中華街ランチ探偵団「酔華」

中華料理店の密集する横浜中華街。最近はなかなかランチに行けないのだが、少しずつ更新していきます。

時間差攻撃の刀削麺

2012年08月04日 | 中華街(台南小路・太平道・その他路地)

 久々の「杜記」である。

 最近は12時過ぎに行くともう行列ができているし、日によっては12時半になってもまだサラリーマンたちが並んでいることもある。

 だが、この日は12時15分だったけれど運よくカウンターが空いていて、数か月ぶりに担担麺を食べることができた。
 通常800円のところ、ランチタイム価格で700円だ。

 刀削麺というのは、その名のとおり刃物で削った麺である。その調理方法は独特で、練って押して発酵させた小麦粉の塊を、湾曲した小さな金属片で1本ずつ削り取りながら沸騰した湯鍋の中に投入していくのだ。

 だから均等な麺線状ではなく、中央部分が厚く、両端と両サイドは薄く削られた不規則な形状をしている。しかも、そのどれもが個性ある容貌をしていて、同じものは一つもない。

 麺を啜りこむと、微妙な食感の違いを楽しむことができる。
 しかも、麺を茹でるときに、1本ずつ削りながら鍋に投下しているので時間差があり、茹で具合にもわずかな違いがあるようだ。
  
 最近は中華街のあちこちで刀削麺が食べられるようになってきたが、ここ「杜記」はその先駆けとなった店である。
 


 「杜記」一号店が新規オープンしたのは2002年だったかな。我々はオープンの日に食べに行った。


 ここは以前、倉庫だったところ。そこを改造して造ったのである。店名は「杜記 中華第一家」だった。

 当時、向かい側には「紅花別館」としての「海鮮王」という店があった。そこは今、「福楼」になっている。


 中華街初登場の刀削麺実演店として話題になったものだ。


 開店当初のメニューはシンプルだった。


 叉焼麺。


 牛肉麺。

 
 あれから10年。
 横浜中華街では「京華楼」、「麺王翔記」、「香香」など、刀削麺を食べさせてくれるお店がかなり増えた。

 さて、そんな刀削麺であるが、最近読んだ『誰も知らない中国拉麺之路』(坂本一敏:著)のなかに、この麺の誕生に関する面白い話が載っていたので以下に引用しておく。



 刀削麺の本場は西安ではない
 西安刀削麺という看板をよく見かける。もともと刀削麺は山西省の麺で、現在は中国全土に普及しており、・・中略・・中国の事情を知らない日本人がこの看板を見ると、西安の名物だと思ってしまう。

 本場・山西省の太原では、頭の上に麺の生地を乗せて両手に鉄片を持ち交互にそぎ落とすパフォーマンスも見られる。これをできる人は、現在、中国全土でも3人しかいないといわれている。この刀削麺は両手切りと呼ばれている。

 刀削麺については次のような民話が山西省に残っている。
 モンゴル族が中原に進出して元王朝を建てたのは13世紀の末である。そのとき漢人の造反を防止するため、家々の金属をすべて没収した。10戸で料理用に使う包丁は一つと決め、料理をするときはかわるがわる使用して、終わるとモンゴル人に返していた。
 
 ある日、一人のおばあさんがトウモロコシとコーリャンの粉をこね合わせて麺生地を作った。切って麺にするため、モンゴル人のところへ包丁を借りに行ったが、すでに別の人が借り出しており、手ぶらで引き返すしかなかった。

 ところが、モンゴル人の家の門を出たとき、足に薄い鉄片が当たったので、すぐそれを拾い懐に隠した。家に帰ると、すでに鍋のお湯はちんちんと沸いており、みんなは麺を食べようと首を長くして待っていた。

 包丁がないのを見て、家族はがっかりした様子なので、おばあさんはすぐに懐の鉄片を取り出し「これで麺を切ろう」といった。この家の主人は「こんな薄っぺらのもでどうやって麺を切るのだ。たたき切るしかないだろう」と怒っていう。

 その言葉にヒントを得たおばあさんは、麺生地を左手で持ち上げ右手で鉄片を持ち、鍋の脇に立ち、お湯の中に1本1本、鉄片で麺をそぎ落とした。煮えた麺をすくい上げお椀の中に入れ、タレをかけて主人に食べさせた。主人は「うまい、うまい。これからは包丁を借りに行く必要はない」と、この麺作りの方法を絶賛した。

 この方法が10人に伝わり、10人から100人伝わって、晋(山西省の旧名)の国中に刀削麺が広まった。
 包丁を使わないで作る麺が山西省に多いのは、モンゴル人の支配と関係しているようである。




 「杜記」は路地裏の分かりにくい場所にある。



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2 コメント

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今は (ふ゛り)
2012-08-04 16:54:05
多くのお店で食べられる刀削麺ですが、マニアックな極辛系が多いからか、なんともメジャーになりきれませんね。
私は茹で具合が不安定ななこの麺は好きです。
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Unknown (管理人)
2012-08-06 05:46:31
>ぶりさん
辛くない刀削麺が好きです。
あの食感が何とも言えませんね。
返信する

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