以前、拙ブログでご紹介した池谷薫監督によるチベット問題を扱ったドキュメンタリー映画『ルンタ』が、先日インドのダルムサラ国際映画祭で上映されました。以前の拙ブログの紹介記事はこちらですが、この作品は、チベットで起きているこんな事実を知らなかった、ということと、それを伝えようとするダルムサラ在住の日本人中原一博さんという方の存在を知った、ということで、二重に衝撃的な作品だったのでした。
実はこの時、衝撃のあまり当初長々と紹介記事を書いてしまって、あとで池谷監督にアップを知らせたら、「そこまで詳しく紹介されると、映画を見る人の発見を奪うことになるから」と困惑され、書き直しをしたのでした。それぐらい、力があって興味深いドキュメンタリー作品なのです。皆様はもうご覧になってますでしょうか?
© Ren Universe 2015
その『ルンタ』が、11月5日から8日まで開催されたインドのダルムサラ国際映画祭で上映作品に選ばれ、インド映画の話題作『Masaan(火葬場/英語題名:Fly Away Solo)』や『Titli(蝶)』と共に上映されたのです。映画祭の公式サイトはこちらですが、昨日池谷監督から映画祭のレポートが配信されてきましたので、皆様にもお伝えしたく思い、ブログにアップした次第です。スチール写真はcinetamaが選んで勝手に付けたものですが、文中に出てくる中原一博さんの写真も下に付けておきます。
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では、池谷監督のレポートをどうぞ。
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先日、ダラムサラ国際映画祭に参加して、大勢のチベット人に『ルンタ』をご覧いただくことができました。11月7日の上映は500席の会場がほぼ満席となり、僕も中原一博さんもここで上映できる喜びを噛みしめました。
インド北部の町ダラムサラは『ルンタ』前半の舞台であり、ダライ・ラマ14世と8000人を超える亡命チベット人が暮らしています。中原さんはこの町に30年間住み続け、建築家、NGO代表として故郷を失ったチベット人たちの支援を続けてきました。
上映中はチベット人の囁きや笑い声やすすり泣きが聞こえてきて、他のどの場所にもない不思議な雰囲気を味わいました。僕の隣の老婆は焼身者の写真が映し出される度にお経を唱えていましたし、厳しい拷問に耐え抜いた元尼僧や海外メディアの前で決死の抗議行動を行った青年僧の証言も、チベット人に囲まれて観ると、からだの芯から熱くなるような感動を覚えました。

© Ren Universe 2015
そして、ルンタが風にはためき、少年の馬が疾走し、チベットの大草原が広がると、静かなよめきが起きました。スクリーンを見つめるチベット人たちの顔に笑顔が広がるのを見て、僕も中原さんもチベットを旅して本当によかったと思いました。エンドロールが流れると会場は万雷の拍手に包まれ、それがいつまでもやみません。中原さんの安堵の表情が何よりもダラムサラでの成功を物語っていました。
上映後は大勢のチベット人に囲まれ、口々に感謝の言葉をかけてもらいました。強く印象に残ったのは『ルンタ』をぜひ世界で上映してほしいと懇願されたこと。ニューヨークやトロントなどチベット人が多く住む街では、きっと彼らが協力を惜しまないだろうとも。新たな宿題を渡されたようで気が引き締まる思いがしました。

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最後にもうひとつ嬉しいご報告です。ご好評いただいたポレポレ東中野での上映は本日(11/13)をもって終了しますが、11/21(土)より1週間、京王線沿線の下高井戸シネマにて上映されます。上映時間は連日16:10。初日の上映後には僕が舞台挨拶させていただきます。ポレポレ最終日の今日も18:00の回上映後に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。その他、全国の劇場情報はこちらをご覧ください。
ルンタの願いをもっと多くの人へ、そして世界へ届けたいと思っています。
感謝を込めて
池谷 薫
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まだ『ルンタ』をご覧になっていない方は、この機会にぜひどうぞ。予告編がすぐ見られる公式サイトはこちらです。