参考(^^)
株価暴落「危険なシグナル」の簡単な見つけ方
大江 英樹:経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表
1929年10月の大暴落の時のNYウォール街。「危険なシグナル」を事前にかぎ分けるには?(写真:AP/アフロ)
まだ11月の下旬に差し掛かったところですが、もう「今年は株式市場が非常に好調だった」と言ってもよいかもしれません。なにせ、10月には日経平均株価が何と16日間連続で上昇するという新記録を打ち立てたぐらいです。
それに合わせて「今後も株価の上昇は続くのか」「それとも今の株価はバブルなのか」といった議論が、専門家といわれる人たちの中で、いろいろなされています。
「企業が将来にわたって生み出す利益」予測できるか
さて、株価というのはつねに企業の実態価値を表しているとは限りません。ですから、割安であったり割高であったりすることはつねに起こります。割高が行きすぎるとバブルということになるわけです。
株式に関して「唯一、絶対正しいこと」とは何でしょうか。
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それは、「株式の価値というのは、その企業が将来にわたって生み出すすべての利益を今の価値に換算したものだ」ということです。でも、これから将来にわたって生み出す利益がどれくらいになるかなどということは、誰だってわかりません(当の会社の経営者だってわからないでしょう)。
だからこそ、人によって予想が異なるのは当然だし、世の中の多くの人が過剰に悲観的な見通しをすることで安くなったり、逆に過大な期待感で高くなったりするわけです。
よく言われるように「バブルというのは弾けてみないとわからない」ものですから、今がバブルかどうかは本当のところはわかりません。私が個人的に見ても、まだバブルではないような気がします。
ただ、私はアナリストでもストラテジストでもないので、業績や景気の見通しから判断しているわけではありません。私自身は仕事柄、1974(昭和49)年から40年以上にわたって相場を見てきましたが、「株価が高値でピークを打つとき」と、逆に「下がって大底になったとき」にはいずれも共通点があるのです。そのサインを見逃さないようにすることがとても重要なことだと思っています。では、そのサインとはいったい何でしょうか。
そのサインとは何か? 「一般誌の株式特集」です。
マネー誌や経済誌が特集を組んできたときではありません。一般週刊誌や女性誌などが積極的に株の特集をやってきたとき、さらに言えば、「今から買える銘柄100選」とか「初心者でも儲かる50銘柄」のような、具体的な特集を組んできたときは要注意です。
「雑誌というのは売れてナンボ」のものですから、そのときに多くの人が関心を持って読んでくれるものでないと記事にはできません。逆に言えば株式が記事になるということは、世の中のかなりの人が株式に関心を持ち始めているということで、そういうときは得てして高値圏であることが多いのです。
ケネディ大統領の父も「一般人の話」から異常を察知
1929年のアメリカの株式市場の大暴落はよく知られていますが、その中にこんな有名なエピソードがあります。
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アメリカの第35代大統領のJ・F・ケネディの父親のジョセフ・ケネディは、ウォール街で巨万の富を築き、政治家になったことでも知られていますね。その彼が当時ウォール街で靴磨きをしている少年が株の話をしているのを聞いて、自分の持ち株を全部売って、その後の暴落を免れたというお話はとても有名です。一般大衆の隅々にまで株式の関心が高まっているということは高値に違いないと判断したわけです。
おそらく時代が変わっても人間の心理や行動は同じですから、もともと株式投資をやっていた人に加えて、それまでまったく縁のなかった人が株式投資に興味を持ち始めるというのは間違いなく高値の注意信号といえるでしょう。
実際に日本でも史上最高値をつけた1989年の前年に、私が高校の同窓会に行ったとき、証券会社に勤めていた私に対して多くの友人から「株を教えてくれ」と言って取り囲まれ、苦笑した記憶があります。
今の状況は、「もうバブルじゃないか?」「そろそろ暴落を警戒したほうがいい」という声がちらほら聞こえてきます。しかしながら、そんな警戒の声が割と頻繁に出てくるときはむしろまだ上がる可能性が高いのです。
本当に高値圏にあるときは、まずこういう声は聞こえてきませんし、聞こえてもわずかです。
「今回だけは違う」という言葉が頻繁に出たら要注意
それより高値圏で頻繁に出てくる声は、「今回だけは違う!」という言葉です。天井が近づいてくると、「今までとはまったく流れが違う、環境も様変わりしたし、政策も力強い。今回だけは違う! 未曾有の大相場がやってくる」と言う人が増えてきます。
逆に、下落相場のときは「今度だけは違う! 売りはこれからも広がり、当分相場は下げ続ける。早く売っておかないと大変なことになる」といった具合です。
おもしろいことに、これは日本に限った話ではなく、アメリカでもTTID(This Time Is Different)と言って、同じように極端な上昇や下落が続く場面では必ず出てくる言葉のようです。カーメン・ラインハートとケネス・ロゴフという2人の米国人経済学者が『This Time Is Different』という本を出しています(日本語版『国家は破綻する――金融危機の800年』は、2011年3月出版)が、その中でこれは過去のバブルや金融危機の都度、繰り返されてきた言葉であると紹介されています。
「普段、株式には関心のない人や縁のないメディアがしだいに関心を高めて取り上げるようになる、そして『今回だけは違う』という声がよく聞こえてくるようになる」
私の40年以上にわたる相場の経験から、高値のときにはいずれもこうしたサインが登場し、早い遅いの違いはあってもそこからあまり間を置かずに大きな下落に向かっています。
今のところ、まだそういう声は聞こえてこず、むしろ警戒感が出ていますから、相場の格言でいう「もうはまだなり」という段階なのでしょう。
テクニカルやファンダメンタルな分析からの判断だけではなく、こうした人間の素朴な感情と行動が意外と的確な判断につながるということも忘れないことが大切です。