私を育ててくれた「師匠」が
逝ってしまった
たくさん迷惑をかけて
たくさん叱られて
たくさんほめてくれた
自分の娘のこともわからなくなって
何年も経つと聞いた
家族だけで静かに送ったと言う
誰のことも分からなくなり
身体も動かなくなり
発熱したり治ったりの
繰り返しだったそうだ
それでも
存在すること自体がパワーを放っていた
この世から肉体も消えたと聞いた瞬間
力が抜けて
腑抜けになった
少しして涙が流れた
静かに静かに涙が流れた
涙が流れなくなったら
何をして良いのか考えられなくなった
頭が働かない
ふとした事で師匠を思い出し
一粒の涙がこぼれる
一粒 ほろり
また一粒 ほろり
そしてまた ほろり
泣くなと言われ
泣くまいと思って
泣いてない
泣いてない
一粒だけ
ほんの一粒の涙がこぼれただけ
最後の一粒がこぼれ落ちたら
笑って
ありがとうございました
と言おう
もう少し時間をください