『海角七号』(2008)や『セデック・バレ』(2011)の魏徳聖（ウェイ・ダーション）監督の新作を見ました。タイトルは『52 Hz I love you』で、何と本格的なミュージカルです。主演の４人はみんな歌手のようですが、そのほかにウェイ・ダーション監督のこれまでの作品に出ていた人が総出演、お正月映画として作られただけあって豪華なメンツが揃い、ウェイ・ダーション監督の作品が好きな人にはたまらない１本となりました。物語の筋はあってなきがごとしですが、簡単に書いておきます。
バレンタインデーの日、「小心」という花屋を叔母（趙詠華／シンディ・チョウ）と共に切り回している小心（小球）は、車で花をあちこち配達している途中バイクに乗った小安（小球）と衝突してしまい、車がエンスト状態に。小安も師匠（林慶台／リン・チンタイ）が経営するパンとお菓子の店の、チョコレートをあちこちに配達している途中でした。小安は以前から蕾蕾（米非／ミッフィー・チェン）が好きだったのですが、蕾蕾はすでに売れない歌手游大河（舒米恩／スミン・ルピ）と同棲中。公務員の蕾蕾の今日の仕事は、合同結婚式を取り仕切ることで、同性婚を目指すカップル（張榕榕／サンドリン・ピンナと李千女那／ナナ・リー）が押しかけたり、急に雨が降ったりして蕾蕾は大忙し。夜は大河と高級レストランで食事する約束をしていたのですが、大河はものすごく遅刻してきます。「もう、あなたとは別れる！」と言い出した蕾蕾に、大河はとっておきの歌を歌うのですが...。
出だしの淡水（多分）の青空市で歌われるナンバーはちょっと気恥ずかしかったものの、その後は歌がセリフの一部として差し挟まれる展開にも違和感がなくなり、それぞれの歌や演技を楽しむことができました。歌自体もいい曲が多く、また出演者の皆さんもとても上手で、演技とよく溶け合っています。一部ファンタジーも盛り込んであり、舞台劇のミュージカルのような雰囲気です。キャスティングは歌唱力を優先させたのか、もうちょっと主演者として惹かれる外見にしてほしかった（いつもこればっかりですみません）、という不満もあるのですが、よくぞこういう本格派ミュージカルに挑戦したものよ、とウェイ・ダーション監督の勇気をほめてあげたい気分でした。特に、蕾蕾がバイクで出勤中に出現する、バイクに乗った人々の群舞ならぬ群走ミュージカルシーンには度肝を抜かれました（危ないやんかっ！）。しかし、インド映画でもやったことのない絵柄ですねー。
下のポスターは左から、小安（小球）、小心（小球）、蕾蕾（米非）、大河（舒米恩）ですが、舒米恩／スミン・ルピはアミ族の人のようです。
カメオ的な出演では、『セデック・バレ』のリン・チンタイや、『海角七号』の田中千絵、馬如龍（阿嘉の義理のお父さん役）と沛小嵐（阿嘉のお母さん役）、楊蕎安（キーボード奏者大大役。大きくなりました～。FBはこちら）がレストラン・シーンに出てくるほか、レストランのバンドとして登場するのが、范逸臣（ファン・イーチェン／阿嘉役）、馬念先（”マラサン”のセールスマン役）、民雄（警官役）、應蔚民（”カエル”役）という懐かしき前座バンドの面々。ミュージカルの締めくくりとして、素敵な演奏を聴かせてくれます。（時々マイクがぶつかるような雑音がしたのは演出でしょうか？）エンドロールも面白い作り方がしてあって、香港の観客も大半が（と言っても10人中の６人ですが）最後まで席を立たないで見ていました。予告編を付けておきます。
《52Hz, I love you》正式預告(2017.1.26 嗨翻新年)
もしかしたら、大阪アジアン映画祭で上映されたりするかも、と思って映画祭のサイトをチェックしたら、ちゃんとありました、『52 Hz I love you』。ぜひご覧になって下さいね。おーっと、昨日けなしてしまった『一萬公里的約定』も『一万キロの約束』というタイトルで上映されますね...。営業妨害をしてしまってすみません！ こちらの映画祭サイトをぜひチェックしてみて下さい。インド映画もラインアップに入っていて、ビジェイ・ジャヤパル（ヴィジャイ・ジャヤパール）監督作『隠されていたこと』となっています。どんな作品なんでしょう？ 私は残念ながらこの映画祭の時期はまた日本にいないのですが、皆さん、お楽しみ下さいね～～～。
