アジア映画巡礼

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日本の小説が原作のタイ映画『ホームステイ』に注目!

2019-08-14 | 東南アジア映画

『バッドジーニアス 危険な天才たち』で日本人観客の心をつかんだタイ映画から、また秀作が1本やってきます。『ホームステイ ボクと僕の100日間』というタイトルで、今年の大阪アジアン映画祭で上映された作品です。タイトルだけ見ると「ボクと僕?」と「?」状態になりますが、実はこれ、森絵都作「カラフル」が原作、と聞けば、森絵都ファンの方はすぐにピンとくることでしょう。私は『ホームステイ』を見てから「カラフル」を読んだのですが、上手にアレンジしてあるなあ、とすごく感心しました。どんなアレンジなのかって? ではまずは、映画のデータとストーリーのご紹介から始めましょう。


 (C)2018 GDH 559 CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED

『ホームステイ ボクと僕の100日間』 公式サイト
 2018年/タイ/タイ語/136分/原題:HOMESTAY/โฮมสเตย์
 監督:パークプム・ウォンプム
 出演:ティーラドン・スパパンピンヨー、チャープラン・アーリークン(BNK48)
 原作:森絵都「カラフル」(文春文庫、2007)
 配給:ツイン
10月5日(土)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー


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物語は、主人公が死んだところから始まります。魂となってしまった彼の耳に聞こえてくるのは、「あなたは”当選”しました」の声。そして彼は病院の遺体安置所で目覚めるのですが、その体はハイティーンの男の子のものになっており、それは自殺した高校生ミン(ティーラドン・スパパンピンヨー)だったのでした。驚いた彼が逃げようとすると、清掃人(ノパチャイ・チャイナーム)が現れ、自分は”管理人”だと名乗ります。”管理人”の説明によると、”当選”した魂は過去の記憶をすべて消された上で転生し、この体に入って人生に再挑戦するチャンスを与えられたのだとか。「この肉体に”ホームステイ”できる期間は100日間。その間に、肉体の持ち主ミンが自殺した理由をつきとめること。それがわからない場合は、あんたの魂は永遠に消滅する」こう言って”管理人”は砂時計を渡し、姿を消します。


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ミンが生き返った、というので、母(スークワン・ブンラクン)は嬉し涙にくれますが、どうもミンの家庭にもいろいろ問題がありそうな感じです。大学を退職して、怪しげなサプリメント会社を立ち上げた父や、ミンに敵意を持っているかのような大学生の兄。さらに母にも、何か秘密があるようです。そのどれかがミンの自殺と関係しているのでしょうか? 時おり思い出したように現れる”管理人”にも対峙しながら、ミンの過去をさぐっていくのはなかなかに大変でした。”管理人”も、老若男女様々に姿を変えて現れ、ミンの心をかき乱します。

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しばらくして学校に復帰してみると、ミンという高校生はどうもクラス全員からシカトされていたらしいことなどがわかってきます。ミンに話しかけてくれるのは、ちょっと変わった女の子リー(サルダー・ギアットワラウット)と、ミンのチューターで優等生のパイ(チャープラン・アーリークン)だけでした。かわいいパイに心がときめきながらも、彼女にも何か秘密があるようで、ミンの自殺の理由はますます謎を深めていきます。そして、砂時計の砂は日に日に落ちていくばかり...。現在のミンは、正解に辿り着けるのでしょうか...。

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原作「カラフル」を大筋ではなぞっている本作ですが、”管理人”が原作では天使プラプラだけなのに対し、映画では前述した清掃人も含めて5人も現れるところが、まず大きな改変です。そして、”管理人”役には、特別ゲスト出演という感じで、結構有名な俳優たちが使われているのもおいしいところ。まず、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)でリンのお父さん役を演じたタネート・ワラークンヌクロ。『ポップ・アイ』(2017)でも象さんと共に主演していましたので、皆さんおなじみですね。

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そして、何とインド映画でもリメイクされたというヒット作『すれ違いのダイアリーズ』(2014)の女先生役、チャーマーン・ブンヤサック。ほかに『サムイの歌』(2017)などに、ライラ・ブンヤサックという名前でも映画に出演している女優です。

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こういう”管理人”がどこでひょっこり姿を現すかは、ご覧になってのお楽しみ。と、脇役の人から話を始めてしまったのですが、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をご覧になった方には忘れられない顔なのが、主役のティーラドン・スパパンピンヨーです。『バッド・ジーニアス』ではお金持ちのぼっちゃんパットを演じ、お金持ちの嬢ちゃんグレースと共に、カンニング実動隊のリンとバンクをがっちり支える本部要員として、特に後半目覚ましい働きを見せてくれていましたね。あの好演ゆえか、今回は主役に大抜擢。1997年4月27日生まれなのでもう20歳を過ぎているのですが、高校生役をチャーミングに演じています。今回は、生き返った時は長髪で、その後にヘアカット、という、2つの顔を楽しむことができます。

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そしてヒロインには、BNK48、つまりAKB48グループのひとつで、バンコクを拠点に活躍するグループのメンバー、チャープラン・アーリークンが抜擢されました。チャープランはBNK48のキャプテンだそうで、アイドルとしての活動の傍ら、国立マヒドン大学で化学を学び、研究助手として共同執筆の論文を発表したりもしているという才媛でもあります。本作の、成績優秀な特待生の役は地で演じられますね。このヒロインのパイも、原作とはキャラがだいぶ変わっています。原作を先に読んでいると、そういうトランスフォーメーション部分でも楽しめる作品です。

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監督は、かつて『心霊写真』(2004)をヒットさせた、パークプム・ウォンプム。『心霊写真』はとても怖い映画で、私は実はたたられてえらい目に遭いました。アナンダ・エヴァリンハムの肩にまたがるあの...と思い出しただけで震えが来る、私にとってはトンでもない映画なんですが、パークプム・ウォンプム監督の長編第1作だったんですね。『ホームステイ』にもホラーテイストはかすかに漂うものの、原作の切ないというか、哀切感を生かしたファンタジー青春映画となっていて、最後まで惹きつけられます。これはむしろ、製作会社GDHの持ち味と言うべきなのかも知れません。

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正式にはGDH559という2015年に設立された本作の製作会社は、『バッド・ジーニアス』をヒットさせたことで知られていますが、その前身は2002年から15年まで、数々のヒット作、良質な娯楽映画を作ってきたGTHです。GTH作品には日本での公開作も多く、その路線を引き継いだGDHでも、『バッド・ジーニアス』と本作『ホームステイ』のほか、昨年の東京国際映画祭では『ブラザー・オブ・ザ・イヤー』と『BNK48: Girls Don't Cry』(共に2018)が上映されるなど、日本での紹介のされ方は群を抜いています。今後も要注目!の映画会社ですので、まずは『ホームステイ』をご覧になってみて下さいね。予告編を付けておきます。

森絵都「カラフル」をタイで映画化『ホームステイ ボクと僕の100日間』予告

ところで、公開日は10月5日(土)とだいぶ先の『ホームステイ』なんですが、少々ワケがあって本日ご紹介しています。ある作戦がうまく行ったらまたご紹介しますので、しばし(1ヶ月ぐらい?)お待ち下さいね。



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