『エンドロールのつづき』のパン・ナリン監督とこがけんさんとのトークショー、前回からの続きです。
(以下、後半)
司会:本作は、チャイを売っていた9歳の少年が映画に恋をして、映画監督をめざしていくという、監督の自伝的なストーリーが描かれているんですが、映画製作のきっかけからうかがっていこうと思います。
監督:この映画を作ろうと思ったのは、私の子供時代の友人、劇中の映写技師ファザルのモデルになった友人が、職を失ったことがきっかけです。映画がデジタル化して、映画館も2011年頃にデジタル上映になったんですね。それで、今までフィルム上映を担っていた彼がクビになった。子供時代の私は、彼のおかげでたくさんの映画に触れ、映画に恋することを知ったんです。この2つのストーリーが一緒になって、できたのが本作です。インドの田舎町で、無垢な少年が希望を抱いていく、希望があれば何も恐れるものはない、という物語になりました。本作では、映画館で映画を見る、という時代に戻ろうと呼びかけています。
司会:映画館で映画を見る素晴らしさが描かれていますが、こがけんさんはどういったところにグッときましたか?
こがけん:まずね、やっぱりサマイ少年は監督自身だということですけど、その映画への愛情の深さに、オー・マイ・ゴーッド!ですよ(笑)。本当に、皆さんが思っている映画への愛情みたいなものの結構奥にまで行っていて、ちょっとフェティシズムぐらいのとこまで行っちゃってる、ていうのがすごいところですね。あとやっぱり、この人の映画愛と頭抜けた行動力というのを掛け合わせた時に、どういう行動に出るかって言う話ですよね。
とても美しい環境に囲まれていて、決して裕福ではないんですけども、その中でお母さんの料理だったりと、そういうものの温かみがある。映写技師と映画の好きな子供って言うと、やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』が頭によぎるじゃないですか。あれは、根負けして見せてやるよ、という感じだったんですけど、こっちはもうめちゃくちゃリアルで、映画見せてやるけど、お前のいつもうまそうな弁当と交換な、っていって、弁当と交換で映画を見るようになるっていうね。あの、ファザルっていう映写技師の設定がうまくて面白いという点と、このサマイ少年が映画と関わるハートでもあるんですけど、なんか、映画の幕開けから終演までをたどるような話にもなっているんですね。
その結びつきもすごく面白いのと、それから映画へのオマージュがたくさんちりばめられているのがすごいですね。スタンリー・キューブリックに関しては言及されてましたけれども、あの音楽も、露骨に使ってオマージュしてしまいますから。これにはホントに、しびれましたね。あと、ラストね。これは今、あまり言及できないんですけども、僕、ちょっと鳥肌立ったんで、皆さんラスト、楽しみにしていて下さい、という感じです。素晴らしいものを見ました、ホントに。
監督:こがけんさん、本当にありがとう。素晴らしい紹介をして下さって。私のエージェントになっていただきたいぐらいです。(笑)
こがけん:日本に来たときのエージェントにね。やりますよ。(笑)
監督:この映画を製作している時、一生懸命細部にも神経を行き渡らせたのですが、それをこがけんさんはみんな汲み取って下さって、理解して下さった。とてもありがたいです。何か仕事をした時に、それを評価してくれる人がいてくれると幸せですね。
司会:この作品は、今年度アカデミー賞の国際長編映画賞インド代表にも選ばれております。来週ノミネートの発表があるのですが、監督、いかがですか?
監督:来週が発表ですね。ただ、私が映画を作り始めたのは映画が好きだったからで、どの映画監督もそうだと思うのですが、観客に映画を見てもらいたいと思ったからです。映画賞や映画祭は、その時々にある里程標みたいなもので、大きな映画賞では普段見られない作品も見ることができたりしますが、映画賞は今や世界中の国で催されていますし、私もいろいろいただいています。それより私にとっては、今回自分の作品が日本で公開されたことが、最大の賞であると思えます。アカデミー賞にノミネートされれば、もっとたくさんの人が見に来て下さるかも知れませんが、でも私は、映画を見て下さる方のために自分が映画を作っている、という目的を見失いたくないですね。
司会:そうですね、観客賞も各地で取ってらっしゃいますし、観客にそれだけ支持されている作品だと言えると思います。それで、お時間が迫ってまして、ちょっと延長ができなかったみたいなんです。こがけんさん、最後皆さんへのメッセージをお願いしていいですか?
こがけん:あらぁ、そうですか。僕が思うのは、いわゆる皆さんがインド映画に思うイメージとはちょっと違っている作品だと思うんですね。この作品は、インド映画というよりは、本当にこのパン・ナリン監督の作品、という感じです、僕の中では。映画愛がここまで、こんな奥まで行くんだ、という、ラストで映画愛が絶頂に達して終わるので、皆さん、本当に楽しみにしておいてほしいです。途中で眠ったりしたら、ホントに、オー・マイ・ゴーッド!(笑)
<こがけんさん、シネコンの床に倒れ伏して姿が消える>
こがけん:ちょっと待って、これ、倒れるのに適してなかったかな。(爆笑)完全に、いなくなるという。(笑)
司会:そうですね、カメラマンが追えなかったという。
こがけん:そうですね、カメラマンさんも追えないという構造ですね。(笑)
司会:ありがとうございました。監督、最後に一言お願いします。
監督:ただただ、本当にありがとう、とこがけんさんに言いたいです。映画を紹介して下さるたくさんの素晴らしい言葉と、たくさんの楽しく幸せな瞬間にお礼を言います。これから見て下さる皆さんに、『エンドロールのつづき』は、おだやかな笑いと、涙と、空腹感をもたらすと思います。ご来場の皆さん、松竹の皆さん、本当にありがとうございました。ここで、本作の若きプロデューサー、ディール・モーマーヤーを紹介したいと思います。
<最前列に座っていたディールさんが立ち上がる。背の高い、好青年でした。下はあとでロビーで撮った顔写真です>
本作の製作に一生懸命力を注いでくれました。今日来て下さった皆さん、本当にありがとうございました。
<その後、フォト・セッションに。ボードを二人で掲げるパン・ナリン監督とこがけんさん>
<こがけんさんは途中でランプを取り出し、すりすりしてくれましたので、上映中の劇場にはいつも、ランプの精が一緒に見ているものと思われます>
『エンドロールのつづき』は現在各地の映画館で大絶賛上映中。公式サイトはこちらです。予告編も公式サイトでご覧になれますので、ぜひアクセスしてみて下さいね。また、公式ツイッターでは数々のインド料理店とのコラボ企画の紹介や、皆さんの感想が読めてとても楽しいです。おお、フィルマークスの「初日満足度ランキング第1位」というニュースも載っています。皆さんもご覧になったら、ぜひご感想を投稿して下さいね。