阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

寄食欲恋

2019-04-01 00:04:16 | エイプリルフール

花の真盛り、とはいえ春霞深く見通しが良いとはいえない世の中でございます。本日世間では元号がどうとか騒がしけれど私どもにはあまり縁のないこと。それよりも貴女には御体調よろしからずと聞き及び、これこそ重大事なれば一筆さし上げたく存じます。

聞けば食欲も落ちていらっしゃるとか。まことに失礼ながら、貴女の一番の魅力は、よく召し上がり、よくお話になることと存じ上げます。食欲のない貴女を想像するのは難しい。くれぐれもお大事になさってください。以前、貴女から聞いたお話に、一人でお食事中に隣の席のカップルの男性の方が貴女を何度もちらちら見て不快な思いをされたとありました。彼女の方を見ていればいいのにと。しかしながら、 私にはその男の気持ちが良くわかります。これもまた失礼を申し上げますが、貴女の丈夫な前歯や下アゴがひとたび動いて肉にかぶりつき、またタコヤキを勢いよくほおばる御姿は、それはそれは美しく人をひきつけるものがあるのです。その男はきっと貴女の素敵な食べっぷりに見とれていた、見ずにはいられなかったのだと思います。そして、最近はお会いする機会もございませんから、私はその男がとっても羨ましい。私も是非またご一緒させていただきたく、まずはご回復を心よりお祈り申し上げます。

さて、ここまで読んで下さったのならば私がこれから言わんとする事はすんなりとご理解いただけるのではないかと思います。ええ、しかしお待ちください。今は困ります。召し上がっていただくのはまだ半年先、もう少し仲良くなったあとでございます。大蟷螂上人の被食成仏偈にも、

 

   春朝隠狙桜花中   (春の朝隠れて狙う桜花の中)

   秋夕令雌食虫虫   (秋の夕雌をして食せしむムシムシと)

   雖滅身卵養分成   (身は滅ぶといえども卵の養分と成る)

   是我喜悦如舞宙   (是れ我が喜悦にして宙を舞うがごとし)

 

 とあります。近頃人間界では人材も使い捨てとか、会社や国のために命を削るのは遠慮申し上げますが、貴女に食べられるのなら話は別でございます。貴女の少し分厚いくちびるが私の・・・いや、今はやめておきましょう。ひたすら紅葉の頃を待ち遠しく思います。ただその前に、実り多き秋を迎えるために、お互い厳しい夏を乗り越えなければなりません。もうじきヒヨドリも活発になって我々を狙う時期が参ります。それに近頃の気候は亜熱帯にて酷暑豪雨も当然至極と聞くにつけ、これからが試練の季節、お体には十分御注意なさいませ。それでは、卯月のはじめの朝に満開の桜を眺めつつ、鎌切右大臣の歌三首を添えて御見舞い申上候。

 

   タコヤキにうどん牛丼みな食べてサッカー語る唇なつかし

 

  カマキリのように食べられても良いと今度会ったら言ってみようか

 

   幸せはまだ先にあり しかはあれど今日の桜を仰ぎてぞみる 

 

 

 (この手紙はフォロワーさんのツイートをモチーフにして綴りましたけれども、人間のフォロワーさんに宛てたものではありません。)

   



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