真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

『やんちゃな独創―糸川英夫伝』(2004年)

2010-09-23 | 読書-歴史
B&Tブックス
やんちゃな独創―糸川英夫伝

的川 泰宣【著】
日刊工業新聞社 (2004/05/31 出版)

このご紹介に尽きるんだろう。
yossiさんからの、短くてタイムリーなメッセージ:
ISAS(宇宙科学研究所)の礎を築いた、糸川博士の天衣無縫な活躍振りを、的川先生の視点で追ったという所がミソ

JAXAのホームページ内掲載の回顧談義などとも共通する部分ありかも。
JAXA|的川泰宣 の検索結果

糸川博士の人物像や発想に焦点。
ロケット開発に関しては、初期の色々なエピソードが充実しているかな。

著者が、糸川博士の謦咳に接した最後の弟子ということで、各種エピソード満載(既刊の評伝等から引用もあり?)なのは結構なことでした。

ロケット開発から退いてからバレエに凝っていた時期、公演のチケットを送りつけられた著者を含む弟子たちは、「あの短い足が上がるのを見に行くのは気が進まない・・」と思っていたが、チケットに通し番号がナンバリングしてあるのを発見、(出欠がチェックされてしまう仕組みだと気付いて)出かけたというエピソードが愉快。

モンタギュー伯(ロミオのお父さん)の役だったので、足を上げる場面がなくて済んだ由(笑)。
こういうのが(既存の評伝からのかき集めでない)著者自らの体験であり、パワーがある。

バイオリン製作に凝っていた際のエピソードも豊富。

「最後の弟子」による貴重な回顧なので、「はあ、そうですか」と承るしかないのだろうが、糸川博士自身または周辺の出来事以外は、じつは結構いい加減なノリで書かれているのかもしれない。

(中島飛行機に入社した糸川博士が設計に携わった)97式戦闘機の活躍ぶりを強調したいのは分かるが、ノモンハン事件におけるソ連戦闘機とのキルレシオ(撃墜対被撃墜比率)が極端な数字をポンと記載してあり(諸説ある模様)、うーん。
ノモンハン事件 4.3 航空戦

他社(三菱)の開発した海軍機・・・と縁が遠くなると、零戦の設計主務者の名前の字が違ったり(誤変換?)、同じく零戦が重慶爆撃の護衛で鮮やかな実戦デビューを果たした際の攻撃機が存在しない型式(80足さないと・・)だったりも。
皇紀の表記が600年足りなかったりも。

編集、大先生の回顧談のお原稿にチェックを入れるなど畏れ多いと考えて校閲機能を放棄?
ま、「最後の弟子」なので、いいけど・・。

MUSES-C 小惑星探査機に「はやぶさ」と命名したのはなかなか良かったのではないか・・・と、さらりと記述しているのは良い。
最多得票は「あとむ」だった由。

この本のほうが、ロケット開発に係る糸川博士の事跡を含めて良くまとまっていたと思う。
  ↓
幻冬舎新書
『はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語』

吉田 武【著】

(準備万端で待ち構えた)帰還を受けて発行されたはやぶさ本(未読)については、別の機会に。

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