阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

阿武山(あぶさん)を語る(8) 広島城と阿武山

2018-08-22 13:32:15 | 阿武山

 今回は阿武山が広島城築城の際の起点であったという説について考えてみたい。この説を目にして以降、一度広島城から阿武山を眺めてみたいと思っても、実際そのあたりに行くと図書館で許される時間いっぱい本を読んでしまって実現していない。大した手間でもないのに困ったことだ。

(中区基町、広島市立中央図書館の広島資料室から見た阿武山)

 

 さて、問題の論文を読んでみよう。近世の城郭立地に関する風水思想か らの考察(リンクはpdfファイル) 広島城の部分を画像で拝借。

 風水思想による四神相応、そのうちの玄武を阿武山に設定したという説で、古くからのデルタ内の道が北東に傾いているのもこれで説明がつく。しかしここには、阿武山から引いた線の南端をどこにとったか書かれていない。当時のデルタの先端ではないかという学芸員の方の話を読んだことがあるのだが、今見つけることができない。

 異説もある。新広島城下町(第七集)には、影向線という聞きなれない言葉で解説がしてある。

 

 影向(ようごう)とは、神または仏が現れること、と辞書には出てくる。それならここに書かれている厳島神社ご鎮座縁起の「御山を影向地と定めて宮を建つることなり」は単に弥山に神様が現れたという意味のようにも思えて、どうもよく理解できない。ただ、上の論文でも己斐松山と二葉山のラインは引かれていて、選地において一つの根拠ではあったと思われる。朱雀大路の傾きを説明するのに阿武山のラインが重要なのだろう。もう四十年前のことになるけれども中学生高校生の時、基町の図書館から当時の白島北町の自宅に帰るのに堀端の道を歩いた。真北に歩いているつもりであったが、実は北東に20度傾いた阿武山に向かって歩いていたことになる。これは今の私にとっては愉快なことだ。

 ところがである、他の方が基町から撮った写真を見るとお堀のラインの延長上からは、阿武山山頂は少し左に外れているようにも思える。まあこれはサッカーのオフサイドでも写真だけでは判断しにくいということがある。消失点がどうの言われたら困るので、自分で実際その地に立って見て見るまでの宿題としておきたい。写真の一例として、阿武山の写真をたくさん撮っていらっしゃる方のページをあげておきたい。

クレドから眺めた広島城

 また、広島城、阿武山で検索するうちに、ひとつ面白い話を見つけた。こちらも中世の川の内を知る上で何度も参考にさせていただいているブログだ。

広島城普請・測量道具の行方 

 この中に「江波島の漁師と仁保島の大河の漁師の海苔ヒビを置き栽培する干潟の領域争いが勃発。浅野藩が調停し、本川河口の“西袖の鼻”(砂州の突端だろうか)から真っ直ぐに見通し、“向こう沼田郡八木村の内 あぶ山を目標に”を境界線と決め、またこのラインが安芸郡と佐伯郡の新しい境とされた。」とある。漁師も目印にした阿武山、やはり一度海の上から眺めてみたいものだ。なお、この方も別のページで権現山阿武山と風水の玄武との関連を指摘していらっしゃることを付け加えておきたい。

 話を戻す。阿武山が広島城築城の起点であったというのは阿武山好きの私にとってわくわくする話だ。更に考えてみると、大蛇退治のあとで八木の八幡社(光廣神社)に奉納されたという太刀にとっても、付加価値にならないだろうか。太刀の奉納の時期はわからない。最初から広島城の玄武ではなかったかもしれない。しかし、旧領に奉納した家伝の太刀が広島城の玄武とした阿武山を守っているというのは、築城後は広島に移り住んだはずの香川氏にとって、また陰徳太平記を著わしたその子孫にとっても大蛇退治以上に名誉なことのように思われる。広島城築城縁起みたいな本があれば、登場するお話だったかもしれない。私だったら勝雄が戦死した末文のあとに、後ニ輝元公広島城ヲ築城シ給ヒシ時、と続けたい。そう書いてない以上、太刀と築城の関連はこれ以上言えないのがとっても惜しいところだ。

(中区西白島町と西区楠木町の間、JR山陽本線新白島横川間の車窓から見た権現山と阿武山)

 

【追記】 先日パセーラ6階から阿武山を眺める機会があり、写真も撮ったのだけど、お堀の南北の線を延長すると阿武山山頂ではなく、二つ目か三つ目のこぶにあたるように思える。ライン上に立ってないから確実とは言えないが。

(中区基町、パセーラ6階スカイパティオから眺めた阿武山と権現山)

また、気象予報士の勝丸恭子さんのツイートの写真、もっと高い階からの撮影で、これで見ても延長線上はちょっと東にずれてるように思える。もっとも、お堀や道の方向が築城当時と同じかどうか調べてみないといけない。



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