし/マーシーの薬物リハビリ日記(漫画)
田代まさし/自爆
田中律子/キャンプで逢いましょう
谷村新司/蜩
谷村新司/何処へ
ダン池田/芸能界本日も反省の色なし
近田春夫/調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝
月亭可朝/月亭可朝のナニワの博打八景
辻仁成/そこに僕はいた
つのだ☆ひろ/パパはソウルマン
なべおさみ/やくざと芸能と
長門裕之/洋子へ
西田敏行/役者人生泣き笑い
萩田光雄/ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代
萩原健一/ショーケン
萩原健一/ショーケン最終章
春一番/元気です
濱田マリ/濱田マリの親子バトル
羽田健太郎/音楽は愉快だ
瞳みのる/ロンググッバイのあとで
BEGIN/肝心
BEGIN/さとうきび畑の風に乗って
火野正平/若くなるには時間がかかる
ファンキー末吉/酒と太鼓の日々
Princess Princess/エピソードブック
MALTA/MALTAのサックス修行一直線
三上寛/怨歌に生きる
水谷豊・松田美智子/水谷豊自伝
南沙織/二十歳ばなれ
ミヤコ蝶々/私の履歴書・女優の運命
ムッシュかまやつ/ムッシュ!
村上ポンタ秀一/自暴自伝
八千草薫/あなただけの、咲き方で
山口百恵/蒼い時
憂歌団/憂歌団DELUXE
吉田拓郎/もういらない
吉田拓郎/自分の事は棚に上げて
芳野藤丸/芳野藤丸自伝
ラサール石井/笑いの現場

 

<評伝・評論・インタビュー集など>

中森明菜 消えた歌姫/西﨑伸彦
松田聖子と中森明菜/中川右介
太田裕美白書
流星ひとつ/沢木耕太郎 (藤圭子へのインタビュー)
南沙織のいた頃/永井良和
ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒/島崎今日子
財津和夫 人生はひとつ でも一度じゃない/川上雄三
たった5つの冴えたやりかた/北村年子(Princess Princess初のパーソナルブック)
Go Go キャンディーズ-キャンディーズ革命-/文化放送編
渾身・石橋凌/生江有二
エリック・クラプトン スローハンド伝説/ハリー・シャピロ
ディープパープル 紫の伝説(作者失念)
加藤和彦ラストメッセージ
小説コント55号/山中伊知郎
ショーケン 天才と狂気/大下英治
殉愛/百田尚樹
BEATNIK 1981-1986(甲斐バンドオフィシャル機関誌からの記事抜粋)
甲斐バンド40周年 嵐の季節/石田伸也
ポップコーンをほおばって 甲斐バンドストーリー/田家秀樹
愛を叫んだ獣/亀和田武 (甲斐バンド関連)
生きることを素晴らしいと思いたい―コンサート・ツアーの12万人/水岡隆子
黄昏のビギンの物語/佐藤剛
ヨイトマケと美輪明宏/佐藤剛
上を向いて歩こう/佐藤剛
小松政夫 遺言/小菅宏
ザ・タイガース 世界は僕らを待っていた/磯前順一
グループサウンズ文化論/稲増龍夫
グループサウンズ/近田春夫
ドリフターズとその時代/笹山敬輔
いかりや長介という生き方/いかりや浩一
日本フォーク私的大全/なぎらけんいち
安井かずみのいた時代/島崎今日子
イカロスの流星/なかにし礼(TVプロデューサー渡辺正文を描いた小説)
ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人/長田美穂
ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人/濱口英樹
大村雅朗の軌跡 1951-1997/梶田昌史・田渕浩久
「誰にも書けない」アイドル論/クリス松村
町あかりの昭和歌謡曲ガイド/町あかり
バンドライフ/吉田豪(バンドマン20人のインタビュー集)
元アイドル/吉田豪

 


 やはり面白いのは自伝、自伝的エッセイで、小説仕立てになってたりするとより面白いです。その部門で私が特に面白いと思ったのは、

・稲垣潤一/ハコバン70'
・井上堯之/スパイダースありがとう
・高杢禎彦/チェッカーズ
・ダン池田/芸能界本日も反省の色なし
・萩原健一/ショーケン
・小松政夫/昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年
・春一番/元気です
・瞳みのる/ロンググッバイのあとで
・村上ポンタ秀一/自暴自伝
・酒井政利/プロデューサー

などなど。面白いと思った理由はいろいろです。


 そして、自著ではない部門では

・南沙織のいた頃/永井良和
・ザ・タイガース 世界は僕らを待っていた/磯前順一
・「誰にも書けない」アイドル論/クリス松村
・ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人/濱口英樹
・バンドライフ/吉田豪

が読み応えあって好きです。これらの本は何回も読んでます。あとは甲斐バンドファンとしては「ポップコーンをほおばって 甲斐バンドストーリー」がバイブルです。ここ何年か毎年1回は読んでます。

 自伝と評伝の両方を読んで面白いと思ったのはショーケン。自伝を2冊読んでから「ショーケン 天才と狂気」を読んだのですが、やはり自分では書かなかった事が多数あるというのがわかりました。書かなかったのか書けなかったのか、あるいは編集段階で却下されたか。ただし、評伝の方も正しいかどうかはわかりませんしね。

 ただ、「前略おふくろ様」の撮影時のエピソードは評伝の方と小松の親分さんの自伝の内容が一致してて、ショーケンの自伝とは違いました。そういう事もあります。

 と、酒場ではついそういうようなウンチクをクドクドと話してしまいがちですが、周囲からは「また始まった。」と思われてることは承知しています。また、「いろいろ読んでるね。」と言われることもありますが、それが好意的に発せられてないのも日々感じてます。とはいえ、なにしろ一般男性の言う事なのでその辺はご容赦いただきたいものと。(って、誰に言ってるのやら。)

 一口にタレント本とはいえ読み応えのあるものはすごく多いですし、興味を持った方は色々調べてみて下さい。私の場合、画像にある本は気に入ってるので今も保存してますが、実際は図書館で借りてきたのも多いので一度読んだきり手元にないのも多いです。社会人になってからでも引っ越しは十数回してますが、やはり好きな本は手放せませんね。


昭和史 1926-1945(半藤一利)読了

2024年06月16日 | ブックレビュー

 半藤一利著「昭和史 1926-1945」読了。2回目ですが今回は結構気合を入れて読みました。前回の朝ドラ「ブギウギ」も今回の「虎に翼」も戦前から戦中を経る話だったので、どういう時代だったかちゃんと知っておきたくて。そもそもがこの辺りの歴史に弱いですし。

 この本は授業形式の語り下ろしを本にしたものでわかりやすく、読んだ人も多いのではないでしょうか。調べてみたら私が前に読んだのは2016年。8年前なわけで、それから年に1回くらい読んでおけば歴史の流れもすんなり頭に入っていたでしょうにと。

 何しろ大学受験の時も選択は世界史にしてたし、日本史は授業はあったもののどんな感じで聞いたのか記憶無し。この時代の歴史は楽しくないのでどちらかというと逃げ回っていた感じだったでしょうか。その後、幕末と維新の歴史小説は好きになりましたが。

 そんななので、歴史の流れで出てくる言葉をよく理解しておりませんでした。今回また読んだくらいでは整理できてないのですが、これまで「聞いたことはあっても混同していた」という地名、事件、人物名があります。特に漢字三文字とか四文字とか。

 それらはどういうものかというと以下の通り。

・張学良と張作霖
・柳条湖と盧溝橋
・上海事変と満州事変

 これらが何であるかサラッと答えられるようになれば、ちょっとは賢くなった気になるでしょう。

 この本の最後の「むすびの章」は「三百十万の死者が語りかけてくれるものは? 昭和史二十年の教訓」というタイトルであって、ここが凄く胸に響きます。昭和史の二十年がどういう教訓を私たちに示してくれたかという話を半藤先生が語ってて、それが一番重要と考えるものであります。

 ここでは五つ挙げてますが、一番ズキッとするのが二番目。「最大の危機において日本人は抽象的な観念論を非常に好み、具体的な理性的な方法論をまったく検討しようとしない。」という点。

 「物事は自分の希望するように動くと考える。」ので、昭和史ではソ連が満洲に攻め込んでくることが目に見えていたにもかかわらず、攻め込まれたくない、今こられると困る、と思うことがだんだん「いや、攻めてこない」「大丈夫、ソ連は最後まで中立を守ってくれる」というふうな思い込みになるという風に。

 「日本人は」としてますが、私なんぞも私生活で起こって欲しくないことは考えないようにしてしまうのは多々あって、まったくその通りと思います。自分自身もそうなのではないだろうかと。

 とはいえ、自分だけではなく会社でも命じられた業務に疑問がありリスクを唱えると、その際は「ネガティブな発言は士気を下げる」とか「やる気がないのか」とか言われたり、そういう空気になったりします。営業現場では「そういう事は考えない。」という流れになることも多かろうと。

 もちろん物を売る話と外交や安全保障の話は違いますが、「歴史から何を学ぶか。」を考えるにあたってはすごくためになる本だとあらためて思いました。

 もっとも、昭和史を理解するには明治43年(1910年)の朝鮮併合や、大正4年(1915年)の対華二十一か条の要求がどうして起きたか、どういう意味があったかという事も知らねばなりません。今回はそれもちょっとだけわかったので、昭和16年12月の対英米開戦の瞬間だけ捉えてもいかんなあと。

 と、ちょっと読んだだけで知ったかぶりしてしまうのもよろしくないので、これの3回目に入るか昭和史の戦後篇を読むかは現在検討中。何がどうかというと、この本は入浴中に読んだのでこれからの暑い時期は読書時間が短くなるという…。


スティーヴン・キングを少々

2024年06月05日 | ブックレビュー

 ふと「ゴールデンボーイ」の紹介を見て、「どんな話だったっけ?」と興味を持ったので早速読んでみました。「老人は、ナチの戦犯だったのでは? 少年と老人の機会な交流を描いた」紹介文でした。

 なので、あらすじとしては「近所にいながらこれまで交流のなかった老人とふとしたことから言葉を交わし、実は優しい人だとわかって自宅に通い始め色々な話をするようになったが、ある時から『もしやナチの逃亡犯ではないか?』という疑惑が浮上。『この優しい老人がそんな恐ろしい人なのか?』と苦悶しながら、表面上はそれまで通りの交流を続ける少年の葛藤を描く。」というものだと勝手に思ってました。

 が、読んでみたらまったく違って、実際のあらすじは以下の通り。「ふと見かけた本でアウシュビッツの事を知って興味を持ってしまった少年が、近所に住んでいる老人がナチの逃亡犯であることをつきとめ、ある時は脅しながらある時はなだめながら、当時のことを色々と聞きだす。そうするうちに少年も老人も精神に変調をきたし、いつしか凶行に手を染め…。」というものでした。

 そらまあスティーヴン・キングなんで、ほのぼのとした話にはなりませんわね。調べたらこれは映画になってて、映画と小説では結末が違うんですと。小説の結末には戦慄しましたがこれは立派な悪夢の素です。

 スティーヴン・キングの作品はあれこれ映画になってますが、実際に見た事があるのは、

キャリー
シャイニング 
バトルランナー
ペット・セメタリー
グリーン・マイル
イット

など。映画で見て関心を持って小説読んだのは「グリーン・マイル」のみ。今回この人の作品にちょっと興味を持ったので、読んでから見るか、見てから読むかというのは悩むところではあります。

 ちなみに「キャリー」は旅行鞄を転がして歩く少女の話で、「シャイニング」は社員になろうとしている男の話、「ペット・セメタリー」はペットを責めたりしちゃいけませんという動物愛護の話です。そういえばWOWOWが開局した頃にやたらと「ペット・セメタリー」ばっかやってたので、「もっと楽しい映画でお祝いすればいいのに」と思ったのは私だけではないはず。

 とにかく、この文庫に収録の「ゴールデン・ボーイ」も「刑務所のリタ・ヘイワーズ」も面白かったので、この夏はスティーヴン・キングを少々読んでみようかと思ってます。なお「ゴールデン・ボール」と空目した人とはお友達になれません。あしからず。


原田伸郎さんの好きなもの

2024年05月25日 | ブックレビュー

 かの大ベストセラー「あのねのね 今だから愛される本」に、原田伸郎さんの「ぼくのすきなもの」として出ていたものです。この本を読んだ頃はまだ小学生だったので「ふ~ん」と思ってただけですが、今あらためて見るとなかなか味わい深いです。まずはご覧ください。


京都・嵯峨野
ショートホープ
イノダのコーヒー
巨人の長嶋選手
パチンコ
黒鉄ヒロシの漫画
水割り
チーズケーキ
やくざ映画
ビートルズ
いかの塩辛
日本酒
バスター・キートン
おかあちゃん
ぎょうざ
テニス
力を入れなくても出るウンコ
麻雀
髪の長い女の子

お琴
なめこの赤出し
ひげそりあと
千枚漬け
CAMAYの石鹸
弦をはり替えた時のマーチンの音
若乃花
にがい日本茶
紅白歌合戦の出場が決まった瞬間
ヨーグルト
ベーコンエッグ
着物の似合う女の子
ひとり旅
雨の鎌倉
チェック
ヨレヨレのGパン
デパートの買い物
料理
ピアノの音
ブィトンのバッグ
10月1日
でんでん虫
いちご
渥美清
きゅうりのたたき
清水焼のぐいのみ
ポッチャリした、目のきれいな女の子


 ちょっと解説すると、京都・嵯峨野は原田さんの出身地で、並んでいる中にも色々と京都生まれであることを感じさせるものがありますね。イノダとか千枚漬けとか清水焼とか。なお、10月1日はご本人の誕生日。紅白歌合戦には出場しておりません。お酒は好きなようですね。

 ちなみにこの本は昭和49年9月が初版で大ベストセラーでした。それにしてもよく売れました。親戚の家に行くとちょっと年上のいとこはみんな持ってた感じ。私のこの本も誰かに貰ったと記憶してます。

 もしご本人に「今でも力を入れなくても出るウンコが好きなんですか?」と聞くとキョトンとするかもしれませんね。ちなみに私にとっては大学の先輩にあたる方なので尊敬してます。素敵な声とキャラですし。


水木しげるブーム到来

2024年05月23日 | ブックレビュー

 BS12で「ゲゲゲの女房」の再放送見ておりますが、奥さんのエッセイが原作とはいえ、若い頃からいくら描いても注目されなかった水木先生の作品が週刊誌連載を経てテレビ番組になるサクセスストーリーの一面もあります。

 ちょっと前には「悪魔くん」が実写ドラマになった場面があり、「あれってどんな話だったっけ?」と興味を持ちました。何しろ、実際に水木先生の漫画というと「昭和史」しか読んでないので。

 それであれこれ読もうと思ったわけですが、揃えたのがトップ画像の通り。実は「河童の三平」は娘1号が前から持っていたもの。何年前に買ったか本人も忘れてましたが、これがちくま文庫版で第18刷。よく売れてますね。

 そして「悪魔くん」は私が、「墓場鬼太郎」は家人が買いました。「悪魔くん」もちくま文庫ですがこれも18刷。「墓場鬼太郎」は貸本まんが復刻版で角川文庫からの発行。今年の1月で22版発行でした。こちらもよく売れてますね。

 まだ「河童の三平」は読んでないですが、読んだ限りでは「悪魔くん」より「墓場鬼太郎」の方が面白いですね。後年のアニメにもなった「ゲゲゲの鬼太郎」とは作風もキャラの描き方も全然違いますが、読み始めたら止まらないくらいストーリーは面白いです。

 「墓場鬼太郎」は試しに1巻だけ買ったのですが、角川文庫版では全6巻あります。1巻が結構盛り上がったところで終わったので2巻も読まねばと思いますが近所の書店で売ってるかなあ。今のところは悪夢の素にはなってないのが幸い。


調子悪くてあたりまえ/近田春夫自伝

2024年04月12日 | ブックレビュー

 ご存じ近田春夫の自伝で、前から興味があったのですが何しろ本体価格2800円というボリュームに怖気づいて手が出せずにいました。

 が、先日ムッシュかまやつの自伝を読んだら面白くて「やはりミュージシャンの本は面白い!」と思ってこちらも入手しました。

 オビの目立つ文字は

・生誕70年、音楽生活50年。
・インタビュー40時間超!
・日本音楽・芸能誌第一級資料にして「恥ずかしくない大人」でいるための虎の巻

というもの。

 中身も凄く面白かったですし、私はこの人を誤解というかキチンと理解していなかったとあらためて思いました。とはいえ、近田先生自身が「ファンにおもねったことはない」とか「俺のすべての活動をフォローしてるファンっていないんじゃないかな?」と言ってますので、わかってる人の方が少ないでしょう。そういう意味でも、少しでも興味がある場合はこの本を読んでみることをお勧めします。

 私の場合は、「ラジオDJで受けたキャラでもって音楽界を渡り歩いてきた人」というイメージだったのですが、少なくともそれは完全に変わりました。そもそもこの人に興味を持ったのはNHKのラジオでやってた「歌謡曲ってなんだ」というコーナーですが、本当に昭和歌謡が好きで詳しい人だと知ったのはその時。

 元々はクラシックピアノから始まってそういう素養もあり、この人の実力と才能をもってすればカリスマプロデューサーにも、芸能界の黒幕として暗躍することもできたでしょうに、それをしなかったのが興味深いわけです。ちなみに、ある時期というかかなり長い期間に渡って収入を支えていたのがCM音楽の制作だったそうで、誰でも知ってるようなCMをいっぱい作ってたのでした。そちらもまったく知りませんでした。

 そんななのでそれで食べていくのも可能だったわけですが、音楽家としてそれでいいのか?と思い、今ではもうやっていないというのも潔いと。

 とにかく「え? え?」と驚く話が多いので、「近田春夫」という名前に少しでも反応したら読んでみるべきでしょう。


リバー/奥田英朗

2024年04月10日 | ブックレビュー

 奥田英朗の小説は大体読んでるつもりでしたが、これはノーチェックでした。2022年に出てたんですね。

 オビの文字は

・同一犯か?模倣犯か?
 十年前、渡良瀬川河川敷で相次いで発見された若い女性の死体。
 そして今、未解決連続殺人事件の悪夢が再び幕を開ける。
 人間の号と情を抉る無情の群像劇 × 緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!

というもの。河川敷で遺体が発見された事件なので「リバー」と。

 この人の作品は長ければ長いほど面白いと思ってて、これまで一番好きだったのが「邪魔」次いで「無理」「オリンピックの身代金」でしたが、今回のも最高でした。そして、長いと言ってどれくらいかというとこれが約650ページ。

 上記の通り事件ものの小説で、これはこの人のお得意分野。なにしろ主要な登場人物だけで群馬県警の刑事、栃木県警の刑事、犯行に関わったと疑われる人物が別々に三人、若手新聞記者、被害者家族、スナックの雇われママで、そこに警視庁、容疑者の情婦、容疑者の家族、犯罪心理学者、暴力団員などが絡みます。

 ハードカバーでこのページ数だし重量も700gありますが、何しろ読み始めたら止まらなくなるので、先日ビルボード東京に行くときもショルダーバッグに入れて持って行ったくらい。

 主要な人物については、背景から細かい心理描写まで結構深い記載があるのでまあ長いこと長いこと。それでも、最後にもうひと転げあっても良いと思ったくらいでした。やはり長ければ長いほど面白いのは間違いありません。奥田のファンはもちろんまだ一冊も読んだことない人にもとにかくお勧めです。どーですか、お客さん。


あらためて「ゲゲゲの女房」を

2024年03月07日 | ブックレビュー

 BS12で再放送中の朝ドラ「ゲゲゲの女房」を見ていたら、原作が読みたくなりました。どうやら10年くらい前に一度読んだらしいのですが、忘れてしまってました。そして今回読んでみたら「そういえばたしかに読んだ。」と思い出したのでした。

 知らない人のために説明すると、「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの水木しげる先生の奥さんが書いたエッセイによる半生記です。なにしろ初めての本なので結構さらっと書いてありますが、結婚当初からお金に苦労して相当やりくりしてたのがわかります。

 面白かったのが水木先生が何かの取材で「奥さんはどういう人ですか?」と尋ねられ、「生まれて来たから生きているというような人です。」と答えたとか。これには奥さん本人が頷いてしまったそうですが、なんとなくこの本を読んでいてそれもわかります。

 ところで、ここ最近私の中で水木ブームが到来してますので、この「ゲゲゲの女房」以外にも「昭和史」、「水木サンの幸福論」なども引っ張りだしました。これらは元々持ってたので再読ですが、それぞれ突き合せると実際の部分と作品で描かれている部分が違うところにも気づきます。

 一番は長女出産の部分。「昭和史」では金策に走り回って家に帰った途端産声が聞こえてきたということで、自宅に産婆さんが来てたという設定ですが、「ゲゲゲの女房」では病院に入院したことになってました。

 果たして「幸福論」をあらためて読んでみると、実際はやはり病院での出産。現在再放送中のドラマも丁度このあたりですが、そちらは「ゲゲゲの女房」の通り病院での出産となってます。漫画の「昭和史」が貧しさを強調するためか脚色してあったのですね。

 昭和史は新婚当時の家庭生活はあまり書かれておらず、なにしろ全8巻ですが結婚したのが7巻の中盤。結婚するまでも苦労してますが、新婚早々とにかく描いても描いても生活が苦しく、奥さんの事を見向く暇もなかったのだと思います。

 実際ドラマの方は、原作や「昭和史」とどのように違っているかというと、細かいところは色々あります。一番の違いは近所の貸本屋さんの奥さんの松坂慶子はいませ~ん。ま、そこはドラマだし話題になる女優も出さねばならんのでしょうね。今のところドラマは凄く面白いです。