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空想と現実逃避とちょっと真面目

「立ったまま埋めてくれ」

2020-09-29 10:47:49 | アニメ・漫画・ドラマ
元々、私は。

「海賊」とか「ジプシー」って言葉にロマンチックなものを感じていた。

*現在では、「ジプシー」という言葉は使わない、使ってはいけないそうだ。「ロマ」というのが、現在の呼称だそう。

子供の頃読んだ漫画「フォスティーヌ」はジプシー(ロマ)に育てられたオーストリアの大公の娘の物語。
当時、ジプシーなんてみたことも聞いたこともなかった小学生の私は、音楽やダンスをしながらヨーロッパ中を旅するロマンチックな楽団、くらいにおもってしまった。



そして。


そのイメージを覆したのは、学生時代にヨーロッパを旅した時。

イタリアやフランスでは、必ず、ガイドさんに「ジプシーに気をつけて」って言われた。

ジプシーの子供たちが近くに来て、無心をする、そしてパニックになってるところを大人のジプシーがお財布をすったりする手口だから、みたいなことを言われた。


フォスティーヌに出てくる「ロマンチックなジプシー」と、見てわかる(一見してわかるくらい汚い格好の)スリ集団は、まったく違う。


初めてみるジプシーは、ロマンチックな音楽集団ではなく、ボロボロの服を引きずりながら、観光バスの回りをうろうろする集団だった。


正直。


がっかりして。(今は、そんな自分が恥ずかしいけれど)


ジプシーのことは忘れてしまった。


それが。最近、ひょんなことから上記の衝撃的なタイトル「立ったまま埋めてくれ」という本に巡りあった。


これは。



ヨーロッパのジプシー(ロマ)の虐げられ、迫害されてきた人々の物語。


生涯、ひざまづいて生きてきたから、せめて死んだら、ひざまづかなくていいように、「立ったまま埋めてくれ」という意味だ。


そのくらいヨーロッパのジプシーは、長い間、社会の隅に追いやられ、いないものとして蓋されてきた。


少女たちの結婚は12、3歳。
学校には通えず、文字は読めない。
スリやかっぱらいは悪いことではない。
富めるものから余分な富を奪うのは、当たり前のこと。
毎日、洗濯、子供の世話、食事の用意、そして、スリ、虐待、暴力。


30歳ともなれば、すでに祖母になる。


そんな人々が今もこの現代に生きている。(もちろん、定住政策もある)


自分自身にも、息子にもつたえたい。


これからも辛いこと、悲しいこと、やりきれないことが、人生には波のように襲ってくることがあるだろう。

そんな時に。


「立ったまま埋めてくれ」という言葉を死ぬ時につぶやく人々がいることを。


どうしようもない社会の渦に翻弄されるしかない運命を持って生まれてくる人がいることも。


今、この日本に生まれてこれた幸せがあることを。


生きていれば、なんとかなる、と思える日本にいることを。