古い画集を立て続けに入手したことで、思うことというのが山ほどある。出版当時にあってはやたらと高額だったはずの画集ばかりなのだが、出版に高い志が確かにあったことを、ひしひしと感じるのだ。
山田五郎さんがYou Tubeでおっしゃっていたことを思い出した。
作品集や画集を製作するにあたって、オリジナルの再現率というのは、どれほどの努力をしても限界がある。
当時、印刷所にいた「印刷の神様」という方から言われたという話が端的にその困難をあらわしていて、最大の努力でもってしても、写真で7割、印刷で7割。
0.7×0.7で、0.49がマックスだというのである。
「半分以下しか再現できねぇんだ!って言われたんだよ。どんなにがんばってもそれ以上はできねぇんだって。」
それを話している時の山田五郎さんのお顔が楽しそうに見えたのには、いろんな理由があると思うのだけど、不可能を承知で、それでもより高い完成度を画集に求め続けた現場の熱というのがあったのだろうと。その時代の空気を懐かしく思い出されているのだろうなと。なんとも言えないお顔で話されるのだ。羨ましいと思いながらそんな想像をした。
色彩については言うに及ばず、どれほど手間暇かけた高価な画集であっても、オリジナルに追いつけないであろうということは、印刷に携わった経験のない身であっても重々承知している。
だからこそ、機会をみつけては美術館へと足を運ぶのだし。
そんなことを承知の上でも、心動かされてしまった作品の面影くらいは連れて帰りたくなるのもまた人情というもの。
わが家に画集がたくさんになってしまったのも、故あってのことなのだ(*^ω^)
だが、どんなにがんばっても半分以下、印刷の求道者にそう言われてしまうと、僕などはぐうの音も出ない。
どれだけ写真技術が発達したとしても、再現することは斯くも難しいものらしい。
しかしながら。謙虚で真摯な態度で編まれた作品集には、オリジナル作品に対する尊敬が込められている。
よい画集を手にすると、そうした尊敬の念を共有している気分にもなる。