アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

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本の本シリーズ その3 「死の蔵書」

2010-07-22 23:00:41 | 本の本
『死の蔵書』「読む本」と「所蔵する本」2冊買ってしまうことは確かにあります


「死の蔵書」 ジョン・ダニング著、宮脇孝雄訳、ハヤカワミステリ文庫、1996年

 最初から文庫本で(ハードカヴァーは出てないと思うのだが)出たということを大いに評価したい。こんなことなら文庫版が出るのを待てばよかったという本は結構ある。読むだけ無駄だったという本はそれほどはないが(そんな本を敬遠する嗅覚を身に付けることは短い人生を大事に生きるためには必要なことだ)読み終わったあと、ハードカヴァーの装丁がやや重そうに思えるような本は多々ある。文庫本だって昨今そんなに安いわけではない。この本は身の丈にあった面白みのある一冊だ。ただ、腰巻にある「本書には、本好きの心をうずかせる驚くべき知識が詰まっています」というのは惹句として少々おおげさである。

 古本の掘り出し屋が殺された。担当した本好きの警察官(アパートメントはデンヴァー市立図書館の別館のように本がある)が暴力沙汰で停職をくらい、ならばとさっぱり警察を辞し古書店を始める。初版本コレクターで新本同様の初版本がごろごろしていたので(トマス・ハリスの『ブラックサンデー』の完璧な初版本を六冊も持っている)、本屋を始めることは気持ちを切り替えればたわいも無いことだった。「本屋は本に惚れちゃいけない」

 「本」そのものに謎が隠されているわけではない。それに登場する本は、歴史的な本ではなく、現代に入ってからの小説が中心である。魔術に関する本で登場するのは『オズの魔法使い』ぐらいだろうか。ここでは商品としての本が大事な役割を担っている。愛書家とはおかしな生き物である。どうしようも無い本でも、それが一冊しかなく、その本をどうしても欲しい金持ちが居たら一儲けできる。そこまでいかなくても、すでに絶版になった大好きな作家の本なら、新刊の値段をはるかに超えても手に入れたいと思うものだが、時として古本屋の店頭にどれでも100円といった棚に混じっていたりする。誰がどんな本を欲しがっているか、それに気づかない古書店主を出し抜いて儲ける、得をするというそういう経験は一度味わうと忘れがたいものだ。そうして、趣味と実益を兼ねた探索に喜びを見出しはまっていく輩がいる。

 そうした経験がある人、少なからず関心がある人なら、この本を倍楽しむことができるに違いない。


ぜひとも読んでみてください

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