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会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

どろんこ経営 -ヤマノホールディングスに思う-

2006-03-03 | 事業再生・M&A
昨日は、堅くてつまらない記事で失礼しました。
そこで本日は、気になる企業分析シリーズ。


日経ビジネス最新号06.3.6号で「不死身の血族経営」という特集を
やっておりまして、この中でヤマノホールディングスに眼がとまりました。
どろんこ美容で名を馳せた、あの山野の関係会社です。

以下、思いつくまま、戯言を少々。


①株式アナリスト時代に1度だけIR来社下さったことがあります。
 その時の印象は強烈でした。

(a)まずトップのお名刺。肩書きが「代表取締役統領」なんです。
   有報の役員の状況にも書いてあります。
   ですので、私の最初の質問はもちろん
   「何故、統領という肩書きなのでしょうか?」

   すると統領はこうおっしゃいました。
   「いやぁ、持株会社なので傘下の子会社のトップを集めて会議をすると、
    全員社長なので混乱してしまう。そこで私だけ統領にしたんですよ。」


(b)同行されたのはIRや財務の方ではなく、女性秘書でした。
   さすがに非常に綺麗な方でして、美容業界トップとしての
   意地とプライドを感じたものです.

(c)で、なぜか、記念品として「手ぬぐい」をもらったことを覚えております。
   和装に強いお会社ゆえ、でしょうか?


②有報「役員の状況」における統領の経歴欄は全て、役員兼務先です。
 こんなに兼務して大丈夫なの?と思ったのは、
 ホリエモン以来です・・・。


  昭和63年12月 株式会社ヤマノネットワーク代表取締役社長(現任)
  平成11年11月 有限会社寛斎デザイン研究所代表取締役社長(現任)
  平成11年11月 株式会社寛斎スーパースタジオ代表取締役社長(現任)
  平成13年5月 株式会社錦代表取締役会長(現任)
  平成13年6月 株式会社丸正代表取締役会長(現任)
  平成13年10月 かねもり株式会社代表取締役会長(現任)
  平成13年10月 当社代表取締役統領
  平成13年11月 株式会社ビ・ゴール代表取締役会長(現任)
  平成14年2月 四菱株式会社代表取締役会長(現任)
  平成14年9月 株式会社サトウダイヤモンドチェーン代表取締役会長(現任)
  平成15年1月 株式会社エックスワン代表取締役会長(現任)
  平成15年8月 株式会社全国教育産業協会代表取締役会長(現任)
  平成16年1月 堀田産業株式会社代表取締役会長(現任)
  平成16年2月 ロイヤルコスモ株式会社代表取締役会長(現任)
  平成16年6月 当社代表取締役会長(現任)
  平成16年12月 ヤマノインベストメント株式会社代表取締役社長(現任)
  平成16年12月 株式会社ヤマノビバスポーツ代表取締役会長(現任)
  平成17年3月 株式会社パワーズ代表取締役会長(現任)


③日経ビジネスでは、山野5兄弟による月に1度の「山野サミット」の模様を
 取材。5兄弟が「競争と協業」でグループを拡大しているなど、好意的な
 取り上げ方をしております。

 しかし、私は、同誌p.39のグループの資本関係を見て、直感的に少々
 怖くなりました。(紙幅の関係で記載は省略しますが)

 グループの中核会社はあくまで山野美容商事。
 ヤマノホールディングスは傍流の兄弟会社的な位置づけです。
 もちろん一部の会社を除き連結対象から外れております。
 日経ビジネスも「グループの大半が非上場のため、財務の詳細は不明。」
 としています。

 そういう会社は、余り取り上げないほうが良いと思いますけどねぇ。
 (私なら、パスします)


④肝心の財務諸表。
 相次ぐM&Aで連結業績は右肩上がり。今期も大幅増益の計画。
 しかし、連結株主資本32億円、同比率10%超にすぎませんので、
 財務基盤は脆弱ですね。

 単体の注記を見ますと、関係会社による借入の担保として単体が保有する
 関係会社株式など24億円を担保に供しております。
 この金額、前年比で18億円も増加しています。
 ちょっといやな感じですね。

 H17/3期では、「破産・更生債権等」(1,151,631千円)は、資産の総額の
 100分の5以下となったため、投資その他の資産の「その他」に含めて表示
 しています。
 よほど、見苦しい勘定科目は貸借対照表に載せたくないようです。
 これも山野式美容法なのでしょう。


⑤連結子会社で公開企業の堀田産業(証券コード3532)もエライことになって
 いますね。
 有報の「事業等のリスク」にこんな記載がありました。

 平成16年3月30日、当社連結子会社の堀田産業株式会社は、丸福商事株式会社の 全株式を取得して同社を子会社といたしました。これに関し、株式会社東京証券 取引所は、当該子会社取得後の堀田産業株式会社が実質的な存続会社ではないと 認定し、これにより堀田産業株式会社は、新規上場審査基準に準じた審査を受け るための期間(猶予期間)に入りました。

 日経会社情報によれば、H19/3期までに最終利益6億円達成などが上場再審査 基準とか。
 ただ、今期も赤字見通し。

 堀田産業に対しては、単体の関係会社株式8.16億円、短期貸付金3.15億円。
 ある程度引当はできているんでしょうか?


あくまで直感的な全体の印象ですが、やや背伸びしたM&A戦略により財務の負担が強まっている感じがします。
P/Lの見栄えの良さだけに眼を奪われないように。

今後、この会社が泥まみれの経営とならないことを祈ります。




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6 コメント

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Unknown (marufuku)
2006-03-04 02:24:36
dancing-ufo様



いつも更新楽しみに拝見しております。



常々思うのですが、貴兄のような有報からの事業実態の分析力を身に付けるには、どういう勉強をすれば良いのでしょうか?



当方、会計に関しての非常に基本的な知識はあるのですが、有報のあの膨大な付記を見ても、どこに着目して良いか、よくわからないのです。



先生、どうかご教示を。
返信する
アカデミー賞 (ハリマオ)
2006-03-04 16:27:00
脱線専門の、オジャマモン候補の

ハリマオです。



三丁目の夕日が日本アカデミー賞14部門を受賞ですね。

泣かせるツボを知っている映画というべきか、明日は

今日より豊かになると信じれたよい時代、高度成長時代。

夢のある時代だったんですね。



あれから、豊かになり、科学も技術も進歩して、

社会保障も格段に整備されたの、将来を暗いと感じる人が

多いなんて
返信する
コメント有難うございます。 (dancing-ufo)
2006-03-04 20:57:36


marufuku様

コメント有難うございます。



「事業実態の分析力」ですか・・・。

これは私もまだまだ、ですね。



そーですね。企業分析の基本に忠実に見ていく

ことが遠回りのようで近道だと思います。

(比率分析とか趨勢分析とかも絡めて・・・)



一番大事だと思うのは、まず全体像を

おおまかに掴むことだと思います。

(仮説でもいいので。)

有報の前の方に「主要業績数値過去5年分」

ってありますよね。これで流れを掴む。

不自然な急成長があれば、M&Aの可能性もあるので、「沿革」でチェックするとか。

その後、 

・何で業績が良かったのか(悪かったのか)

 ・その要因は再現可能、持続可能なものか、

 ・事業リスクは何か?

  (→これは有報に書いてあります)

 ・財務内容に問題は無いか

などなど、いろいろ考えながら見ていく。



あとは・会計方針の変更があったのか

   ・株主資本比率が低い場合には、

    金融機関からの借入等の依存度が高い

    ので、担保やコミットメントラインの使用状況

などを注記でチェックするんでしょうか。

以上、ご参考まで。







そして、ハリマオさん



丁度、このネタを書いておりました。

ですので、そちらをご覧下さい。







返信する
7571 ヤマノHD 開示情報 (バイサイド・アナリスト)
2006-04-22 17:33:12
2006/04/13 当社への元出向従業員による詐欺などの違法行為に関するお知らせ



http://www.irstreet.com/j/files/7571/company_news/75712006041303.pdf
返信する
なるほど・・・ (コナン)
2007-07-18 19:20:54
やはり、見る人が見るとわかるのですね~。
美容最大手のレジスとの関係は何の意味があるのでしょう・・・
噂では美容他社に断られヤマノしかokしなかったからと聞きましたが・・・。
泥んこ美容でシミを隠せるかって感じでしょうか・・・
返信する
鋭い分析 (泥まみれ)
2009-06-28 18:49:34
山野氏の本を読んでいます。書いたときが絶頂
の時でしたよね。
dancing-ufoさんの分析によりますと、泥まみれ
の経営、まさにあたっています。
原因はなんだと思いますか。時流にのれなかったのでしょうか。アークも同じような感じですね。
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