Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

映画『人魚の眠る家』

2021-10-18 17:07:00 | 映画
2018年製作。
堤幸彦監督 
篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎 出演



もちろん原作は2015年に読んでいるはず。
いやあ、こんなに重い話だったか。
ミステリとは言いながら、殺人も推理もなく、
脳死は人の死か、という重いテーマだけがあった。

今観ると、身につまされて客観視するのが難しい。
わたしだったらどうする? と刃物を突き付けられた気分だ。
クライマックスシーンから涙が止まらなかったが、映画に泣かされたというより、身につまされて泣いた。
涙と共に観た人はきっと同じ気持ちだと思う。

あらすじをざっと辿ると、
従姉妹とその弟を、祖母(松坂慶子)がプールで遊ばせる。
もうこの時点で、祖母の気持ちがわかり過ぎて苦しい。

篠原の娘がプールで溺れ、脳死状態になってしまう。
そして、駆けつけた両親は残酷な宣告を医師にされる。
「こんな時に何ですが、臓器提供について娘さんはどうお考えでしたか?」と。
「娘は6歳ですよ。そんな話、するはずないじゃないですか」

篠原はわずかな希望に縋り、目を覚さない子を家に連れ帰る。
彼女の夫、西島はIT機器会社の社長。
金に糸目をつけず娘を介護し、自社の社員(坂口)を使って娘を動かす機器まで駆使する。
この辺りから、ホラーになる。
篠原の笑顔は怖い。

しかし、普通の家庭なら脳死を受け入れるしかなかったはず。
不和になっていた夫を経済的理由で引き止め、植物状態の娘に付きっきりになれる境遇に、普通はない。
現実離れした設定だ。
が、親子の情愛は説得力があるし、
脳死は人の死かという問題は未だ正解はないので、身につまされずに観る人はいないだろう。

その意味でとても重かった。
二度と観ることはないだろうし、原作を読み返したいとも思わない。
東野作品、小説は忘れたが映画は忘れられないかも。